「「外」から「内」へ。ジョーカーからアーサーへ。」ジョーカー フォリ・ア・ドゥ ねじまき鳥さんの映画レビュー(感想・評価)
「外」から「内」へ。ジョーカーからアーサーへ。
前作はジョーカーが外(社会)に向かって、今作はアーサーが内(自分の心)に向かっていると感じ、これは対として2作ペアで完結する物語だと思いました。
前作でヒーローに祭り上げられたジョーカー=アーサーが、今作ではジョーカ=アーサーではないただの孤独な男のリアルが描かれています。
この作品が上映された時に、映画と同様にジョーカーをカリスマ視するような現象が若者の間にあったとアメリカのニュースで見聞きしたことがありました。
これを受けたのかどうかわかりませんが、監督は大量殺人を犯した人への業といいますか、現実を描ききる必要性を感じたのではないでしょうか。ただそれを表現するには直接的ではなく、できるだけ観客に受け入れやすい形で届けたい。
それがミュージカルというフレーム、それを体現できるのはレディガガ演じるリーの存在が必要だった。もちろん、歌唱力という点においても。
賛否両論あるみたいですが、私はこの手法に好意的です。なぜならアーサーの孤独な独白が続けば、またカリスマ化されてしまう恐れがあるためです。彼のカリスマ性が歌で中和されてました。
印象に残ったシーン。
裁判所で証人を演じたゲイリーが「自分に唯一優しくしてくれたのはアーサーだけだった」と発言し、(恐らく妄想シーン)ジョーカーの鎧を被ったアーサーが表情を思わず崩す場面がありました。
彼が孤独じゃないことに気づいた瞬間でした。
時すでに遅し、ですが。
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