「映像のクオリティは見応えあり」ノートルダム 炎の大聖堂 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
映像のクオリティは見応えあり
世界に衝撃を与えた火災事故を描くとなると、ハラハラドキドキのエンタメ傾向に走るのも不謹慎だし、かといって力強い見せ場がなければドキュメンタリーと同化しかねない。その難しい部分をどうバランス良く紡ぐか。個人的に注目したのはジャン=ジャック・アノー流の経験豊富な采配だった。何しろこの人は『セブン・イヤーズ・イン・チベット』の時、アルゼンチンでのロケに加えて、秘密裏にチベット派遣したスタッフによる現地映像も織り交ぜて本編使用したというこだわりの持ち主。『ノートルダム』でもセットを駆使した臨場感あふれる火災現場の撮影に加え、ノートルダムとよく似た大聖堂でのロケや、一般募集した当時のリアルな火災映像を散りばめて、独自の臨場感あふれるタッチを作り上げている。こうした細部が質感を同じくしてスムーズに繋がっているのはさすが。ストーリー的な推進力には欠けるが、映像のクオリティは見応えあるレベルのものだった。
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