劇場公開日 2024年10月11日

「"ジョーカー"は いない、それがエンタテインメント」ジョーカー フォリ・ア・ドゥ とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0"ジョーカー"は いない、それがエンタテインメント

2024年10月12日
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鬱屈とした空気が流れ不満の溜まる世の中・時代にたまたま共鳴して、象徴シンボルとして祭り上げられただけで、別に誰でもよかった替えの効く存在。出自不明の得体のしれない『ダークナイト』でのジョーカーへのアプローチとは真逆・対極と言っていい描き方。"悪のカリスマ"にさせられた彼のベールをはがして内実に迫りメスを入れるような、前作を見て感化されていた観客も同罪。前作で夢に落ちて、本作で現実を突きつける…だからこその、このサブタイトル。
"本当の君(あなた)" --- 脱神話化・幻想を打ち砕くアーサーの物語を通して観客が真に語るべきことは何か?それはいかにショッキング・残酷で刺激的・熱狂的か、カッコいいとか、ハロウィンで仮想しようなどということでなく、虐待・ネグレクトやそれによる心の病などの人生を狂わせ壊す影響ではないか。憐れで惨めでひたすらに生い立ちが可哀想なうえに辛く苦しい日々を過ごしてき(そうするしかなかっ)た、ただの名もなき一人の青年がそこにいるだけ…。

刑務所モノ ✕ 法廷モノ ✕ "恋愛"(?)ミュージカル = ショータイムだ!ノックノック…誰?アーサー・フレック in Me & My Shadow("僕と僕の影")。相変わらず心配になるくらい痩せ細っているホアキン・フェニックスの名優カメレオンっぷりは健在だし、『アリースター誕生』『ハウス・オブ・グッチ』に続きガガ様は本作でも非常に存在感がある。ブレンダン・グリーソンは流石にハマり役すぎる?
作中中心を占める法廷シーンでは前作を見ているぼくらは知っている事実をわざわざ振り返っていくし、前作を見ていなかったらチンプンカンプンだし、色んな意味で観客を選ぶ敷居の高い作品だなとは思った。「"山"をつくる」-- 法廷モノといえば最後の山場(見せ場)はやっぱり最終弁論!本作でももちろんあって、ジョーカーがノリノリなショータイムを繰り広げるか、それとも…?作品終盤でアーサーに出くわして、彼を助けようとする狂信者が、メイクした感じのパッと見が"ジョーカー"時のアーサーにソックリ似ているのも"僕と僕の影"言わずもがな、そういうことだろう。前作と同じ構図で、自身の厄介な影ジョーカーから逃げるアーサーとは、作品をまたぐ差異を伴う反復イメージングシステムとして示唆的。
見る者を引き込む(求心)力のあった前作に比べると、どうしてもキャッチーさの無いまま上映時間・本編尺だけダラダラ散漫と伸びているようにも感じられてしまう。"したいことは分かるけど…"パターンか(ex.『マトリックス・レザレクションズ』)。本作で『ワン・フロム・ザ・ハート』のビジュアルを出典されているコッポラ御大が、"観客に媚びるのだけが映画がじゃない"と本作を支持するのも頷ける。大ヒットした前作からのこの続編へのアプローチは大胆というかチャレンジングではあるけど、個人的には鑑賞後に「うわ〜、食らった…」みたいなアッと言わされるような衝撃やモヤモヤも「どういうことだったの?」ってあれこれ考え続けてしまうような余韻もあまり無かった。
好き嫌いは置いておいて本作でキリはいから、3作目は要らないかな(もっと言えば2作目も別に高まっていなかったのだが)。彼女も奴(あんた)らも皆寄ってたかって勝手にガッカリしておけばいいさ!これが人生の幕引き?ショーは終わりだ。

"Is that real you?"
エンドロール名曲カバーも必聴!!
♪That's Life / レディ・ガガ
True Love Will Find You In The End / ホアキン・フェニックス

P.S. ジョーカー見ると彼っぽいジョーカームーブしたくなるよね(自分だけ?)。ある意味では、『ベター・コール・ソウル』なんかのオチ・落とし前の付け方も思い出した。あと、配給会社が宣伝文句などで開き直って武器みたいにやたらと煽ってくる"賛否両論"の文句は信じられないかも(今に始まったことじゃないが!)。

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とぽとぽ