「プーチンの人たらしの真髄、怖さ/恐ろしさ、手強さが満載」プーチンより愛を込めて Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
プーチンの人たらしの真髄、怖さ/恐ろしさ、手強さが満載
ロシア政府から指名手配され入国禁止のビタリー・マンスキー監督・脚本・撮影による2018年製作(102分)のラトビア・スイス・チェコ・ロシア・ドイツ・フランス合作映画。
原題:Putin's Witnesses、配給:NEGA。
大統領選挙の時にプーチンの当選を祝ってくれた多くの身内の人間たちが、映画には長時間映し出されていた。その内、リュドミラ夫人は離縁、そしてメドべージュ以外は皆、反体制派に転じたり(exグレブ・パブロフスキー)、亡くなったり(exミハイル・レシン: 鈍器による頭部損傷)、体調不良に陥ったり(exアナトリー・チュベイス: 手足の痺れで入院)、投獄されたり、海外脱出と、後日クレムリンの側近ではなくなったことが伝えられる。怖い、恐ろしい。ライバルになり得る人間は事前に消し去るヤクザ映画のストーリーみたいだが、後日明らかとなる事実なのが何とも恐ろしい。
市民を恐怖に陥れ、無名だったプーチンがテロへの断固たる姿勢で人気を得ることに繋がった爆破テロ事件は、状況証拠から自作自演が示唆されていた。市民の命を犠牲にして平気、権力得るためには手段を選ばぬ策略に、神を恐れぬ鋼鉄の意志を感じてしまう。
後継の大統領としてプーチンを指名したのが健力闘争に打ち勝ちソ連を葬った英雄エリツィン。プーチンの大統領当選を我がことの様に喜び、プーチンに電話をかけるが、その恩人の電話に出ないプーチン。権力を得た瞬間から手のひら返しを行うプーチンの冷徹さや計算高さが印象付けられた。そして静かに、淡々と反エリツィン政策、ソ連への回帰や報道機関の国有化を推し進めていく。
エリツィン大統領は政権末期、酒浸りで正常ではなかったとの報道も見聞きしたが、映像からはそうは全く見えない。プーチンへの大統領移行に関し、20人以上と多くの候補者の中からセレクトし、嫌がる本人を熱心に口説いた結果引き受けてくれたと、嬉しそうに語って入た。後の方では赤呼ばわりしてたが、言わば禅譲時は随分とプーチンを気に入りかっていたことが映像から伺えた。恩義/貢献や人の命を何とも思わない奴だが、プーチンは凄い人たらしでもあるらしい。英国首相や米国の歴代大統領も騙されたらしく、敵として実に手強い相手であることを再認識させられた。
監督ビタリー・マンスキー(ロシアのドキュメンタリー映画監督、2014年からラトリアの首都リガ在住)、脚本ビタリー・マンスキー、撮影ビタリー・マンスキー、編集
グンタ・イケレ、ナレータービタリー・マンスキー。
出演
ビタリー・マンスキー、ウラジーミル・プーチン、ミハイル・ゴルバチョフ、ボリス・エリツィン、トニー・ブレア、アナトリー・チュベイス、ベロニカ・ジリナ、ライサ・ゴルバチョフ、ミハイル・カシヤノフ、ミハイル・レシン、ドミトリー・メドベージェフ、グレブ・パブロフスキー、クセーニャ・ポナマロワ、ウラジスラフ・スルコフ。