「青春映画にしてビルドゥングス•ロマン 幼い頃の出来事から大きなトラウマを抱えることになり、精神的にも未熟だったミッキー君が様々な出来事を通して花も実もある大人のミッキー•バーンズに成長してゆく物語」ミッキー17 Freddie3vさんの映画レビュー(感想・評価)
青春映画にしてビルドゥングス•ロマン 幼い頃の出来事から大きなトラウマを抱えることになり、精神的にも未熟だったミッキー君が様々な出来事を通して花も実もある大人のミッキー•バーンズに成長してゆく物語
ポン•ジュノ監督作品を見るのは『パラサイト 半地下の家族』に次いで2作目。私、実はこの『パラサイト−』が苦手でして、特に後半のたたみかけてくる感じが料理用の長い金属製の串に次から次へと肉をぶっ刺してくるような感じで、胸焼け、胃もたれ感を感じたものでした。ということで、敬いつつ遠ざけようと思っていた監督のひとりだったのですが、本作はSFみたいだし、いろいろと政治的、社会的な暗喩もありそうな感じだし、まあ見てもいいかなと映画館へ。
結果としては大正解でした。原作小説のタイトル”Mickey 7”が映画化にあたって”Mickey 17”と改変されています。さすがハリウッド、ご近所のLAドジャースのスーパースター大谷選手の背番号にちなんで17にしたの? とちらりと思いましたが、どうもそうじゃないみたいです。やはり、これは青春の香りがする17歳の17ではないかと。最後のタイトルの出し方にポン•ジュノ監督の思いが込められているようです。
この作品は、5歳のときの事故から大きなトラウマを抱えるようになり、やがて、エクスペンダブル(使い捨て)になって人間としての尊厳を失っていたミッキー君が仲間たちの助けを借りながら尊厳を取り戻し大人のミッキー•バーンズになる成長物語だと思います。仲間たち(“18”やナーシャ、カイ、ドロシーなど、ひょっとしたらあの「先住民」たちも)との交流を通して愛と友情を描く青春映画だとも思います。青春映画にしてビルドゥングス•ロマンーー私の割と好きなカテゴリーですので、17より少しドライな18が出てきたあたりから、まあ、そういうことなんだろうなとそちら寄りで見てたら、私、けっこう感動しまして、あのセレモニーのシーンでは不覚にも目が潤んでおりました。もし、SFのジャンル映画(にしてはカネかかり過ぎですが)として見ていたら、星はもっと少なかったかもしれません。
敬いつつ、遠ざけようと考えていたポン•ジュノ監督ですが、これからはもっと注目してゆこうかな。