「復讐劇にとどまらない面白さ」ミッキー17 kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
復讐劇にとどまらない面白さ
人間のクローンが作られる技術はいろんなSFで語られてきたから特段珍しい設定ではない。エクスペンダブル(使い捨て)として異星で働くミッキーを描いた本作。面白いと思ったのは、人間のコピーを作り出すマシーン。3Dプリントみたいに徐々に作り出されていく様は少し新鮮だった。しかも記憶についてもインストールできるという優れもの。
死んだと報告されたために次のコピーが作られていたという設定。自分同士で殺し合うというありがちな流れに行ききることなく、かといって単純な復讐劇になるわけでもなく、いろんな展開が待ち受けていて最後まで飽きることなく楽しむことができた。17と18で若干性格が変わっていたりお互いに影響を受けたりするところもよい。ロバート・パティンソンがきちんと17と18の演じ分けているのも地味にすごかった。
劣悪な労働環境で酷使されていたことに対する復讐というより(もちろんそんな側面もあるけど)、ナーシャとの愛だったり、原住生物との共生が重要なテーマに見えてくる。だからミッキーがヒーロー扱いされないのも納得だ。ナーシャが3人ですることを喜ぶところや、マーシャル夫妻の行動が異常なところ、そしてミッキーの扱われ方が雑で酷すぎるところなんかはちょっとブラックなのに笑えたりする。エンタメとして見せながら、ちょっと考えさせる。またもやポン・ジュノ監督のうまさを感じる映画だった。
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