「素敵…」探偵マーロウ kazmatさんの映画レビュー(感想・評価)
素敵…
チャンドラーの原作に高校生の頃出会って、それ以来ブレずにフィリップ·マーロウのファンだった私としては、これまで納得のいく映画はなかったのですよ。エリオット·グールドはニヤけすぎたし、ロバート·ミッチャムはタレ目すぎだし、ハンフリー・ボガートは背が低すぎだし。(注:私見です) 映像やストーリーの仕立ても「film noirにしとけ」みたいな感じで、チャンドラーの描こうとした、ロサンジェルスの陽光があってこその影の部分、っていう奥行きが今ひとつ伝わってこなくて。(注2:私見です)
それがここに来て、dark, tall and handsomeを体現できるリーアム・ニーソンの登場! 加えてニール·ジョーダンならではのアメリカを俯瞰した全体の演出!イギリスでの生活が長かったチャンドラーのアメリカ観が再現されているようで、本当に素敵でした!
かつて多分K書店が「タフでなければ生きていけない…」って訳してくれたお陰で😤、マッチョっぽいイメージが持たれているハードボイルド小説ですが、あれ、原文、tough じゃないですからね!Hardですから。清水俊二さんが「しっかりしていなければ…」って訳したニュアンスの方がずっと合ってると思う。だって、第一次世界大戦に従軍して傷つきまくった心を守る鎧こそが、感情を削ぎ落としたハードボイルドの文体なんだし。
そういう文学的背景への理解を感じさせる作品に仕上がっていて、大変満足いたしました。ありがとうございました。
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