「恋愛映画としても弱いし、冒険活劇としても不甲斐なく、指輪物語の世界っぽくもない不思議な映画」ロード・オブ・ザ・リング ローハンの戦い Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
恋愛映画としても弱いし、冒険活劇としても不甲斐なく、指輪物語の世界っぽくもない不思議な映画
2025.1.3 字幕 MOVIX京都
2024年のアメリカのアニメーション映画(134分、G)
原作はJ・R・R・トールキンの『指輪物語』の補足に登場する「ヘルム王の娘の記述」を膨らませたもの
ローハン国にて、国の存亡を賭けて戦った王の娘を描いたファンタジーアクション映画
監督は神山健治
脚本はジェフリー・アディス&ウィル・マシューズ&フィービー・ギティンズ&アーティ・パパイョルイゥ
物語の舞台は、中つ国にあるローハン
ローハン国の第9代国王であるヘルム王(ブライアン・コックス)には、息子のハレス(ベンジャミン・ウィンライト)ハマ(ヤズダン・カフォーリ)がいて、娘ヘラ(ガイア・ワイズ)も授かっていた
3人の母はヘラの出産直後に亡くなっていて、以降は侍女たちが中心となって育ててきた
ハレスは前線で戦う兵士、ハマは音楽を嗜む文才家で、ヘラは自由奔放で活動的な女性だった
ある日のこと、ローハンの西境を治めるフレカ卿(ショーン・ドゥーリー)が息子ウルフ(ルーク・パスクァリーノ)を連れて訪れた
フレカは「ローハンを強くしたい」と言い、ウルフとヘラを結婚させてはどうかと進言する
だが、ヘルム王はフレカの目論見を一蹴し、ヘラも結婚の意思がないことを告げる
フレカは激昂し、ヘルム王との決闘をすることになった
老いぼれとバカにしていたものの、ヘルム王の一撃にフレカは命を落としてしまった
ヘルム王は王に背いたとしてウルフを追放し、大きな遺恨を残すことになったのである
映画は、実写三部作の200年前を舞台にしているものの、そうだと言われないとわからないくらいに世界観の繋がりを感じない
実写に出てくる数多くのファンタジックなものが一切登場せず、オークが登場するのも中盤以降で、魔法使いも登場するが魔法を披露することもない
そもそもがローハンという国の中のいざこざを描いているだけで、その主権争いも王の暴挙によって、辺境の民がブチ切れたという感じになっていた
幼馴染が戦うことになるのだが、幼少期の仲良かった頃の描写も一瞬で、青春期に入ってから恋愛感情が昂った様子も描かれない
フレカがヘルム王に信頼されていないことはわかるが、ウルフ自身の人間性には言及せず、俯瞰して見てると「情けない男だが、そこまで毛嫌いされるほどの人物」とも思えない
幼少期からの恋愛感情を拗らせて、あっさりとフラれて、さらに親まで殺されたという不遇を考えると、ちょっとかわいそすぎないかと思わないでもない
いずれにせよ、単なる中世を舞台にしたアクションアニメーションだとしたら普通の出来で、「ロード・オブ・ザ・リング」の正当な続編(前日譚)と謳うから無駄にハードルが上がっているようにも思えた
結ばれない運命の男女としても弱く、ヘラが結婚したがらない理由も出てこないし、キャラクターが成長するということもない
また、ヘルム王が指輪を外すシーンがはっきりと描写されるのだが、それによって「力が解放された」のか、「力が抑制された」のかもわからない
後半のオーク斬殺の所業を見ると、どこか人外っぽいところがあるのだが、だとしたら彼の血を引いている兄弟が弱すぎて話にならない
この辺りのファンタジックな物語としても設定が甘いので、何を見せられたのかよくわからない映画だったように思えた
ちなみに字幕版で観たが、この内容なら吹替版の方がしっくり来るような気もした
鑑賞していないので比較はできないが、ヨーロッパ風のビジュアルに日本語というのを見慣れてきた歴史があるので、逆に英語のアテレコの方が違和感があったように感じた
この辺りは個人的な感覚なので、好きな方を鑑賞したら良いのではないだろうか
ヘラ→ウルフの描写もないし、2人の関係が半端でした。
恋愛的な方面だと、どう考えてもウルフよりフレアラフの方が良い男ですし。
それなのに、最後にいいとこ持ってくだけなので勿体ない…