劇場公開日 2025年3月28日

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「唯一無二」ミッキー17 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5唯一無二

2025年3月30日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

怖い

単純

SF作品は大好きなので、予告から期待していた本作。公開2日目に鑑賞してきました。予想とはちょっと異なるテイストでしたが、なかなかおもしろかったです。

ストーリーは、借金で首が回らなくなった男ミッキーが、高額報酬めあてに内容もよく読まずに契約してしまった仕事により、自身の体の精密スキャンと記憶のバックアップによる複製体の生成を前提とした、危険な任務や過酷な実験に身を投じることになり、ひたすら死んでは生き返る悪夢のような日々が始まるが、ある日、死ぬ前にもう一人のミッキーが生成されてしまったことで、彼の使い捨てワーカーとしての生活に変化が訪れるというもの。

思った以上にブラックユーモアたっぷりの展開で、おもしろくはあるのですが、ちょっとキツすぎて笑えません。命のリサイクルと言えば聞こえはいいですが、何度も複製されるミッキーの存在は、使い捨ての実験体そのものです。何度壊しても怒られないオモチャを与えられた子どものように、ミッキーの体を弄ぶ研究班の所業が悍ましいです。

”コピー人間”や”死に戻り”は既視感のある設定ではありますが、やはり何度見ても気持ちのいいものではないです。人類の進化や技術の革新のためなどと表向きは耳障りのよい言葉を並べることが多いですが、最終的には人間の醜い裏の顔を見せられることが多く、本作は序盤からそんな感じです。

そして、ここに新たなミッキーが生成され、ミッキーが同時に二人存在する状況となり、物語は大きく動き出します。作中では、二人が同時に存在することは”マルティプル”という違反行為とされ、両者の体も記憶も全て処分され、存在が抹消されるという厳しい罰則があります。しかし、目の前に健康に生存している人間の命を軽々しく奪うのはためらわれ、命をめぐってさまざまな視点が提示されます。ある者は2人とも自分のものだといい、ある者は1人を分けてほしいといい、ある者は神への冒涜として2人とも抹消すべきと考えます。

果たして命とはなんなのでしょうか。物のように取り扱っていいものでしょうか。植民星の先住生物・クリーパーたちのほうが、よほど命を大切にしているように思えます。命は複製されるべきものではなく、仮に複製できたとしても、それはオリジナルではありません。やはり命は唯一無二のものであり、だからこそ尊厳があるのだと思います。ブラックユーモアにあふれた作品ですが、命について真剣に考える機会を与えてくれているように思います。

主演はロバート・パティンソンで、悲哀たっぷりのミッキー17と異なる個性のミッキー18をうまく演じ分けています。脇を固めるのは、ナオミ・アッキー、スティーブン・ユァン、トニ・コレット、マーク・ラファロら。

おじゃる
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