碁盤斬りのレビュー・感想・評価
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時代劇はまだまだ描ける
白石和彌監督が撮る初の時代劇と言う事で俄然注目していた作品が愈々公開。濡れ衣を着せられて藩を追われ、娘と二人暮らしの浪人が、得意の囲碁をきっかけに復讐に立ち上がる物語です。
久しぶりに「楷書の映画」を観たと感じました。メリハリの効いた物語、固定カメラでしっかり見せる映像、チャンバラ場面は抑制的な演出、草彅剛さん・清原果耶さん・國村準さん・そして斎藤工さんそれぞれの個性が際立つ俳優陣。特に、斎藤工さんのクズな男が見せるクズなりの道理が魅力を放ちました。そうした舞台には時代劇が最適だったんでしょうね。21世紀にだって描ける、描くべき時代劇はまだまだあるのです。
ただ、格之進の葛藤をもう少し丁寧に見せて欲しいという場面が幾つかあったのが残念でした。でも、現行で129分の作品では仕方ないかな。
碁に魅せられた人々の物語
今、最も脂が乗った監督の一人、白石和彌監督による初時代劇ゆえに、細部に至るまで神経が行き届いた本格時代劇に仕上がっています。
時代劇は現代のファンタジーです。その時代に生きた人はいないので、自由に創作できる一方、観客に如何にもそれらしい空気感を感じさせる設えと人情の機微が無ければ、却って違和感ばかりが浮き上がり、訳の分からない白けた寸劇になってしまいます。
本作は、昼間でも明るさを抑えた光の加減が作品を通じて絶妙でした。室内シーンが多いために全体に仄暗い中での明と暗、光と陰、それぞれの微妙なコントラストが、ドラマの雰囲気と共に主人公と娘の倹しい日常を漂わせていました。
薄汚れて狭苦しい江戸の長屋、整然として広々とした大店、艶めかしく賑やかな遊郭、大勢の出入りの出来る怪しい侠客の屋敷が、美術・装飾スタッフによってリアルに再現され、観客を自然に時代の中に誘ってくれます。
元々は落語が原作ですが、映画では話を膨らませ、タイトルにある“碁盤斬り”は生かしつつも、草彅剛扮する柳田格之進とその娘役の清原果那による復讐劇を核に置き換えた建付けにしています。前半は親子の住む江戸長屋での平穏な、一面では退屈な日常が淡々と進み、BGMもややユーモラスで軽妙な曲調でしたが、過去の事実の真相が分かった後は短調の物悲しい曲調となり、舞台が広がりストーリーが急展開していく後半は、重苦しい曲調のままにドラマの空気を覆い尽くしていました。
前半は会話が主体だけに人物の寄せアップのカットがやたらと多く、やや閉口します。主人公が無表情無感情、ひたすら冷静な理性の人としての日々の暮らしを送りアクションもないため、引いて撮ると何ら面白みのない映像になるからでしょう。その反動で一気にドラマが動く後半は、柳田格之進の表情は怒りと悲しみに満ち、常に動き回ります。
前半の平穏さがあったゆえに、この感情と言動の落差は大いに観客を惹き付けます。
悪が際立てば際立つほどに、この憎悪への共感は増すのですが、斎藤工扮する悪役には嫌悪感を催すほどの非道ぶりは見えず、寧ろ本来の優男からのしなやかさすら感じられ不完全燃焼感が残ります。ただ殺陣には及第点をあげられそうです。
“碁”が本作を一貫するテーマであり、碁に魅せられた人々による、可笑しくも哀しい物語となっていますが、とはいえ碁が何らかの伏線や布石にはならず、碁の棋譜がドラマのキーになるわけでもありません。
個人的には、仇敵との最終決着を碁で決めるというのは、二人は真剣でしたが、嘗ての熱血少年マンガでの決着シーンとオーバーラップして思わず苦笑してしまいました。
草彅さんに惹かれました!
珠玉の時代劇
良質なヒューマンドラマ
シナリオよくお芝居も皆々よく、地味ですが見ごたえのあるよい作品です。
素直にいいものを観たなぁと思えました。
あまり話題にされていないのが不思議なくらいです。
物語は前半と後半で大きく転換します。
前半では柳田格之進(草なぎ剛)と萬屋源兵衛(國村隼)の囲碁を通した心の交流が描かれています。
浮世離れしたところのある柳田の佇まいに少し違和感を覚えつつも、前半部分だけでも良質なヒューマンドラマになっています。
後半ではそこから大きく転換し、妖精のようだった柳田が人間らしい表情をみせます。
柳田の激しさ清らかさ、娘のお絹(清原果耶)の健気さ、弥吉(中川大志)の青さ。
脇を固めるベテランも若い方も、心の入ったよいお芝居をみせてくれます。
人にお勧めできるよい作品でした。
江戸を見事に表現した映画
碁盤斬り
ちょっと厳しい事言う 十五(夜)の夜
盗んだ反物売り飛ばす
行く先も分からぬまま
暗い夜の帷の中へ
誰にも知られたくないと
逃げ込んだ江戸吉原
自由になれた気がした十五(夜)の夜
んーイマイチですねー🤣
クオリティ低い替え歌でごめんなさい🙏
白石監督、草彅剛と、
間違いないだろう顔触れで、
期待値は高かったが、
やや期待外れかな。
全体の雰囲気は好きです。
浪人が長屋で貧乏暮らし、そこにはドケチで有名な庄屋が居て、場所は吉原なので置屋のやり手ババアが幅を利かす。もう少し吉原っぽさも、要は艶っぽいシーンも、欲しい所でした。
時代劇て、台詞が大事です。
イントネーションとか、アクセントとかテンポ、
言葉尻でその時代を感じられる所は大きいです。
國村隼と小泉今日子は、中々堂に入って如何にも江戸時代劇を醸し出してますが、
草彅、斎藤工他若手役者陣は、普段やってるドラマでの役と同じ様な喋り方をするのが少し残念🫤
プロットとしても、そこまでハラハラしないし、
敵役柴田兵庫も憎さを彼自身の台詞で半減し、
殺陣であんなに無敵なのも根拠無く、
武士の情けと望み通りなのも疑問かな🫤
詰まらなくは無かったけど、
面白いかと言うとそうでもなかったです。
自分が時代劇に免疫無いからかな❓
草彅はもうちょっと笑顔があっても良かったのでは。
源兵衛とっておきの碁盤で打つ時くらいはね。
TVの宣伝につい乗せられてしまい、しまった!と思った時には遅い。
草薙剛が出演している番組を見ていて誰だかは忘れたけれど、草薙剛にインタビューをしていて、タモリが彼を絶賛している話しだった。向上心が無いところがいい!と褒められた…と奥目もなく言い放っている彼。じゃ、見てみるとしようと思った。
ホントは「ドノバン」を観るつもりだった。しかし、昨日調べた時間と今日の開始時間が違ってるのに気がついた。そんな偶然もまあ、いいかとこの映画がピタリの時間だった。しかしまあ驚きまくった。向上心のなさもここまでだとは思わず観ているのが辛くなった。しかしながら小泉今日子の凄みに惹きつけられ最後まで観てしまった。
それにしても、落語を馬鹿にしてはいけない。仇打ちを入れ込んだお陰で人情咄は見事に雪崩れに遭った山小屋。小学校の道徳教室のように静まりかえってしまった。
囲碁は読み合いを競うゲーム。読み切って罠を仕掛けたりその仕掛けにハマった振りをしたりで人の良さでは勝てるはずはない。でも、やはり最後は人柄なんだ。だから、囲碁に強い奴はこの映画の格之進の様な状況には陥らないと思うんだ。そんなトンマな役を草薙剛はすごく力一杯に演じてる。今の十分の一ぐらいの頑張りで結構いい映画に仕上がったと思うのだが…しかし彼の身体の硬さは尋常じゃない。
つい、凪なんたらって映画と比べてしまった。
ごめんなさい。
白石監督にしては
切り離された白と黒
久々に観た時代劇の良作
「虎狼の血」の白石和彌監督が初めて撮った時代劇だというので観に行った。容赦ないバイオレンス表現が見事な映画を作る人なので、さぞリアルな斬り合いが見られるのではと期待しただけだったが、見終わった感想はかなり違ったものだった。予備知識なしだったので、まるで落語か講談のような物語の展開だと思っていたら、落語を元に作られた作品だとのことである。
囲碁は奈良時代に到来した大陸文化で、簡単に言ってしまえば陣取りゲームであるが、相手の石を完全に囲んでしまえば盤上から取り去ってしまえるので、非常に有利になる。ルールは比較的簡単であるが、ルールだけ知っていてもまず話にならず、定石と呼ばれる戦術を多数頭に入れておかなければまず勝てない。最近ではコンピュータ囲碁のレベルもプロ級に進化している。この映画では囲碁が大きな比重をもって物語の根幹にあるのだが、ルールについては全く説明されていないので、ある程度馴染みがないと本質に触れるのは難しいだろう。
囲碁の打ち方は打ち手の性格が反映されるもので、喧嘩っ早い人は序盤から遠慮なく相手の手を潰しにかかる。かと思うと、要するに一目でも自軍の方が広ければ勝ちなのだからと、相手の挑発に乗らずに毅然とした囲碁を打つ人格者もいる。この物語に登場する萬屋源兵衛や柴田兵庫は喧嘩碁の打ち手で、相手を徹底的にへこませて勝とうとする打ち方のようで、こういう相手の挑発に乗ってしまうと、頭に血が上って自分の打ち方を忘れてしまい、負けた時の悔しさは計り知れない。
一方、主人公の柳田格之進の打ち方は、武士の威厳を感じさせる人格者の碁で、対戦相手が惚れ惚れして自分の人格まで影響を受けるほどの打ち手のようである。出会った当初は互いに相手を認めず中途半端な終わり方をした源兵衛と格之進は、やがて武士と商人という立場を超えて囲碁仲間という関係になるが、如何に趣味で親しく結ばれた家族ぐるみの仲であっても、武士の沽券に関わるような嫌疑をかけられたら問答無用で相手の首を求めると明言するのが武士という生き物である。武名を挙げることを何よりも尊び、名が汚されることを何より忌み嫌うのが武士だからである。
こうした本物の武士の姿を見せてくれた映像作品は本当に久しぶりである。小津安二郎を彷彿とさせるローアングルの画角がまた日本らしさを感じさせ、蝋燭の明かりで照らされる夜の風景も美しい。草彅剛はストイックな武士らしさを好演しており、娘役の清原果耶も清楚で明るく、非常に魅力的である。武家の娘が苦界に身を落とすような展開に陥るのは本当に心苦しい。武士の世界の裏では吉原のような不憫な女たちの世界があるのもまた江戸時代である。一方、敵役の斎藤工は顔つきが現代的でやや違和感があった。平気で嘘をつき、卑怯な立ち合いをするのは、格之進の対極にある姿を見せていた。
時代風景を実によく伝えてくれた映画であるが、肝心な戦闘シーンが驚くほど少なく、またその結果の見せ方もイマイチ明確さを欠いていたのが残念だった。音楽もやや精彩を欠いていたのが惜しまれたが、映画としての出来は非常に良かったと思う。久しぶりに本物の時代劇を見せてもらったような気がした。
(映像5+脚本5+役者5+音楽4+演出4)×4=92 点。
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