劇場公開日 2024年5月17日

「キシダ斬り」碁盤斬り かなり悪いオヤジさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0キシダ斬り

2024年9月23日
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ノワールな作風で知られる白石和彌監督がずっと撮りたがっていたという時代劇。落語の演目「柳田格之進」をベースにしたオリジナル脚本は、“白河の清き流にすみかねて...”をテーマにした現代日本にも通じる内容だ。清廉潔白であることが必ずしも周囲にいい影響を及ぼすとは限らない。“碁盤”に刻まれたます目のように白黒つけたがる几帳面な性格の柳田(草彅剛)が、“石の下”ならぬ“袖の下”を受け取るような(柳の如き)柔軟性も時には生きていく上で必要なのでは、と考えを改める(斬る)ストーリーになっている。裏金問題で揺れに揺れている現在の自民党政権を揶揄した内容とも言えるだろう。

一切株式や不動産投資物件を保有していないことを自慢していた鳩ならぬレイムダックこと岸田首相であるが、派閥解体と同時に四面楚歌で孤立、米国の後ろ楯を必要とした岸田は、結局ネオコンとウォール街の意のままに操られているバイ◯ン政権につけこまれ、大増税=一億総貧困という最悪の禁じ手に及んでしまったのである。清廉潔白な性格が災いし娘に貧乏生活を強いる結果となった柳田のように。かつてその柳田の告発によって藩の中枢から追い出されたという役人たちが、裏金議員と非難され派閥を解体された安倍派自民党議員と重なって見えた方も多かったのではないだろうか。

アメリカ次期大統領候補のハ◯スと同様無◯をさらけ出したネオリバタリアンもどきの小泉Jr.は問題外として、安倍派の復権をねらう保守高市と、アンチ安倍で徒党をくむ石破の一騎討ちになりそうな自民党総裁選挙。芸能人を呼ばなければ集会も閑古鳥だというヒラリーの妹分ハ◯スと、猫食いネタ→エプスタイン島事件→子供の人身売買→アドレノ◯ロム利権を公にしようとしているトランプとの間で現在戦われているアメリカ大統領選挙。生前立川談志が(バブリーな)“今の時代には合わない”として毛嫌いしていた演目を、あえてこの時代によみがえらせた白石和彌監督以下映画スタッフの慧眼を感じさせる一本なのだ。

50両の猫ババを囲碁友である両替屋の源兵衛(國村隼)に疑われた格之進、劇中、その娘お絹(清原果耶)が冤罪をはらすためキョンキョンが経営する売春宿に自ら身売りし金を工面するくだりが出てくる。それはまさに、臓器がほぼ出来上がっている妊娠9ヶ月までの中絶を推奨し、世界各国の紛争や貧困に介入、どさくさ紛れにいたいけな子供たちをいい値で買い取ったり誘拐したりして、性奴隷や臓器売買、はては脳内麻薬抽出のため子供の拉致監禁殺害へと及ぶ一大シンジケートの悪行を、揶揄していたとはいえないだろうか。

現代風の照明や安っぽいスタジオセット内で撮られている、(原作落語にはない)宿敵兵庫(斎藤工)とのクライマックスにおける殺陣などを見ていると、白石和彌が“小林正樹”というよりも“藤沢周平”をやりたかったことは明白である。しかしながら、日本の政治が、アメリカ的なコーポラティズムまたはその急先鋒であるネオリバタリアンどもの手に陥ってしまうのか、それとも、ある程度の柔軟性(裏金)を保ちながら安倍派保守陣営が復権しその防波堤となるのかの端境期にあるだけに、この映画時代劇風の現代劇ともいえるのである。

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かなり悪いオヤジ