「気持ち悪いセリフを言いたくなるのもわかる」アナログ kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
気持ち悪いセリフを言いたくなるのもわかる
「携帯電話を持っていない」と言われたとき、今の時代にあえて持たないという選択をした人に「どうして?」と聞けるだろうか。聞いたところで納得する答えは返ってこない気がする。しかもこちらが何を言ったってその人の考えはたぶん変わらない。携帯電話を持たないことで連絡がつきづらいという不便さがあったとしても。
本作を観る動機となったのが、毎週カフェで待ち合わせていた女性が突然来なくなった理由はなにか?ということ。携帯電話を持たない女性だから、リアルで会っている時間だけで相手のことをどこまで知ることができるかという問題も気になっていた。
いや、もちろん携帯電話がなくても固定電話を聞くなり、PCでやりとりできるメールアドレスを聞くなり、連絡手段は何かしら見つけることはできなかったのか?と思うところはある。でも、アナログなやりとりをする2人の関係を微笑ましく見させてもらった。
そして桐谷健太と浜野謙太が演じる友人との関係も微笑ましい。ふざけたり、いじったり、冗談を言い合うのに、とても相手のことを思っている。あのアドリブっぽいやりとりが楽しかった。この映画が温かいものになっていた一因だと思う。
ものすごく驚く秘密が隠されていたというわけではない。いや、それなりには驚くか。そもそも謎解きの映画ではないから、彼女に何があったんだ?ということよりも、これからどうなる?という未来のことに自分の関心がシフトしていったんだと思う。2人の心の通わせ方や愛の育み方がとてもよくて、後半まんまと泣かされてしまった。こんなにも泣ける話の原作を書いたのがビートたけしだってことにも驚く。
彼女が携帯電話を持たない理由は、私が今まで聞いてきたいろんな人の理由とは全く異なるものだった。こんな理由なら納得する。そして、持ってもらえる未来も感じる。いい映画だった。