劇場公開日 2024年10月11日

「◇悪の拡散から悪の凝縮、内向化」ジョーカー フォリ・ア・ドゥ 私の右手は左利きさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5◇悪の拡散から悪の凝縮、内向化

2024年10月15日
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鑑賞方法:映画館

 前回のインパクトが圧倒的だったホアキン=ジョーカーの二作目。<<一作目の流れ>>都市生活者の孤独→無軌道で出鱈目な暴力被害→報復のつもりが過剰防衛殺人→公開殺人→悪そのものの拡散→市民の暴徒化

 二作目ということで、一層エスカレートした悪、大衆化して拡散していく悪が描かれることをどこか期待していたかもしれません。勧善懲悪、正義のヒーローものを見ている時に、悪役を応援したくなる気分が立ち上ってくるような捻くれた感覚です。

 そんな期待に反して、この作品のストーリーはより個人的で内向的な方角へと舵を切りました。ジョーカー→アーサー(ホアキン)の煙草🚬🚬の本数に比例して、個人的な内面へと潜行していく奥深さ底なしの暗さが増していくようです。舞台の多くは密閉された監獄であることにも息苦しさを感じます。

 どこまでも暗く閉塞感に陥りがちな場面を盛り上げるのがミュージカル仕立てのステージです。もはや現実と妄想の区別も曖昧なまま唐突に挿入されています。

 ♪♪往年のハリウッド的ビッグバンドジャズの選曲。あまり馴染みがない分、新鮮かもしれません。
♪Slap That Bass / Get Happy / What the World Needs Now Is Love
♪For Once in My Life
♪ If My Friends Could See Me Now
♪ Folie à Deux
♪ Bewitched
♪ That's Entertainment
♪ When You're Smiling (The Whole World Smiles with You)
♪ To Love Somebody
♪ (They Long to Be) Close to You
♪ The Joker
♪ Gonna Build a Mountain
♪ I've Got the World on a String
♪ If You Go Away
♪ That's Life
♪ True Love Will Find You in the End

 内面を語るには最適の名優揃いのキャスティングゆえに、演技の化学反応(CHEMISTRY)のような絡みがあっても良かったのに、それぞれが孤独の中に沈んでいくようでした。歌って踊る刹那的なステージの盛り上がり、それさえも主人公アーサーの妄想として解釈できそうで、まるで、現代の仮想空間(スマホとか)の中で各々個人的な喜びに深く埋没していく群像の象徴のようにも感じられて、恐ろしい気分。"アンチヒーロー"というヒーローの存在も否定されるような個人的趣向の寄せ集め世界。

私の右手は左利き