はざまに生きる、春のレビュー・感想・評価
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抵抗感や違和感
宮沢氷魚氏演じる透が発達障がいであることが前面に押し出されているが、当事者でないことに抵抗があるものの、雰囲気はあるし、ご本人も当事者や医療監修者に学びながら演技の努力を積み上げられた作品ではある。小西桜子氏演じる春は、同棲相手がいながら、あやうさを感じる透に惹かれていく展開にも抵抗感が募ったものの、制作した監督自身の体験がそのようなものであったのなら、それも自然なものなのかもしれない。平井亜門氏演じる俊介は、春に透の特集企画を勧めながら、自分からは透に積極的に関わろうとせず、変わった人だと言い放ったり、春の嫌がるはずの右側に居ても春は反応しなかったところや、葉丸あすか氏演じる瑞希は、当初発達障がいへの理解のある様子がなかったにもかかわらず、透に惹かれていく春に忠告をする姿に違和感があった。むしろ障がい者に保護的な視点の持ち主が、障がい者を恋愛で傷つけないように身を引いてほしい、という忠告もありがちかと思ったけれども、そうではなかった。女性の気を惹いては打ち捨てる男性像としては、『谷間の百合』や複数の映画版のある『コレクター』の問題ある登場人物にも似た性格も含まれるのかもしれないと思った。芦那すみれ氏演じる百合の役回りに、ちょっと驚きを感じた。
心がチクチクする
青がグレーに変わる時。
青い絵しか描かない発達障害を抱える画家の屋内。編集者として彼と出会う春。一見純粋な青年と健気な女性との純愛映画のようですが、そんな淡いものではありません。これはある意味裏切られました。
屋内の自由さ。純真さ。孤独や生き辛さに惹かれ、春の一方的な想いが静かに暴走してゆく。これ見方によっては結構正気の沙汰でないのよ。だって同棲中の恋人いるやん。悪意のない無神経さと悪意のある距離感。健常であることと障害と診断されることのはざま。グレーゾーン。人はいつだってきっと何かのはざまに立っている。春はどんなはざまにいるのだろうか。
小西桜子が圧倒的かわいらしさをもって春の隠れた邪悪さを体現しています。とにかくめっちゃかわいかった。ラストシーンが意外とあっさりしてるのでそれで何とか踏みとどまったように思います。なかなか危ない展開でした。
「透とのはざま、周囲とのはざま」
春はピンク、ピンクは虹スペクトラム。本当は誰もがはざまを生きている
カウンセラーをやっている友達に言わせると芸能界なんてアスぺ(アスペルガー症候群)の人ばかり。グレーゾーンが多いのよ、とのこと。(マジか?!)
つまり人より抜きん出て世に認められ、人気を得るというのは “フツー“ ではダメなのだ。
映画コンテスト“感動シネマアワード”にて大賞を受賞した本作は主演の宮沢氷魚ありきで作られた。だからこそ彼の魅力が隅々まで感じられる。
はざま(グレーゾーン)には生きていない屋内透は青ばかりを好む発達障害を抱える画家。
映画冒頭で公共施設(マンション?)の壁にいきなり群青のペンキを手の縁でハートのような形に塗りたくり「光を閉じ込めた」と笑顔の透にはまったく周囲の困惑が見えていない。
こういうのあるあるなんだろうなぁ、と思わせる。確かに彼の壁画はとても素敵に映るけど。
一方で建物の管理人がやってきて「許可もなく困る」と言われて頭を下げる小向春は一見、ちょっと気が弱い雑誌編集者。
だが、物語が進行するにつれて「はざま」に居るのは透ではなく、この春なのでは?と疑念が湧いてくる。
屋内透が障がい者手帳を出して割引で施設に入れることを春に告げる場面で初めて春は透がグレーゾーン(はざまの人)ではないことを知る。
自分の左側に人がいないとダメという徹底的なこだわりを持つ春。そして、同棲中の恋人がいるにもかかわらず当たり前のように朝帰りをする春。ここでも春は透に夢中になり過ぎるあまり現実が見えてない状態だ。
帰宅して初めてそこにいる恋人に気づいたかのよう。
つまりグレーゾーンは春自身。
または「自分は “フツー“ と思ってる観客」に問われるわけ。その “フツー“ とはどこに線引きがあるのかと。
葛監督は実体験をもとにこの作品を書いたとのこと。ご自身が恋をした相手が発達障害を抱えていて、その真っ直ぐなところに惹かれる反面きっと辛いこともあったのだろうと憶測する。
春の持つイメージ色のピンクは物理学ではまさに存在しない不確かな色(赤と紫のはざま=虹色スペクトル)なのだ。
終盤、美しく咲いた桜のピンクはあいまいでもなんでも良いではないか、広い心で受け止めあって行こうよ、という象徴に私には見えた。
宮沢氷魚くんが「エゴイスト」についで透明感キラキラで上手くって、画も美しくってそれだけで見てられるので4.0です!
だまし絵のような映画、アスペルガー症候群とグレーは何人でしょうか?
アスペルガー症候群の方の恋愛映画で、ホンワカ優しい気持ちになる、、、と思ってたけど。
とてもホラーで胸くそ悪いストーリーです。
見終わったあとの後味の悪さに低評価!
とも思いましたが、他の方の感想を観て、だまし絵のような不思議な映画と気が変わりました。
ちょうどNetflixでアスペルガー症候群の殺人鬼のドラマを観ましたが、別の意味でこっちも怖い。
主題は、アスペルガー症候群の方が、行きにくかったり、悪気がなく人を傷つけてしまうという話。
また、ハッキリ診断された人もいれば、そうではなく、自分では気が付かない状態で行きにくい人もいる、という話だと思います。
たぶん、アスペルガー症候群の人は○人、「グレー」はz○人出てきます。最も周りの人を傷つけて酷いのは、、、だれ?
って話だと思いますが、これはホラーですね。
あんなことして、悪いことをしているとも思ってないとは、、胸くそ悪い。
私は、とにかく音が苦手です。急な大きな音やホワイトノイズのような音がずっと続くのも苦手ですが、映画館で平気でしゃべり続ける2人組はマジでイラつきます。多分彼女たちも、映画中にしゃべらないということが出来ず、喋りはじめると止められないのだろう、、、なのだろう。
ならしょうがない、全員が思いやりがあって優しければ良いのです。
結果、ホンワカ恋愛映画を予想していた分、ギャップが凄い。
ただ、見方によっては、ホンワカ恋愛映画でもあります。
人によっては正反対に感じるだまし絵のような映画でした。
仕事も恋も上手くいかない編集者小向が画家としてストレートに生きる屋...
発達障害いる❓
発達障害のアーティストと、同棲中の編集者の恋を描くストーリー。
宮沢氷魚がイケメンすぎて、発達障害を演じてる宮沢氷魚にしか見えなく、中々入り込めなかった。
これ、チョット破天荒で周りの空気を読まず、それこそグレイゾーンじゃないかと噂される程度のアーティストの恋愛像でも充分成立したんじゃないか?って思ってしまうと、終始違和感ばかりが見えてしまって…。ヒロインもフワッとした感じで、彼氏と主人公のはざまに身を置く(タイトルとは関係ない)あざとさとかが無く終始強弱なくポワポワした可愛い印象しか無かった。主人公に惹かれる表情の裏にある葛藤や陰鬱さといった強弱が少なくノッペリとした感じで終わってしまった。
ストーリー的にはとても面白かったです。
タイトルの意味
感動シネマアワード「新進気鋭の俳優を主演にした映画の企画・プロデュース」部門。
宮沢氷魚を主人公に据えた企画でグランプリを取り、製作された映画だそうです。
知らんかった。
芸能事務所のレプロエンタテインメントが主催。他にも5名の所属俳優に対して募集をかけて、それぞれグランプリを取った企画が映画化されるので、全部で6本!
すごいですよね。お金あるな〜!
いや、待てよ。
主演のオファーを取りに行くより、よっぽど合理的か。
出演料だって自社だから抑えられるだろうし。
うまくいけば代表作になるかも!?
何より若手監督とのタッグはお互い良い刺激になっていい事づくめ!
今後の作品にも注目したいです。
「発達障害」の画家を氷魚くんが透明感たっぷりに演じているので、いろんなことを知るきっかけになる映画です。
確か私がサヴァン症候群の事を初めて知ったのも『レインマン』だった気がします。
映画は1人の人物の内面に深く入り込めるので、情報や知識としてではなく、もっと能動的にいろんな事を知るきっかけになると感じています。「頭ではなく心で知る」という表現がピッタリかも。
障がいやハンディキャップの描き方は非常に難しい部分があると思いますが(個人的には必要以上に聖人化するのとかが苦手)
それでもなお、賛否両論を覚悟のうえで、伝えたいことや知ってほしいことの為に果敢に挑戦した作品だと感じました。
発達障害の特徴の一つに「強いこだわり」があるそうですが、自分のこだわりについてや、していは自分自身について、もっと知りたいと思ってもらえる心地よさ。
それは恋愛感情に限らず、自分という存在と向き合ってくれる心地よさだと感じました。
春は透のことを「もっと知りたい」と感じますが、実は春は透の中に春自身のこだわりや生きづらさの延長線上にある解放を感じ取って、そこに惹かれたのではないかと思いました。
透は、理屈ではなく「こだわり」自体を肯定してくれる存在であり、春は自分をわかってもらえる心地よさに、更に惹かれていったのではないかしら。
透は春によって「知りたいと思ってもらえる心地よさ」を初めて感じますが、春もまた透から「知りたいと思ってもらえる心地よさ」を感じていたと思います。
だいたい、障がい者か否かなんて、制度的なカテゴライズにすぎない。
テストの数値や生活状況などを踏まえた一定の判断基準の結果、手帳がもらえたりもらえなかったりするだけで、人間の特性はもっとグラデーション。
ややその傾向があるが、基準とされるレベルではない人を「グレーゾーン」や「はざま」と呼ぶそうです。
春は「発達障害であること」や「障がい者であること」に過剰に反応しますが、それは鏡返しに自分の中の偏見の表れだと感じました。
決して「発達障害」という未知の人類がいるのではなく、グラデーションの強弱に違いがあるだけ。
『はざまに生きる、春』すごいタイトルです。
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