「視聴者を欺く二重構造のプロット」おまえの罪を自白しろ ジョーさんの映画レビュー(感想・評価)
視聴者を欺く二重構造のプロット
なぜここに新幹線の駅や大学ができるの?、と誰かに問うと、きまって、「政治家が裏で糸を引いているんだよ」という答えが返ってきたものだ。
政治家による利権がらみの誘致そして建設計画。
利権が政治の派閥や世襲制の中で蠢き、地域社会のインフラが形作られる。
そんなイロハを知りたかったら、本作を入門書と考えるのも悪くはない。
政治家一家を脅迫する、誘拐犯の「おまえの罪を自白しろ」という殺し文句は、「利権がらみの裏話を包み隠さず公表しろよ」という言葉で置き換えたらどうだろうか。
現に本作の見どころは、宇田という政治家が、誘拐された孫娘のために、包み隠さず公表するところにある。
ただそれはほんの序章にすぎず、政治家=加害者、先住者=被害者という固定観念を微妙に操りながら、じわじわと核心に迫ってくる。
いわば視聴者を欺く二重構造のプロットで。
原作は、序章と第二章が全然違う話のように思えた。だが本作はそんな違和感が、映像ならではのキャラの躍動感で一掃され、間断なくスムーズな展開を実現している。そこがなによりも印象的だった。
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