「清教徒たちが新大陸を求める話」ミッキー17 じきょうさんの映画レビュー(感想・評価)
清教徒たちが新大陸を求める話
下敷きになっているのは、アメリカ建国の話かな。
船でやってきたクソ白人共が平和に暮らしていた先住民を「虫ケラ」「悪」と決めつけ、迫害する。
巨大なゾウムシかフナムシのような生物は、知的で感能力を持っている。
まあ、人間基準からは「キモイ」よね。
だからソースの材料にしちゃおうという傲慢さや知的レベルの低さ。司令官夫妻や取り巻きは絵に書いたような能天気キャラと太鼓持ち。こりゃあかん
石の中にいた幼虫が位置的に顔の付近に来ただけで惨たらしく殺してしまう。もう1匹はフックで刺して溶鉱炉に投げ込もうとする低俗さ。
画して虫たちは怒り、移住船のまわりをインディアンよろしく取り巻きぐるぐる回る。
しかし、それ以上のことはしない。非常に抑制的だ。
ミッキー17が翻訳機で話しかけると「1人殺せば、1人の命で贖え」と言う。この辺も知的な上に合理的だ。
不合理なのは人間であることは明らかだ。
と、ここまで肝心のミッキーについて触れずにきた。
肉体的には死んでも、3Dブリンタのよろしく、生体のプリンタに記憶を入れることで何度でも生き返るというアイディアは古典的と言える。だから「死ぬってどんな感じ」という下世話なギャグで、メッセージ性をあえて避けている。また、コピー同士が出会うことで起きるスラップスティック的なドタバタはお決まりとも言える。
つまり、ミッキーのコピーの話は、ただの乾いた設定でしかないという事。
SFを知っている人には、SST張りのドライさを喜び、
知らない人には……多分刺さらない。
知的な暗喩に満ちたコメディと言えよう。