「あたかも正義ぶっているが」おまえの罪を自白しろ R41さんの映画レビュー(感想・評価)
あたかも正義ぶっているが
この作品はサスペンスを背景に、正義とは何か??? と言いたいのだろうか。
ケンティは君塚幹事長の弱みを握り、新人政治家として表舞台に立った。この先、いつか起きるであろう逆転劇を示唆している。
しかし、この純粋な作品と多くのメジャーな役者を配置したこの映画がクローズアップしているのは「ケンティ」ではないのか?
登場人物にはすべて設定があり、それになりきる。
あれっ、どうしてそんな場所に尾野真千子さんが?
大どんでん返しのさすがの演技でした。
エライザさんの演技も素晴らしかった。完璧に演じていました。
でも私はケンティの演技が気になって仕方なかった。彼の中にある「僕が主役・かっこいい」が端々に出ているのが不自然で、この作品を壊している。(ごめんなさい)
さて、
作品はサスペンスだが、地盤の再調査が行われたとき、何故か炊き出し隊として豚汁をふるまう真知子さんがいた。もし本当に彼女が事件にかかわっていれば、あのようにはしゃげないと思う。加えて、その日に「死体を隠した場所を掘り起こすという」まだその土地と犯人との関係も動機も不明な状態でそれはないと思う。
この作品がモチーフにした「政治とカネ」 確かに政治は腐りきっているようだが、正義を前面に出していた警察やマスコミにも基本的な疑問はある。本当か?
登場人物たちはあたかも政治が介入して緘口令を敷いたなどとぬけぬけと言うが、メディアは常にネタを天秤にかけている。自民党の今の問題を薄める手段で「ジャニーズ問題」「松本人志問題」をあえて表ざたにしたが、警察も検察も介入することなく、火種は消えるどころかますます燃え広がっている。
「これは報道するな。代わりにこれを報道していいよ」メディアは堂々とこれに乗っていますよね?
それがこの作品でも描かれている。
しかし寺中兄弟の仕組んだ事件の動機は身勝手で共感できないし、当時の状況の描き方は希薄だ。
これに対し宇田副大臣を通して明るみになっていく政治家たちの思惑が割とリアルで、大どんでん返しとのバランスが悪いように思う。
事件によって人生観を大きく変えた宇田清治郎。いつまでも他人の所為にする寺中。
警察でケンティと寺中はなぜ出会う必要があるのだろう?
しかし、
誘拐目的が「おまえの罪を自白しろ」というのは素晴らしいセンスだ。
全部は言えないとする政治家たちのやり取りも面白かった。
子供の命と政治の天秤 犯人がもう少し様々なことを知っていれば、物語はもっと面白くなったように思う。
設定は作家の自由だが、この自民党政治の堂々巡りを変えるには「SF]くらいしか答えがないのかもしれない。