劇場公開日 2023年10月20日

「何がどうなっているのか不明。2023年ワースト作品になりそうな予感。」おまえの罪を自白しろ yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5何がどうなっているのか不明。2023年ワースト作品になりそうな予感。

2023年10月20日
PCから投稿

今年359本目(合計1,009本目/今月(2023年10月度)24本目)。
(参考)前期214本目(合計865本目/今月(2023年6月度まで))

 まず、この映画は予告編ほかから憲法論を扱うということは明確に明示されていたので、私もそれ(公法=憲法と行政法ほか)は意識して見に行きました。

 結論からいうと「適当に法律ワードを並べるのも大概にしろ」というもので、もう何が言いたいのか理解ができない展開になっています。そうだとするとこの映画のもう一つの論点であるところの「犯人捜し」「動機探し」で論じるしかありませんが、これもヒントが少なく「これをノーヒントか映画で述べられている範囲だけで当てられる方いるのかなぁ…」という部分もあり(ヒント描写ってありましたっけ?)、ちょっとこう「採点拒否レベル」な状況です。

 法律ワードが出てくると、法律系資格持ちはその立場で見ることになりますが、その立場で見ると何が何だかさっぱりわからないウルトラ展開になるし(この点、多くの国民がこうした法律系資格を持っているのではない現状、一部の「それらしい」「法律ワード」を出せば何とかなる、という考えがあるのだろうと思います)、一方で法律ワードを「飛ばしまくり」で混乱させた映画(あきらとアキラ(商法会社法)、シャイロックの子供たち(不動産登記法)、この2映画を理解しきるのは相当な知識が必要)もあり、「両極端に過ぎる」というのが私の考え方です。

 正直採点拒否のレベルなのですが、そういうわけにもいかないし、感情論だけで適当な採点もしない主義なので、以下詳しく説明しながらいきます。

減点2.7の2.3を2.5まで切り上げたもので、2.5なんていう評価は過去にしたことがない(「それがいる森」、「大怪獣~」でも3.0扱い)ので、もう何がなんだか…。

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 (減点1.0/通達に関する理解不足(墓地埋葬事件関係))

 「通達」は「上級行政庁が下級行政庁に出すもの」であり、マスコミに情報統制を行うために出すものではありません。

  (墓地埋葬事件/ 昭和43年12月24日)
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 (最高裁の判例から一部引用)

(前略)…元来、通達は、原則として、法規の性質をもつものではなく、上級行政機関が関係下級行政機関および職員に対してその職務権限の行使を指揮し、職務に関して命令するために発するものであり、このような通達は右機関および職員に対する行政組織内部における命令にすぎないから、これらのものがその通達に拘束されることはあつても、一般の国民は直接これに拘束されるものではなく、このことは、通達の内容が、法令の解釈や取扱いに関するもので、国民の権利義務に重大なかかわりをもつようなものである場合においても別段異なるところはない。(後略)
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 つまり、マスコミ(新聞、テレビ局等)は県警の下級行政庁ではないので上記の理解ができず(下級行政庁の存在を観念できない)何を言っているのか不明です。
特に最高裁判例と異なる見解を述べるものは最高裁の存在意義を没却するので減点幅はものすごく大きいです。

 ※ この点、一部の「法律ワードを適当に出す映画」は、この「通達」や「避難命令」など一部の語を好んで使う傾向があるように見えますが(ちゃんとした考察がある映画ももちろんある)、この点はちゃんと資格持ちは見抜いてきます。換言すれば、「知らないと適当に騙される」(「騙される」という語が適正かどうかはさておき)のです。

 (減点0.8/法務省の権限発動)

 法務省に映画で述べられているような権限はそもそも存在しません。またこのため、映画の展開は無茶苦茶になってしまいます(ただこの点、そうしないと映画のストーリーが破綻するという問題もあって(上記の通達うんぬんも変ですが、あれもこれも変なので、もう波及的におかしくなっていて、どこを「源」と取るのか難しい)、ここまで無茶苦茶にするなら「映画の展開を優先しているので、日本国憲法については考えないでください」とか、「ここは日本ではない架空の国です」等としたほうが良かったのではとも思えます。

 (減点0.4/憲法71条に関する考察が雑) ※ ネタバレ回避のため条文番号でのみ記載

 この点、映画内では無茶苦茶な展開になっていますが、いったいどうなっているんでしょうか…。条文べったりな解釈以外ができない「学問上の争いのない条文」であり、ここの描写不足・考察不足がかなり変です。

 (減点0.3/心裡留保とその効果) ※ 会見を開くか開かないとかという話

 心裡留保(民法93条)は、相手側が悪意か善意有過失の場合は無効になってしまいます(映画内ではスルーされている)。

 (減点0.2/刑法と民法のクロス論点になる部分の描写不足)

 自転車で故意にけがをさせる行為は刑法上、民法上の両方で責任を問われます(民法上は不法行為)。刑事罰を受けた場合民事罰が免責される(あるいはその逆)ということでは「ない」のも、ちょっとどうなのかな…とは思います。

 (減点なし/参考/本映画にブチギレているのはなぜか)

 結局上記にも書いたのですが、多くの方が法学部出身だの行政書士以上の資格持ちだのといったことがない現状、一部の「法律ワード」は出てくるだけで何か意味がありげに見えてしまうところ、実際には「ある程度考慮不足だが言いたいことはわかる」を超えて、「もう適当の法律学大辞典か何かから語を拾ってきているだけ」になっており(特に「通達」と「避難命令」はお好きなようでしょっちゅう出てくる)、それらは資格持ちは一瞬で見抜いてきますので、「最低限の品質もないいい加減な状態にしないで」ということに大半つきます(最低限のチェックもしていれば指摘の一つも入ったのに…と思えます)。

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yukispica