「距離の近さが貴重」プーチンより愛を込めて N.riverさんの映画レビュー(感想・評価)
距離の近さが貴重
もう四半世紀前の話になるのか。
プーチンが今の地位に就くまでと、後をまとめたドキュメンタリー。
気付けばけっこう昔のことで、いまさらどうだったかが曖昧ゆえ、本作を観て改めてそうだったのかと思う。
誰も民主主義についてを、その危険や責任をよく分からないままただカタチをなぞり、手探りであの選挙は行われたのだろう。態度で示すとはいえ、公約の一つも上げずでは今の選挙では胡散臭すぎて、さすがに選択枝には残らないはずだ。
したたかに人心掌握。淡々と本懐を成し遂げてゆく氏の抜け目なさがとにかく目を惹いた。
本当にソ連時代へ戻りたい、と訴える人がいるのかどうかは別としても、人生の大半をそこで過ごしていたならアイデンティティクライシスは想像できる。ソ連時代へ戻そう、という思想を持つことも変ではないと感じた。
ただそれはあくまでアイデンティティの範疇であり、そのために他国を脅かしていいとは思えない。氏が見る国家の姿はやはり、想像しづらい。
撮影者かつインタビュアーである本作の監督は今、健在なのだろうか。
氏の初当選時、そばにいた選挙事務所のメンバーのほとんどが野党に移る、もしくは死亡していることを考えるとうすら寒さを覚えるしかない。
また後押ししたエリツィンの、カヤの外感がとにかく切なかった。彼も民主主義を勘違いして、方法を誤った一人だとしか思えない。
公務を通して観る氏とはまた違う側面が垣間見える本作は、ともかく貴重な記録だった。
プーチン若い。
冬の長いロシアにおいてスーツにコート姿が多い画面が妙にゴージャス。ドキュメンタリーというより、古き良きアメリカ映画を観ているような雰囲気さえあった。
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