「終盤以外は割と面白いパニックホラー」コカイン・ベア 因果さんの映画レビュー(感想・評価)
終盤以外は割と面白いパニックホラー
そんなにコカイン食ったらクマといえどさすがに死ぬだろ…という根本的ツッコミをグッと飲み込むだけの優しさがあれば意外にも楽しく観られるパニックホラー映画。
序盤こそダラダラしているものの以降の物語展開はかなりスムーズなので観ていて飽きない。同時並行的に進行していく群像劇のすべてに現れ、すべてを破壊していくシャブシャブベアーの八面六臂ぶりに拍手を送りたい。
やはり人間たちの愚かでせせこましい緊張関係をバケモノが一切合切台無しにする爽快感はこの手のアメリカ映画でないと味わえない。特にヤクの運び屋一行と老警官とクマの三者が織り成す東屋での一件はコメディとしてかなり出来がいい。
ただ、日没後の展開はあまりにもお粗末だ。パニックホラーとしての色味は完全に消え失せ、よくある「家族の物語」に舵を切ってしまったのは完全に悪手だろう。どうせなら露悪的なテンションを最後の最後まで貫徹してほしかった。それと同時にアメリカ人の家族信仰は未だ健在であることを思い知らされた。
こんなことを言うのもアレだが、女性や子供や小動物だけは何があっても救済しようなどという付け焼き刃の倫理観でこの手の映画を撮るのはあんまりよくないですよね…
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