「長澤樹の美貌が映画に狂気を帯びさせる」愛のゆくえ あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
長澤樹の美貌が映画に狂気を帯びさせる
映画を観る前に思っていたことが2つある。
まずは、あらすじを読んだ限り、愛と宗介という幼馴染二人の互いへの感情と別離が話の軸になるのだろうな、ということ、もう一つは中学2年生の14歳を演じるには二人とも、特に長澤樹は大人び過ぎているのではという感想である。
予想ははずれ、この映画は愛の母親に対する思慕が主体であった。ただ愛の母親由美を取り巻く環境が、実の子ではない宗介を育てている経緯からしていささか異常であり、愛の母親への思いというものも屈折せざるを得ない。そしておそらくガンに侵された由美が急死したため愛は東京の父親に引き取られるのだが、この父親も異常な人物であり愛はさらに過酷な環境に引きずり込まれ母親への思慕がさらに強まることになる。
映画は最初のうちは愛や宗介を取り巻く状況が淡々と描かれ、なにかギスギスした話だなあと思いながら眺めていたのだが東京に愛が行ってからは世界が歪み始める。これは長澤樹という女優の持つ個性に由来するものかもしれない。彼女が異常のように聞こえると語弊がある。何か尋常ならざるものを引き付ける力というか。
最初に書いたように、長澤樹は14歳の役を演ずるにはややトウがたっている。本人は2005年生まれの18歳なので無理のないレベルではあるが。私はあまりたくさん彼女の出演作は観ていないがTVドラマの「霊媒探偵・城塚翡翠」で凄まじいパラノイアの犯人を演じたことをよく覚えている。美貌の下に狂気を潜めた役がよく似合う女優なのである。もし、普通の14歳の子役が本作品のヒロインを演じればニュアンスはかなり変わったものと思われる。そこまでこの監督が計算してキャスティングしたのかどうかは不明だけど。