「前作を補強しつつ作品単体としても紛れもなく傑作」マッドマックス フュリオサ ezioさんの映画レビュー(感想・評価)
前作を補強しつつ作品単体としても紛れもなく傑作
やはり」また観たくなる作品としての力強さ」それに尽きる。
前作は劇場で観ることは叶わず、次作を製作しているという情報を観てからずっと心待ちにしていた。勿論期待しながらまた期間が長ければ長いほど作品のクオリティと、監督へのリスペクト故の「あれを超えてくるのかも」という思考に囚われ上がりきったハードルに自分でも苦しみつつ遂に鑑賞した。
初っ端のタイトル、音楽から前作と一緒で鳥肌が立ち感動した。それでもうゴールなのかもしれないが、幼いフュリオサと母親のカッコ良さ、突き進むストーリーに息を呑みつつ、成長したフュリオサの鋭い眼光に痺れた。これがカッコいいんだまた!何がどうとかはもはや分からん。とにかくその復讐に燃え、同じ寡黙だが前作までのマックスとはまた違い、「怒り」に全てを注いでいるからこそ言葉すら削ぎ落としていることが分かる。
若かりし(と言ってもそこそこな青年期ではあるが)イモータン・ジョーのビジュアルにも興奮し、ディマンタスと相対するカットには美しさすら感じた。それぞれの正義、という荒廃した世界では当たり前の考え方を踏まえていたとしてもバカで、それでいて人間らしい悪であるディマンタスの振る舞いは腹が立ちつつもズッコケてしまうようなポカをし続けるあたり憎めない一面もあった。
そしてあの世界、というか前作の世界観には似つかわしくないともいえるフュリオサの相棒となるジャック。長いシーンでは無いが確かな絆に心震わされた。神話的、そして本シリーズが語られたものとするならばジャックは観測した人間がフュリオサの生き様を中心に語ることに囚われた故にそばにいた男を十分に語ることが間に合わず、伝わってこなかった。なので本作ではあくまで「ある伝承の一つを語る」というスタンスであるため語る余白を持たせたキャラクターとなっているのではないかという説を推したい。あの世界ではアクが弱い、だからこそまだまだ語るところがあるキャラクターだと思う。
あとは15分程度だがしっかりと入れてきたカーチェイス大混乱バトルシーンは白熱で、観る前の「前作での期待」を十分に満たしてくれるものだった。
あ!この場所!このキャラ!この俳優は!とさせてくれるのもシリーズとしてしっかり細かなところまであったので是非とも前作を観たから観るべきだ。そして本作見た後また前作みて、たまには1-3も観て、世界に浸り続けよう。