「2人の幸せ」アナログ U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
2人の幸せ
好きだ。
予告編を見て、こうなるんだろうなぁと予想する事は外れる事はない。大概の人が予想する物語を外れる事はきっとないと思う。
だけどね、見れちゃう。
ちゃんと感動もする。
本編が始まってフと感じた事は「なんだか沁みるなぁ」って事だった。二宮氏の芝居のせいなのか、その演出なりカメラワークのせいなのか分からないのだけど、なんか沁みてくように作品の中にいざなわれる。
不思議な感覚だった。
カメラマンが女性の方だったというのもその要因の一つなんだろうか?
説明されるでも押し付けられるわけでもない、凄く静かにじんわりと入ってくような感覚があった。
二宮氏のリアクションがとにかく愛らしい。
初恋なのかと思う程に初々しい。
彼が彼女と人生を生きていく選択をする事がとても納得できるような役作りだった。
波留さんにはとにかく品があった。
たおやかで奥ゆかしくて…可憐であった。
そんな2人を堪能してしまう。
大人になってもこんな風に恋におちれるのは素敵だなぁと微笑ましい。
例え、筋が分かっていてもそう思えてしまう。
ディテールの良さなのかと思う。
言葉遣いや、切り取られる表情、2人が重ねていく時間。母の葬儀を経て海辺で抱き合ってる絵や、初めて手を繋いだカットとか、焼き鳥屋で「いいから帰れ」とふざけ合う友達同士とか。母の頭を撫でる俯瞰の絵とか。結末に至るまでの日常が瑞々しかった。
出来過ぎだと言う人もいるかもしれない。
でもいいじゃないか。そんな奇跡が起こったって。
彼の一途な想いが実ったって。
彼女の切なる願いが叶えられたって。
どんな状況だって2人が幸せを共有できてるなら、それに勝ることなんてないじゃないか。
俳優陣は皆様好演でした。
桐谷氏がすこぶるいい。絵空事と現実を繋ぎ止める接着剤のようだった。
▪️追記
タイトル「アナログ」の意味を考えてみた。
対義語がデジタルなのだとすると、アナログには画一的ではない幅を感じる。
もちろん、完成形はある。見本のようなものも時と場合によってはあるだろう。ただその制作過程においてアナログな手法を選択するならば多少のズレは生じる。
本作で言う恋愛の形なのかと思う。
デジタルになりようがないというか…2人で手探りで手繰り寄せていくものなので、同じモノはない。
幸せという完成形はあるものの、そこに至る過程も内容もそれぞれちがってしかりなのだ。
そんな事を「アナログ」って題名に結びつけてみた。
たぶん違うんだろうけど、ちょいと腑に落ちた。