劇場公開日 2024年10月11日

「フォリアドゥ(二人狂い)ではなく、つまらないマッチポンプ(一人芝居)」ジョーカー フォリ・ア・ドゥ ガッキーさんの映画レビュー(感想・評価)

1.5フォリアドゥ(二人狂い)ではなく、つまらないマッチポンプ(一人芝居)

2024年10月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

難しい

続編として、映画をシリーズ化させること自体は別段、珍しくもなんともない。
だがまさか、あの「ジョーカー」の続編が作られるとは夢にも思わなかった。
しかも内容はミュージカルという、この斜め上からのカウンターには当然、面食らった。

強烈なアナキズムを通して悪の誕生を鮮烈に描き、世界中で大ヒットした「ジョーカー」のまさかの続編。

大きな賛否両論を呼んでいる本作だが、
よく、思っていた物と違う、というニュアンスの例えとして、
ラーメン屋に入ったらラーメンじゃなくて◯◯が出てきた、みたいな言い回しをする事があるが、
例えばこれが、牛丼、とか、カレー、とかならまだ理解しやすいが、

本作の場合は、珍味が出てきた、という感じだろうか。

分かりやすい味とは違う。どう味わったらいいのか困ってしまう。
まさにそういう、困惑を覚えてしまう映画だった。

「ダンサー・イン・ザ・ダーク」や「シカゴ」を思わせるミュージカルで、このアイデア自体は非常に面白いと思った。

ただ、致命的なのは、そもそもそのミュージカルの出来が大してよくはないと言う事。
ミュージカルを通じて、場面や心情の説明をしているというのは分かるのだが、
ほんの隙間さえあれば逐一にミュージカルを入れてくるので、流石にうんざりしてくる。

しかも本作のミュージカルは、全てが妄想の世界になるため、即ちストーリーの進行が停滞してしまっている。
だから全体のテンポを大きく削いでしまっている。

しかも、刑務所と裁判所を往復するばかりなので、場面転換の少なさなので、絵的にも飽きてくる。
いちいち前作を振り返りすぎるせいで、全体の進展が遅いうえに少ない。
上映時間が138分というのはどう考えても長すぎる。

とどめに終盤は、延々と色んな意味で“戻っていく”という展開なので、
いかんせん、この内容だと、どんどんどんどん盛り下がって、尻すぼみになものになってしまうのは必然だし、
だから観終わっても強いモヤモヤが残ってしまう。
完全に前作と逆の流れになっており、挙げ句の果てにあの結末では、そりゃあ前作のファンが激怒するのも無理はない。

終盤にアーサーが受ける、ある暴力のシーンを変にカットしたのも酷い。
寧ろ、あの暴力のシーンは、アーサーを絶望のどん底に追い込む流れの為にも、ストレートに見せるべきだと思った。
上手くやれば、「1」の証券マンたちとのシーンの対比として見せる事にも出来たかもしれないのに。

そもそも看守たちがそこまで悪質に思えなかったのも問題。
粗暴と言えば粗暴だが、ジョークが成功すれば煙草をくれるし、
上下関係を逸脱した行為には暴力を振るうが、それは当然の事。終盤の凶行だってアーサーが原因。
「スリーパーズ」みたいな最悪レベルの看守ならまだしも、そこまでではないという、この中途半端さもダメだった。

他のレビューによると、この映画自体が、一種のメタ的なものだと解釈が成されているようだが、確かにその意図は意図は分からんでもないが、
じゃあそれが面白いのかというと、自分にはさしてそうは思えなかった。
その辺りのテーマ性の云々以前に、単純に、いち映画として作りが下手だと思った。

だいたいこのフォリアドゥ(二人狂い)という題名だと、
いかにもジョーカーとハーレイクインが、混沌を引き起こしていくような展開を予感させるが、ところが実際は…という、これも肩透かし。
寧ろつまらないマッチポンプ(一人芝居)に思えた。

トッド・フィリップス監督は、本作は「ミュージカルではない」とわざわざ否定しているが、しかし実際には、明らかにミュージカルという形式。
こんな中途半端な姿勢で始まっているのだから、そりゃあ出来も中途半端なのものになるのは無理はない。

あと…予告編の、とあるシーン、本編に無かったですよね…?

ガッキー
トミーさんのコメント
2024年10月16日

二人が蹴り上げるシーンでしょうか? ミュージカル映画、一度は撮りたいんでしょうねって感じですね。

トミー
サイモン64さんのコメント
2024年10月14日

はい、あのシーン無かったです。終盤の核となるべきシーンだったと思うので、何らかの事情でラストのストーリーも書き換えられたのではないかと思います。

サイモン64