「おまえの罪を自白したその後…」おまえの罪を自白しろ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
おまえの罪を自白したその後…
中島健人主演なのでもっと若者向けのエンタメかと思いきや、なかなかの骨太サスペンス。
見応えあったが、ちと難点も。
衆議院議員・宇田清治郎の孫娘が誘拐された。
犯人は身代金の代わり、「記者会見を開いてお前の罪を全て自白しろ」と要求してくる。
揺れる政界。警察の捜査。清治郎の次男で秘書の晄司も真相解明に奔走する…。
清治郎の“罪”とは…?
総理の“汚れ仕事”もしてきた清治郎。内容によっては自身のみならず総理も危うい。
記者会見も開くか否か。清治郎周辺だけではなく政界やマスコミや警察の関心の的。
記者会見を開く。暴力事件やお金の問題を自白する。
…が、犯人が求めていた自白は違っていたようだ。記者会見のやり直しを要求。
現在スキャンダル真っ只中の清治郎。
橋建設の利権問題。
これに纏わるものか…?
橋の建設予定地が突如変更に。
総理の友人である建設会社への便宜が図られ、その糸を引いたのが清治郎。
内密だったこの件を、何者かが政敵にリーク。
目星が付き、問い詰める晄司。
改めて記者会見を開き、橋の件も暴露し、辞する事になった清治郎。
ほどなく孫娘が解放され、事件は解決したように見えたが…、
晄司はまだ何か引っ掛かる。さらに調べていくと、思わぬ犯人と動機が…。
元々建築会社を経営していたが失敗し、父の秘書に。
鳴り物入りで政治の世界へ。まだまだ半人前扱い。厳しい父。その父は“罪”についてなかなか口を開こうとしない。
苛立ちや疑念積もる中、何より姪の救出優先の為に奔走。
熱く、正義感あるが、野心も窺える…。幹事長(角野卓造が存在感!)との対峙シーンは白眉。
政治家/一人の男として成り上がっていく様と、新たな役柄に挑んだ中島健人の熱演がマッチ。
堤真一は言わずもがな。
堤他ベテラン/実力派がどっしりと幅を利かせ、中島他若手が躍動。そのアンサンブルも見応えあり。
コメディが多い水田伸生だが、スリリングでテンポよく、上々のサスペンス・エンターテイメントに仕上げた。
ここから難点。
テンポはよく引き込むが、ちと人物相関図が把握しづらい。人物の肩書き紹介スーパーは表示されず、時々どういうポジションで、誰と誰が繋がっていて…と考えてしまう。
真相を掴んだ晄司は警察とある罠を仕掛け、犯人を誘き出す。
現れた犯人は…
清治郎の娘の夫で市議員の事務所で働く女性スタッフ・初美。
動機は、橋建設の変更された地を掘り起こされれば、あるものも掘り起こされてしまう。弟と共に埋めた父の遺体…。
初美の家族はかつて建材工場を営んでおり、橋建設の立ち退き料で再スタートを考えていたが、突如建設予定地が変更となり、お金が入るどころか大借金を抱えてしまう。
父は発狂。そんな父を弟は衝動的に殺害。2人で父の遺体を埋めたのが、奇しくも変更となった建設予定地。
それを阻止する為の犯行であった。
政治家たちの裏工作に翻弄された庶民の悲哀。
それは同情するが、その為に何の罪も関わりも無いあどけない孫娘を誘拐するのは鬼畜の所業。
記者会見で罪を自白しろと政界や列島激震レベルの真相かと思いきや、大風呂敷広げた割りに真相はパーソナルで地味。スケールダウンや落差は否めない。
で、本作の最大の欠点は、初美役に尾野真千子。当代きっての実力派の女優が、何でもない事務所スタッフである筈がない!
動機はさすがに分からないが、最初から何かしらあると目星付いてしまう。よくミステリーで、キャスティングで犯人が見当付くっていう、あれ!
本作の製作陣は、この失敗こそ自白した方がいい。
まあでも、思っていた以上に面白かった。
個人的には続きが見てみたい。
辞した父に代わり、本格的に政界入りした晄司。その野心が向かう先は…。
本作以上の本格政界エンターテイメント。題して、おまえの野心を見せろ。
中島健人の当たり役になったり…なんてね。
すぐに目星がついちゃいましたね。
代わりに誰?
って思ってもこの難役をこなす女優が思いつかないし・・・
緊張がずうっと続いて、身を乗り出して見てしまいました。
続編も、是非中島健人で!!