「「あざとさ」ばかりが気になってシラケてしまった」アナログ tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
「あざとさ」ばかりが気になってシラケてしまった
たとえ相手が携帯電話を持っていなくても、待ち合わせ場所のカフェに電話して「今日は行けなくなった」と伝えてもらうことはできるだろうし、家の固定電話の番号や住所を聞くことだってできるだろう。
個人的に、「アナログ」と言えば、「電話」のことよりも、(メールではなく)「手紙」のことを思い浮かべるということもあって、2人が会えない状況を作り出すための仕掛けに、どこか違和感を覚えてしまった。
また、出逢った時こそ、彼が選んだ装飾品や彼女のバッグについてのセンスが一致して、「お似合い」な感じがするものの、それ以降は、彼女が好きな落語にしても、クラッシックにしても、彼の方は門外漢で、2人が愛を深めていく様子が実感できなくなる。
そうこうしているうちに、突然、彼女が姿を消して、やがて、その理由が明らかになるのだが、そんなにタイミング良くアクシデントが起こるものだろうかと、あまりにもわざとらしい話の作り込みに興醒めしてしまう。
その、会えなくなった理由にしても、彼女の過去と関わりがあるのならいざしらず、それとはまったく関係のない「交通事故」というのは、どこかチグハグしているし、安易過ぎるのではないか?
しかも、それで彼女が亡くなったのなら美しい悲恋で終わったものの、脳障害で意思疎通ができないまま生き続けているという展開に、作り手の「あざとさ」が垣間見えてしまうのである。
それでも、百歩譲って、彼は、彼女のことを、何十年も介護し続けたという話になったならば、それなりにリアリティがあって、感動できたかもしれないが、結局、ラストは、嫌な予感が的中することになる。
要は、「観客を泣かせてやろう」という魂胆があからさま過ぎて、泣けるどころかシラケてしまうのである。
携帯電話を持っていても、世間から距離を置くことはできるだろうから、彼女が携帯電話を持たなかった理由もよく分からないし、最後まで「アナログ」というタイトルが活かされなかったことにも、物足りなさが残った。
どうもありがとうございます。
さすがに、ビートたけしだから、二宮和也だから、波瑠だから、幾田りらだから、無条件に「良い」という訳にはいきませんね。
基本的に「泣ける映画」は嫌いではないのですが、これは「泣かせにくる映画」で、かえって引いてしまいました。