「原罪」ミッキー17 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
原罪
んー、なんか含むものは沢山あるんだけれど、全部汲み取れるかと言われればそうでもない。
人間は愚かだって事は伝わる。
クローン技術が確立されて、文字通り人体実験が安易に行われる世界線。
人権なんてもんはなくて、契約によって破棄されてるような状況にも思える。とはいえ、現在の文明や食物とか薬とか、多大なる命の上に成り立っているのは事実であろう。
それらを一身に背負うミッキー。
人類の発展と開拓の為に何回も殺される。
…疑念に思う事が目白押しなのだ。
鬼畜の所業もルールに則っていたり合法であれば罪に問われる事はない。けれど、そのルールを作っているのは神ではなく人なのだ。
直接的ではないにしろ、殺人を奨励し許可している"法"が作られている。たぶん色んなベールに包まれてもいるが現代にもあるものだ。
17番は受け入れていて18番は憤っている。
考えりゃわかる事だ。
人が人を殺していい道理がない。
権力者が至極当然のように権力を行使する状況にも疑念を覚える。
こいつが偉そうに振る舞う根拠はなんだ?
何でコイツの命令に皆従うのだろう?
周囲が仕立て上げたのだろうと思う。秩序を維持する為のリーダーシップが特権階級へと変貌した成れの果てなんだと思う。日本の政治家共の大半はコイツと同類に見えて仕方がない。「先生」と擦り寄る輩によってコイツらは調子に乗るんだろうな。
妻の立ち居振舞いとか醜くてしょうがない。権力者である夫との関係性は彼女のが優位なんだろうが、それが外部にまで影響する構図とか、滑稽なんだけどそれに歯向かわない連中が大多数だから、正論を吐き出す弱き者は駆除されてもしまうのだろう。
最期は査問機関のようなものに弾劾され、民主主義の勝利みたいな事にはなってた。
金の拘束力とかもエゲツない描かれ方だ。
貸した側に生殺与奪の権利が与えられる。地の果てどころか宇宙の果てまで追ってくる。取立てにくる奴もくる奴で…無視すりゃいいじゃねえかと思う。宇宙船に乗れたんだったら、運良く組織の影響下から抜け出たようなもんなんじゃなかろうか?
と、そんな冷静な判断力も金は鈍らせるんだろう。
先住民である"虫"との諍いとかさ…。
見た目による差別意識と疑心暗鬼かなぁ。共生も平和も二の次だよ。マーク・ラファロは素晴らしかったよ。権力に溺れた愚者を熱演してた。
対話による平和よりも、戦争による勝利を迷う事なく選択したキ◯ガイを。
ナターシャを通して描かれる愛の二面性とか。
慈愛と共に執着とか独占とか依存とか過度に発揮される異常性とかさ。
SEXの役割とかにも触れてたかなぁ。
子孫を残す機能が女性にだけある事とか。
他にもたぶん色々あるんだけど、歪んだ精神論というか精神構造とか、普段生きてる上で麻痺してたり盲従してたりする疑念を詰め込んだような作品だった。
「原罪」ってタイトルはちと的外れなような気もするんだけど、人であるが故に、人が人と関わるが故に、必ず犯してしまうような愚行にも見えてそうしたかなぁ。
ラストはクローン製造機を爆破して終わる。
ホント馬鹿だなぁと思う。
使い方さえ間違えなければ画期的な技術だ。医療的には大革命だよ。でも、科学は常に悪用され殺戮をも産む。…人である業から世界は抜け出せないのだなぁと思う。
善良なる人を惑わすのは、権力であり金であり、科学であり愛であり…つまりは、自業自得の全体責任を生きてる限りは背負い続けなければいけないって事だ。
新しい惑星が舞台になったのは既存の社会はもう変えられないって事なのかもしれないなぁ。
人道的な思考なんて唾棄される社会なんだろう。局地的にホスピタリティは発揮できても大元が変わらないなら変わりようがないのが現実なんだな。
小難しい話に埋め尽くされた本作なれど、さすがはポン・ジュノってとこなんだろな。SFって切り口が斬新だなぁとは思ったけれど、監督がもつテーマは変わらなかったと思われる。
幕引きはナンバリングから名前に変わる。
そりゃそうだ。
誰にだって名前はあって、名前こそがその人が唯一無二の存在って証でもあるんだから。
3Dプリンターは破壊しましたが、悪の複製のイメージ?また誰かが復活させるに違いない・・予感の様に感じられました。
腰ぎんちゃくのハゲメガネは本国のスパイだとばかり思ってたんですが。