劇場公開日 2023年4月7日

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「消防士、政治家、観光客や野次馬や、そして炎を見つめて聖歌を唱える多くの信者たち。 世界が固唾を飲んだあの日の火災のドラマ。 聖遺物も助け出されて良かった良かった。」ノートルダム 炎の大聖堂 きりんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0消防士、政治家、観光客や野次馬や、そして炎を見つめて聖歌を唱える多くの信者たち。 世界が固唾を飲んだあの日の火災のドラマ。 聖遺物も助け出されて良かった良かった。

2024年12月30日
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鑑賞方法:VOD

そういえば、
「法隆寺の金堂」が、その壁画が燃えてしまった時、1949年、
我々日本人の落胆はいかほどだったのだろう。

そういえば、
あの「京都の金閣寺」が焼け落ちた時も、1950年、
我々日本人の衝撃はいかほどだったのだろう。

国宝ではないが、戦火で失われたかつての国宝をやっと再建し、完成してすぐの「首里城」が、お粗末な電線管理で、夜闇に全焼した時には、沖縄の友人からワナワナと震える声での電話やメールが僕のところにあった。

拠り所や、まるで自分の家が燃えてしまったかのような憔悴が。

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850年の歴史を誇るフランス、パリのノートルダム大聖堂。
大屋根と尖塔。そして内部を全焼した5年前の惨劇を、ドラマと当時の実際の報道映像の併撮で、とても上手く作ってある作品だった。

僕もパリを歩いた旅路では、このセーヌの中洲、シテ島のノートルダムを訪ねたものだ。
薄暗い堂内にはたくさんの献灯が揺れ、世界各地からの観光客がひしめき訪れている。この映画のそのままだ。

主祭壇のファサードは、もちろん建物ごと東方を向いており、その方角はエルサレムを指している。
⇒オリエンテーションの語の由来。

けれど巨大な堂内にはあちこちに窪みがあって、それぞれに小さな祭壇があるのだ。

たくさんの彫刻。
見えないほど遠い天井。
ケヤキの幹のように空に向かって真っ直ぐに伸び切ったあと枝分かれする石の柱。
そしてその天蓋から地上へと降り注ぐステンドグラスの虹・・

オルガンをやっていた僕のお目当ての「パイプオルガンの演奏」には残念ながらかち合えなかったが、素晴らしい体験だった。

と、そこで僕が見たまさかの光景だ。
観光客の大群衆がみんな揃って上を向いてぞろぞろと歩いているその足元に、その暗がりに
男の子がひざまずいて、一心にマリヤ像を見つめて手を合わせていたのだ。

ロウソクのあかりに浮かぶ一隅に、祈っていた少年の横顔には、ハッとした。
ここは観光地ではなかったのだ。祈りの家だったのだ。

2019年4月 焼失、
2022年3月 この映画の封切り、
2024年12月 初ミサと再建記念コンサート。

マクロン大統領の掛け声で、たったの5年でここまで漕ぎ着けた。
パリ市長のアンヌ・イダルゴも本人役で、市庁舎執務室で演じている。

しかし、燃えているその生の映像のなんと辛いことか。
=撮影陣の呼びかけに応えた市民提供のアーカイブが、映画本編の5%を占めているのだそうだ。

配信にて鑑賞。

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きょう昼間に映画館で観てきたのは
「ビバ!マエストロ 指揮者ドゥダメルの挑戦」(2022 米)。
これは指揮者グスターボ・ドゥダメルのドキュメンタリーだった。

加えてその彼が、2024年の12月11日に「大聖堂再建を祝う演奏会」を開いたのが、このノートルダムだったわけだ。

850年ぶんのロウソクの煤や、あの火災の鉛と黒煙の跡もすっかり洗浄されて、再生の叶った大聖堂。
真新しく白く輝く堂内での、指揮者ドゥダメルのYoutube映像は、映画の悲壮さと相まって本当に感動的なシーンだ 。

それで僕は帰宅してから、チェックしてあった本作品「ノートルダム炎の大聖堂」を配信にて大急ぎで鑑賞。
あの地を訪ねた経験のある人たちにとっては他人事ではない、記念碑的な映画になったのではないだろうか。

「ドゥダメルのノートルダムでのYoutube」をこの映画の“特典”として、合わせてご覧になること、ぜひお薦めする。
感慨もひとしおだ。

きりん
きりんさんのコメント
2024年12月30日

連呼された「ロラン・プラド」の名前はもう忘れられませんね。
あとドナルド・トランプのそっくりさん?、ダミーの司令部、少女、ネコのお婆さん。
娯楽作品としても小ネタを配してあってなかなか(笑)

きりん