劇場公開日 2023年10月6日

「携帯電話が普及する前の恋愛が懐かしい」アナログ 梅じんの相棒さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0携帯電話が普及する前の恋愛が懐かしい

2023年10月15日
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鑑賞方法:映画館

4、50代には若き日の自分の恋愛を思い出させるのではないでしょうか?
連絡を取るにも自宅の固定電話しかない時代、それでも不便と思ってなく、それだからこそ相手のことが気になり想いもつのる。待ち合わせに遅れたり行けなくなっても連絡手段がない。
今の若い人には想像もできない不便さこそが、恋愛の背中をグイグイ押す。
劇中では設計の仕事もデジタル化されてもなおアナログな鉛筆でのトレースやCGやCADでなくペーパークラフトでの完成模型の良さ、カタカナ言葉を使い過ぎて中身がまったく伝わらない上司等、古き良きことを忘れるなと言っているかのよう。
まさに全てにおいて効率第一、そのためのデジタル化、しかしそこには失われたつつある人間の暖かさ、流れる時間、恋する相手を思う時間さえも失っては本末顛倒で温故知新の精神こそ大事と作者は伝えたいのだと思った。
映画のストーリーとしては恋愛ものだから何も言わないが、始めに触れたように昔の自分達の思い出を呼び起こしてくれ、二宮くん、波瑠さんに自分を重ねて入り込める映画です。
他の人のレビューにもありますがキャスティングが最高。
二宮くんの演技はセリフがない感情の流れを表情に出すのは流石、波瑠さんは今まで何とも思わなかったが高貴で美しく聡明で影のある女性を見事に演じて終盤の無表情すら演技として素晴らしいと思った。
脇を固める親友、母親、同僚の上司や後輩、カフェのマスター、姉、クライアントすべてが良い。
映像もおしゃれ、暗転が多く長いことも時間の流れを表現してると、タイパを気にする世代への抵抗とすら感じた。
残念なのはアナログなんだからグーグルマップが使えなくなったら通行人に訪ねたり、行けなくなったら店に電話すればとか思うよね。
まあ便利ツールがなくても、無駄に思えることさえも何か発見があって無駄でなくなるよと表現したいんだろうとは理解してるけど。
でも久々に惹き込まれる素敵な恋愛映画を観させてもらいました。映画館でもう一度観たいな。

梅じんの相棒