劇場公開日 2024年10月11日

「前作と比較するとテーマがよく分からない」ジョーカー フォリ・ア・ドゥ 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5前作と比較するとテーマがよく分からない

2024年10月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 一作目は傑作だが、続編の出来が微妙な映画やドラマって多いが、今作もそういった映画だった。

 前作は社会的弱者が殺人を契機にダークサイドに堕ちていき、悪のカリスマへと変貌するテーマでよくまとまっていた。今作はというと、レディー・ガガ演じるリーとの出会いがストーリーの肝になるが、それを通じて何を描きたいのかよく分からなかった。監督としては、孤独な人生を送ってきたアーサーに対して真に理解を示し、寄り添ってくれたリーとの恋愛を通じて、初めて彼の中に芽生えた希望を描きたかったのかもしれない。しかし、サイコパス同士の歪んだ恋愛関係以上のものを感じず、そもそも彼女を出す必要があったのかさえ疑問に思ってしまった。途中でしばしば出てくるアーサーとリーのミュージカルも、それ単体で見れば魅力的なものの、必要性に関しては疑問だった。

 他にも気になる点があった。まず、アーサーがジョーカーのメイクをして出廷するところ。ジョーカーの姿が、失うものが無い人間たちのシンボルとなり、大勢の暴徒を生み出すことにつながっているのに、そのメイクでなぜ出廷を許されるのが疑問だった。しかも裁判というよりは、ただのジョーカーのパフォーマンスの場になっている。また、普通の裁判よりも多分警備が強化されているはずなのに、裁判所の爆破を成功させられる点も、リアリティを感じなかった。以上の点から、前作と比較して大きく劣る内容に感じられた。

 ただ、刑務所の退廃的な雰囲気や音楽など、演出面に関しては前作同様に良かったので☆+0.5。

根岸 圭一