碁盤斬りのレビュー・感想・評価
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草彅くん、良かった!…⭐︎
前評判も良く、草彅くんと白石和彌監督ということで鑑賞。
いやいや、なかなか本格的な時代劇でした。
無実の罪で彦根藩を追われ、娘と二人(最初、清原果耶が娘なのか妻なのか迷ったのは自分だけ?)で江戸で
暮らすが碁会所で國村隼演じる萬屋原兵衛と出逢ったところからいろいろな意味で運命が動き出す。
草彅くんが清廉潔白な武士にピッタリ。
岡村隼はもちろん、中川大志はいかにもと言う役どころ、小泉今日子も良い感じ。
でも、個人的には悪役の斎藤工が面白かった。
でも、何よりも白石監督のカメラワークと照明が素晴らしい!
月見の会のろうそくや終盤の賭け碁の明かり、吉原の雰囲気などなど…すっかりと江戸の街に
いる雰囲気に浸れる。
ただ、物語は一応「敵討ち」の話しなのだか、予想通りの展開で中弛みも感じてしまい若干の
物足りなさもあるかなぁ…。
それでも見る価値あり。
「虎狼の血」を撮った監督とは思えない美しい映像。
良かった。
こんな王道の時代劇を、バイオレンス過ぎて敬遠気味だった白石監督が撮るなんて驚きだし、感動でもう胸いっぱいです。
古典落語『柳田格之進』をベースにした時代劇映画。「孤狼の血」シリーズなどの白石和彌監督にとっては初の時代劇監督作品となります。草彅は『ミッドナイトスワン』以来4年ぶりの主演映画となり、時代劇映画としては2009年の『BALLAD 名もなき恋のうた』以来15年ぶりの出演となりました。
時代劇が苦境と言われて久しい今日。主題となる義理人情や忠義、互譲の精神は、個人の幸せを求める競争社会では 「弱さ」にも感じられます。本作は型やケレン味を強調した古典的な作品とも、セリフ回しや所作を今風に崩した試行錯誤の作品とも異なります。時代劇の文法に即しながら、現代人の心情にもかなう、いい塩梅に仕上げられた作品です。
●ストーリー
とある事件のぬれぎぬを着せられ、妻を亡くし故郷の彦根藩を追われた浪人の格之進(草彅剛)は、娘のお絹(清原果耶)と江戸の貧乏長屋で2人暮らしを余儀なくされていました。実直な格之進は、かねてたしなむ囲碁にもその人柄が表れ、嘘偽りない勝負を心がけていたのです。
ある日いつもの碁会所に立ち寄った格之進は、無類の囲碁好きな商人、源兵衛(國村隼)と出会います。しかし彼の打つ囲碁に表れる誠実な人柄に惚れ込んだ、源兵衛は格之進を度々呼んでは碁に興じ、酒を酌み交わす関係となるのでした。
しかし源兵衛の家で50両が紛失する事件が起こり、格之進は番頭から窃盗の容疑をかけられてしまいます。激した格之進は武士の誇りにかけて、「金が見つかったあかつきには源兵衛と番頭の頭を貰い受ける」と言ってのけるのでした。
番頭の徳次郎(音尾琢真)から報告を受けた源兵衛は、無礼を詫びようと格之進の長屋に急ぐものの、家はもぬけのからになっていました。
実は旧知の藩士梶木左門(奥野瑛太)からかつての冤罪事件の真相を知らされた格之進は、同時に妻を拐かし、死にも追いやった両方にからむ柴田兵庫(斎藤工)を討つために旅に出たのでした。お絹は仇討ちの足かせとなったを盗んだという父の不名誉を晴らすため、格之進の知り合いの吉原の遊郭の女将お庚から、50両用立ててもらい、その身代わりとして店に身請けされてしまっていたのです。
●解説
落語の人情話を下敷きにした、あだ討ち時代劇。誇り高く激しさを秘めた武士の格之進を、草彅が風格たっぷりに抑制した演技で好演。新境地を見せてくれます。
碁会所で2人で碁に興じている中、大金盗難の疑いをかけられる。娘と長屋暮らしという身の上もほぼ落語通ですが、過去の遺恨と、それに伴うあだ討ちを絡めたところが新機軸です。
映画ではここに、格之進が藩を離れる理由となった、柴田兵庫という新たな人物を登場させています。彼も囲碁の達人でありますが、やはり碁に人柄が表れて、彼の対局は自己主張が激しく荒々しいのです。でも序盤の布石は「三連星」という、辺の星に石を3つ並べて打つシンプルな形なのがアンバランスです。
嫉妬深い兵庫は逆恨みで同僚たちを落とし込んだあげく、それが諸々の仇となって、兵庫は追われる身に追い込んだのでした。この人物像は、三隅研次監督の「座頭市地獄旅」(1965年)で、侍としては優秀だが、将棋の対局では激して我を忘れる十文字純(成田三樹夫)という、とても魅力的なキャラクターを思い出させました。
また囲碁が重要な要素となっているのも好感。実はわたしも高校時代は囲碁部。なので物語の主軸に対局シーンがからむ展開を楽しめました。特に詰碁でしかお目にかかれない奇手が伏線となり、クライマックスの圧巻を飾ることには感動しました。
近年の将棋人気と比べると、囲碁の存在感はもう一つ。勝負の展開が分かりにくく映像映えしないせいか、囲碁を題材とした映画もとんと見かけません。しかし本作では、囲碁の奥深さと格之進の複雑な内面を重ね、碁を知らなくても盤上の緊迫感が伝わる作りなのです。折しも本因坊戦五番勝負の真っ最中。本格時代劇としても囲碁映画としても、見応え十分。皆さんもこれを機会に碁会所の門を叩かれてはいかがでしょうか。
斬新な作品を撮って評価され続けてきた白石監督だけに、白石組の実力も確かなものです。精緻で緩みのない加藤正人の脚本を土台に、美術の今村力、録音の浦田和治らベテランの力量が支えました。とりわけ、歳時記を思わせる撮影が素晴らしいです。山笑う春を起点に、薫風の夏、すすきの秋、小雪舞う冬、そして、春を告げる梅の季節へ。格之進の歩みと日本の四季が響き合います。特に吉原に満開の桜を咲かせた映像は秀逸。遊郭ならではの爛漫な春を再現していました。
但し、全体的な色調が暗めなのは、当時の街や室内の明るさを意識したからでしょうか。ろうそくなどの光による室内のリアルに近い暗さと、張り詰めた演出は秀逸です。そんな障子越しの柔らかな光が、父娘のつましい暮らしを際立たせます。
さらに灯火がゆらめく月見の夜。名所を望む晴れた日の水辺、格之進と源兵衛が様々な趣向で楽しむ対局シーンも風情がありました。
演技面では草彅ばかりでなく、吉原遊郭の女将お庚役の小泉今日子、賭場を仕切る親分役の市村正親ら助演級も時代劇のイメージはないが、限られた登場シーンで存在感がたっぷりありました。
●感想
やはりなんといっても注目は、タイトルの所以となった50両が見つかったことを話し詫びるシーンです。無口な格之進が激高し、約束通りその首頂戴するとなったとき、映画ではどうなるのかご注目ください。あの緊迫感は、名シーンだと思います。
ところで窃盗の濡れ衣を着せられた格之進は、武士の体面を重んじるあまり、断腸の思いで娘を犠牲にしようとします。果たしてそれは、正しく汚れのない道だったのでしょうか。実直な囲碁に表れていたものは、格之進の融通の利かなさという負の面ではなかったのでしょうか。そんな自問をにおわせ格之進の悔恨に思い馳せるラストでした。大団円とは異なる幕切れには、白石監督ならではの鋭利さを残していると思います。
また実直な格之進の影響か、金にうるさかった源兵衛が次第に温厚に変わっていく変化も見どころです。源兵衛は後半で、壁に掛ける家訓を「不得貪勝」(則れば勝利は得られない)に改めます。これは碁の心得「囲碁十訣」のひとつです。囲碁愛好者なら、戦術が絡んだシーンが要所にちりばめられているので注目してください。
さらに殺陣や立ち回りといった派手な場面もありますが、最後は武力ではなく、頭脳戦の囲碁で仇敵に向かい、勝敗を決するところに新味を感じました。そこにドラマチックな妙手がからむとなるとなおさらです。
●最後にひと言
まな娘絹の縁談といった小津映画的なモチーフを、裏稼業の人々、アンチヒーローを得意とする白石監督が描くところが味わい深いと思いました。恥、情けといった徳が健在でホツとします。とにかくこんな王道の時代劇を、バイオレンス過ぎて敬遠気味だった白石監督が撮るなんて驚きだし、感動でもう胸いっぱいです。
新たな風が吹き込むことで、時代劇も再び活気づいてほしいものですね。
さすが白石和彌
さすが白石和彌監督、初時代劇とは思えない手堅さでこぅパーツが思ってたところにビシビシっとハマるような見事な作り。
基本的にはリアリティ重視の演出ながら、終盤のクライマックスには鈴木清順すら思わせるような画面造りもあり、やっぱり油断できない白石和彌。殺陣も劇伴も良かったよね。
ストーリーも、落語みたいに綺麗にまとまった話だなぁ、と思ってたらやっぱり落語だったのね…
落語の演目だからみんな知ってるだろうし構わない、って判断なのかもしれないけど、予告のシーンはちょっとネタバ… まぁタイトルもと言えばそうなんだけど…
キャストの芝居も素晴らしい。草彅剛の矜持、清原果耶の清麗、奥野瑛太の直実。仏と鬼の顔を使い分けられるキョンキョンも、人生を悟って変わる國村隼も良いが、一分の理があるとも思わせられる斎藤工もナイス。
久々の時代劇!
私には草彅剛という不思議な俳優で『上手い!』では無く、『良いな〜』と感じさせる役者です。そんな草彅君を観るために『碁盤切り』観に行って来ました!
脇を固める俳優も良く楽しめました。
帰ってから古今亭志ん朝の『柳田格之進』を観ましたが、万屋源兵衛の番頭が話を回す側なのですね…
監督がインスパイアされたのは『水清ければ魚棲まず』の部分だと思われますが、映画では斎藤工のセリフと万屋との碁の下りくらいでしか表現されないので、最後も格之進が変わったという所が今一つ響かない。 相も変わらず、信じた道を進んでいる様に見えるラストでした。
やっぱり草彅君は自然体の役者なのか? 私の中ではノンと菅田将暉がこの分類に入ると思うのですが…
トムクルーズは別、あれはスター分類です!
リピート確定
さすが白石監督。採光とカメラワーク。きちんと白石監督のエグサもある!!
草なぎさんの演技がまた素晴らしい。引き込まれる。毎日通っている。3回目のリピート。それでも新しい発見と見所が・・・ただのリベンジ作品ではない。加藤正人さんの脚本も素晴らしい。皆さんにお勧めの一本。
素晴らしかった
まず初めに、音尾さん疑ってすみませんでした。
白石監督作品は凪待ち以来二作品目。お金の紛失事件をきっかけに、あの人が怪しいとかあの人は裏切りそうだとか、いろいろ勘繰ってしまって格之進様に一刀浴びるべきだったのは自分だった。時代劇は剣戟も好きだけど、やはりドラマ部分がしっかりしてこそ秀逸な作品になるのだなと思った。
そして今回も主演の草彅剛さんを始め、清原果耶さん、國村隼さん、斎藤工さんたちの名演に心が動かされました。商人の源兵衛と格之進が打ち解けて囲碁仲間になったときのあの國村隼さんの笑顔はどこでも見たことがないほど優しくて、まるで素のようなお顔に、こちらも一緒に微笑んでしまった。中川大志さんや奥野瑛太さんも今回はとてもいい役どころでしたね。若い人が泣いたり迷ったりする姿は、けして滑稽ではなくそのキャラ自身の成長や真摯なる決意を導き出すきっかけにもなって、思い入れが強くなります。前半は格之進と源兵衛の友情シーンが主なので、このまま囲碁を打ちながら、こんな平和が続けばいいのにと思ってしまった。まぁ物語上そうはいかず。
碁盤を挟んだ戦い、ヒリヒリするような駒運びの一挙手一投足に固唾をのんで見守りました。剣戟は少なかったものの、その分静と動の緩急が見事で、緊張感もあってよかったです。囲碁のことをもっと知っていたら、分かることも増えたのかな。命をかけて昼夜囲碁をする二人を囲んで、周りの人たちの顔色と空気がどんどん変わっていく。また、見守る側の観客による盤上の説明もあって、同じく一緒にのめり込んでいきました。見栄や虚ろな斎藤工さんの敵役、とてもいいですね。
最後の格之進の強行に、どうかどうかと願わずにはいられなかった。武士としての矜持に限らず格之進自身の己の行いに関して自問自答もあり、ラスト含めて家族への愛を貫いた素晴らしい作品でした。鑑賞後の晴れやかな気持ちを、そのまま友人や家族にも話したいと思います。お薦めです。
碁の道‼️
最近の時代劇は参勤交代とか、引っ越しとか、コメディ・タッチの作品が続いてゲンナリしていたのですが、今作は久しぶりの本格的な時代劇だと思います‼️核となるのは仇討ち‼️濡れ衣を着せられ、藩を追われたあげく、妻を自殺に追いやられた一人の浪人の仇討ちを描いています‼️この作品で重要になってくるのが囲碁‼️主人公・柳田格之進と碁敵である萬屋の主人、源兵衛の対局‼️序盤の時を変え、場所を変え、繰り返される二人の囲碁の対局のシーンの美しさは詩的とすら言える‼️囲碁の道が商いの道へ、武士の道へ、そして人間の道へ‼️加えて、格之進の心情を表現してるとも言える自然描写も印象的で、長屋に射し込む陽の光や、清原果耶ちゃん紛する娘のお絹に、母の死の真相を告げる土砂降りの雨のシーン、仇である斎藤工の柴田兵庫との囲碁のシーンの、山々を美しく照らす夕焼け、大晦日の雪など、ホントに素晴らしいシーンの連続‼️そして物語は、萬屋での五十両紛失事件で格之進に嫌疑がかかり、お絹が遊郭に連れられ、格之進の仇討ちと五十両紛失事件の真相、年明けまでにお絹を救い出さねばならないというカウントダウン的なサスペンスまで、怒涛の展開で息もつかせぬ面白さとなっています‼️格之進と兵庫の囲碁のシーンからの、殺気みなぎる殺陣シーンもホントに手に汗握らせます‼️主役の草彅剛もそれなりに頑張ってるし、江戸に住む健気で明るい娘役がピッタリの清原果耶ちゃんは、その所作も含めて完璧‼️また時代劇をやって欲しい‼️格之進に感化されていく源兵衛役・國村隼さんもホントに上手い‼️敵役の斎藤工はもっと殺陣を練習しなきゃダメ‼️ラスト、すべてがうまく収まり、格之進と源兵衛ののどかな囲碁のシーンでハッピーエンドかと思いきや、格之進は自分のために貧しい暮らしを強いられているかつての城中の者たちのための贖罪の旅へ‼️ウーン、映画としての格が上がるラストシーンでした‼️
柳田格之進に文七元結風味をプラス
落語の柳田格之進が好きなので、公開翌日に見に行きました。最初は、萬屋源兵衛が落語での人物像と違いすぎだので戸惑いましたが、格之進との出会いで変わっていったのでひと安心。お絹役の清原果耶は、清らかなイメージの女優さんで昔から好きでしたが、この映画ではそれがより出ていてぴったりでした。
この映画を見て、草彅剛という役者のすごさが今まで以上に実感できます。最初の、どこかあきらめたような寂しい空気を漂わせていたのに、萬屋源兵衛との友情が生まれるところは感動します。でも、その後の彼が浪人となった真相が判明したときの、憤怒の表情と殺気を噴出する場面は、思わずこちらも身がすくみました。
ラストに関しては、どのサゲを使うのかなと思っていたら、割と古いサゲを使っていましたね。でも、現代の観客も納得する伏線があって素直にお絹さんの幸せを喜べます。柳田の今後の身の振り方も彼らしい結末だと思いました。
キョンキョンが貫録の女将を演じていますが、情があって優しいが冷徹な経営者の一面を見せる場面もあり、落語の文七元結の角海老(だったかな)の女将さんをほうふつとさせますね。それと、貫録と言えば市村正親!地元の親分を演じていますが、こちらも貫録でさすがの一言でした。ひとつ、不満を言えばなぜあんなに柳田を憎むのかもう少し納得できるエピソードがあればよかったかなと、個人的には思いました。
ひさしぶりに、時代劇を映画で見ましたがとても良かったです。感動しました。
評判ほどには
日曜朝イチ上映で、中高年のご夫婦を中心に結構観客は入ってた印象。
草薙クンって、主演でドラマや映画に出る度に話題になるって印象がある。
作品が地味なものが多いので「ヒットメーカー」みたいな言われ方ではないけど、評価されてるんだろうな。
で、本作。
草薙クン演ずる柳田格之進は、クレバーでクールな浪人かと思いきや、あることをきっかけに「復讐の鬼」と化してしまう。
「時代劇」というよりは、落語の「人情噺」という感じ。
(…と思って調べたら、やっぱりモチーフは落語だったみたい)
草薙クンの変貌ぶり、飄々とした國村隼っぷり、小泉今日子の貫禄…、映画としての見応えは確かにあった。
ただなぁ。
自分に見覚えのない嫌疑がかけられて、それがもとで妻は命を落とし、娘は売りに出される。
「ねぇ、あなたはナニしてるの?」
もちろんその時代の「武士たるもの」「男たるもの」といった常識もあるだろうし、あくまで落語がモチーフ、ってこともあるんだろうけど、萬屋の源兵衛に直談判して身の潔白を伝えることもなく、娘が自ら置屋に身を投じて手に入れた金でひとまずやり過ごす。
「大晦日までに必ず…!」
じゃねーよ。
妻の仇討ちと、娘の肩代わりした金とは、まったく別の話じゃんか。
そんな男にはやはり心のどこかで同情しきれない部分が否めない。
あと、これは時代劇を見慣れない私の勉強不足かも知れないけど、草薙クンと斎藤工の「殺陣」って、あれはどうなの?
私にはそれ以外の役者の太刀筋のほうが鋭かった気がするんだけど。
草薙クンの身のこなしは良かったとは思うんだが、剣さばきは気になった。
というワケで、かなりモヤモヤが残ってしまった分、皆さんのレビューほど高い評価にはならなかったな。
あと、あの入場者特典の小判50両のアレは何だろう。あれをどうすればいいのだろう。
シールでもなくカードというワケでもなく。
…何だろう。
仇討ちに加えて落語ベースということで更なる設定が加わる。この時、清...
仇討ちに加えて落語ベースということで更なる設定が加わる。この時、清廉潔白な主人公が武士の誇りをかけて仇討ちに行くが、、娘の行動は良いのかいって思っちゃう。
そこは当時の感性の違いというか…まあ、現代の人たちに分かるように過剰な説明をしないのが良い。
やはり草彅剛は存在感のある役者。前半の静寂さと中盤使命を帯びてから感情を荒げるシーンが増えて魅力が増す。
武士の矜持と人情味、両方を楽しめたし、落語っぽい滑稽さもあったりで満足。
誇りと驕り
無実の罪で彦根藩を追われ江戸で娘と2人で暮らす浪人が、自身に汚名を着せると共に妻を死に追いやった相手に仇討ちをする話。
実直な碁を打ち清廉潔白な暮らしをする主人公が、碁会所で知り合った両替商と親交を深める様になる中で、彦根藩の藩士からかつての冤罪が晴れたことを聞かされる中、新たな嫌疑がかけられることになって行くストーリー。
碁の知識なんかこれっぽっちもなく碁盤斬りってなんぞや?太刀盛りならわかるけど…という状況で観賞したけれど問題なし。
萬屋との対峙とかその後の関係とか小気味良いし、お庚もそんなヤツいるか?レベルだけどいい味出しているし、実直な主人公に真摯に向き合う人たちとの人情物語がとても良い。
そして徹底的に敵役な六尺の大男…これもまたわかり易くて安心してみられる時代劇という感じ。
50両の話しと仇討ちの話しは繋がりがなくて若干チグハグな感じはあったけれど、わかりやすくてとても面白かった。
軽味と清潔感を感じさせる前半部分は楽しく美しい。復讐にテーマが移る後半はやや陰惨で結末は明らかに蛇足。
五十両をなくすとか拾うとかいった噺はたくさんある。「芝浜」とか「文七元結」とか。でも本作の原典となる「碁盤斬り」ないしは「柳田格之進」は武士が主人公である点、古典落語のなかでは異色の存在である。多分、この噺は、武士の一分というか意地のために娘を女郎に売り飛ばしてしまう堅物ぶりを戯画化して、落語の主な聞き手である町民が思いきり笑い飛ばす、そういった趣きの滑稽話だったのだと思う。だって金が出てきたら首をもらい受けるだなんて真面目に取り合える話じゃありませんよ。
でも滑稽話のニュアンスを演者が伝えていたのは志ん生(五代目)、馬生ぐらいまでで、志ん朝が演じる頃にはもう自然に父と娘の人情噺に変性していたのだと思う。だから談志は、こんな深刻な噺はやんねえよ、といったのでしょう。
映画の前半部分、つまり五十両がなくなる十五夜の宴席までは、江戸世界が精緻に表現されていて楽しい。草彅剛という人は面白い俳優であって、たたずまいが美しく、でも独特の軽みがある。そして滑舌とセリフのリズムがよい。武家の娘らしい品の良さをきちんと演じている清原果耶さんと合わせて清潔感あふれる父娘の姿は実に気持ちが良いのである。
ところが、十五夜の宴席以降、柳田に萬屋の五十両を盗んだ嫌疑がかかり、同時に彦根藩を離れた時の遺恨の相手が現れて事態は緊迫化する。
柴田兵庫のくだりは映画としての創作部分であるのだが、ここがどうもいただけない。一つには狩野探幽の画を売ったとかまだ持っているとかいうなんだかよく分からない設定もあるし、斎藤工が彼だけは現代劇を演じているとしかみえないところもある。でもやっぱり復讐というものは本質的に陰惨なものであって、「碁さむらい」という落語に由来するモチーフの軽みとよく釣り合わない。だから映画としての全体のバランスが崩れてしまったのだと思う。
そして結末部分は、いわば観客サービスのようなものであって、明らかに蛇足である。碁盤を斬り捨てるところで映画としては決着はついているんだからあとは皆幸せになったんだろうなと想像させればいいんですよ。
碁盤切り
時代劇をあまり観ることがないので、この時代の人々の価値観とか考え方とかが読めないなか、物語がどう決着がつくのかハラハラドキドキしながら観ることができた。ただ、展開が急で後半詰め込み感あり。草彅剛は前半静、後半動の武士を演じるには適役だったと思う。
骨太の時代劇がイイ!
このところ質の高い時代劇が続けて公開されており、先週の「鬼平犯科帳 血闘」に続き、本作も期待して公開初日に鑑賞してきました。
ストーリーは、身に覚えのない罪で妻を失い、藩を追われ、江戸の貧乏長屋で娘・お絹と二人で暮らす浪人・柳田格之進が、その実直な人柄を気に入った質屋の萬屋源兵衛と碁を通じて交流を深めるようになったある日、旧知の藩士から冤罪事件の真相を知らされ、復讐と亡き妻の仇討ちのため、出奔した柴田兵庫の行方を追うというもの。
序盤の立ち上がりは、ゆっくりではあるものの、柳田の人となりや暮らしぶりを端的に描き、優しく作品世界に誘ってくれます。あわせて柳田を取り巻く主要人物として、娘のお絹、質屋の源兵衛、手代の弥吉、吉原のお庚などを登場させますが、多くは説明せず、かといって必要にして十分な情報が得られる、心地よい導入です。
中でも柳田と出会った源兵衛の変容の描き方がすばらしいです。柳田に興味をもち、その心根に打たれ、傾倒し、心酔し、それが商売のありようまで変えていくという源兵衛の心情の変化が、名優・國村隼さんの表情や台詞回しから手に取るように伝わってきます。そして、これが柳田自身の人柄を浮き彫りしているという構図がお見事です。娘のお絹にも同じことが言え、脇がしっかりしていることで、作品がぐっと引き締まるのを感じます。
演出面では、照明に気を遣った陰影のある絵づくりが印象的です。薄暗い屋内に灯るロウソクは、当時の暮らしぶりとともに、柳田の晴れぬ胸の内と復讐への思いを表しているかのようです。碁石を強く打ちつける柳田の横で、音を立てて揺らぐロウソクの炎は、抑えられない彼の憤りを如実に表しています。また、地方の薄暗い碁会所からは、むさ苦しさやほこりっぽさが感じられ、そこで魅せる柴田との対決も、決して派手さはありませんが、鬼気迫るものがあります。
そんな装飾を取り払った、素朴で骨太の時代劇であると感じられる本作。話の展開も決して気をてらったものではなく、どんでん返し的なものもありません。むしろ予定調和の王道展開とも言えますが、時代劇にはそれが似つかわしいと感じます。公開初日にも関わらず観客の入りが少なく残念ですが、誰にでもおすすめできる良質な作品に仕上がっていますので、ぜひ多くの人に観てもらいたいです。
主演は草彅剛さんで、演技にますます磨きがかかったように思います。脇を固めるのは、清原果耶さん、國村隼さん、中川大志さん、奥野瑛太さん、音尾琢真さん、市村正親さん、斎藤工さん、小泉今日子さんら豪華な顔ぶれで、誰もが役にピタリとハマる好演で一部の隙もありません。中でも奥野瑛太さんは、いつもとは異なる役どころながら、これはこれで悪くなく、これからの演技の幅が広がりそうな気がします。
白石監督らしさも?
「虎狼の血」など人間のどぎつい感情なイメージの白石監督の時代劇。どんなものかと思ったら、以外に静かな展開。草薙さんのキリッとした、強い意思がこもった演技と美しい映像がが良い。源平さんとのやりとりも渋い(國村隼の圧倒的安心感)。囲碁という設定のなせる技か。
でも、単純な勧善懲悪でなく、主人公のいきすぎた正義感や、吉原の闇の部分もしっかり描いてるのは白石監督。そして、斎藤さんは斎藤さんだった笑
以外に殺陣は少なかったな。
終盤の展開に納得できず
もう10年以上前に観た映画“任侠ヘルパー” で「へー、草彅っていい演技するんだ」と知った。以来彼の出演作品には注目するようになった。
本作も彼に期待して観賞。
【物語】
柳田格之進(草なぎ剛)は彦根藩士だったが、今は浪人暮らし。亡き妻の忘れ形見である娘のお絹(清原果耶)と貧乏長屋で2人で暮らしているが、家賃の払いも滞らせている有様だった。
それでも格之進は武士の誇りを捨てず、清廉潔白を信条に生きている。
あるとき、唯一の趣味である碁で対局した萬屋源兵衛(國村準)は格之進の人柄にほれ込み、碁の相手として親しくなる。そんなつつましくも穏やかな毎日を格之進は送っていた。ところが、あるとき藩を離れざるを得なくなった事件と妻の死の真相を知らされ、両方に元彦根藩士の柴田(斎藤工)が深く絡んでいたことを知る。格之進は亡き妻のために復讐の旅に出ることを決意するが、時を同じくして萬屋で大金紛失事件が起き、格之進に疑いが向けられてしまう。
憤慨した格之進は切腹して抗議しようとするが、死ぬことなく無念を晴らして欲しい娘お絹が起こした行動に後ろに退くことができなくなった格之進は覚悟を決めて旅に出る。
【感想】
期待した草彅の演技は本作も良かった。貧乏浪人に落ちぶれても武士の矜持を失っていない格之進を落ち着いた演技でしっかり表現している。
ヒロインお絹演じる清原果耶も、金持ち商人演じる國村準も役にピッタリだったと思う。
さらに言えば柴田役の斎藤工もナイスキャスティング。斎藤工は最近、善人よりこういう斜に構えたようなワルの役が多いが、今こういう役をやらせたらピカイチだと思う。
キャスティング、演技・演出の良さで中盤まではかなり満足して観ていた。が、終盤の展開に違和感を覚えて、満足度が大きく下がってしまった。
娘を持つ身として、格之進のとった行動は全く共感できない。
自分のメンツを保つために、娘を危険に晒すことをヨシとしたとしか言えない。なんぼ命懸けで復讐に赴いたと言っても。
父親なら自分が汚名を被っても娘の行動は止めたはず。メンツだけの問題ではなく、ああでもしなければ復讐の旅に出られなかったとしても。仇をとったら妻が帰ってくるわけではないのだから、目の前の娘の方が大事なはず。
萬屋の番頭が疑ったとしても、格之進に心酔していたはずの源兵衛が同調するのもまた納得いかなかった。
中盤まで良かっただけに、ガッカリも大きかった。
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