「Deuce」チャレンジャーズ ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
Deuce
今作を観終わった、というか観ている途中に出てきた感想がジャンプやマガジンで稀に出てくるこのエピソード限り、続きは一つも予想できない、というか作者が書くつもりのない闘魂注入鞭が飛ぶ、そんな読み切りを読んでいるみたいだなと思いました。
現在進行形で試合の様子を送りつつも、タシとアートとパトリックとの出会いを描いたり、恋に落ちる様子、身体を交わす様子、複雑な関係性、選手とコーチ、選手と選手、コーチと敵というシンプルながらも奥が深い絡みが見応え抜群で、スクリーンに釘付けになりっぱなしでした。
学生時代に出会った3人それぞれが恋に落ちる、というかアートとパトリックがタシにめっちゃ惹かれて、ホテルなんかに誘っちゃったりと年頃の男の子っぷりを見せつけてきます。
そしたらタシがまぁ上手いこと誘惑してくるもんですから、アートとパトリックがタシの横に陣取って、濃厚なキスをして体もサワサワしちゃって、でもタシの宥め方が抜群に上手いのもあって、本番手前で終わって焦らす、しかもこれを10年単位でやってのける物語自体のスタートラインだった構造に物語が進んでいくごとに震わされました。
日常描写ではタシに上手いことやられているアートの姿が印象的で、決して尻に敷かれているわけでもないのに、頭の上がらない感じはコーチと選手との関係性からなのか、この人に逆らったらアカンという本能からなのか、どっちとも取れるし、それ以外の何かかもしれない感じが好みでした。
主観視点、ボール視点、頭上からのショットでお送りするテニスの試合は見応え抜群で、ぐわんぐわん動き回るカメラワークにこれでもかってくらい興奮しましたし、どうやって撮ったのかという裏側も気になりました。
ラストシーンが素晴らしい作品が最近多いんですが、今作も例外に漏れず素晴らしく、止まらぬラリー、流れる汗、油断なんかしたら一瞬で負けが決まってしまう極限状態から繰り広げられるコート全面を使った白熱の試合風景、試合シーン自体特別多いわけでは無いのに、このラストだけでもスポ根ものをたっぷり味わったような感覚に陥りました。
最後のウイニングショットで2人が抱き合い、観客が湧き、タシが叫んだ勢いのまま終わる、思わず映画の中の観客と一緒に立ち上がりたくなるくらいワクワクドキドキさせてもらいました。
テニスのルールはざっくりとしか知らないので、ちょくちょくそのサーブは試しで打っていいやつなんだとか思ったり、あと現実でもちょくちょく見るんですが、なんでテニス選手はいの一番にラケットぶっ壊すんだろうなぁとモヤっとはしましたが、映画全体を通して見ると些細なもんだなと思いました。
ここから一気にギアが入りますよと言わんばかりに音楽でテンションを上げてくれるのも最高で、気持ちを入れたい時に今作の音楽を聴いたらエンジンかかりまくるだろうなと思いました。
メイン3人の演技がそれはそれは素晴らしく、特にゼンデイヤはスパイダーマンのMJでのイメージのまま止まっていたので(DUNEはありつつも)、ここまで欲の強い女性を演じれるのかという点に驚かされました。
ジョシュ・オコナーのやさぐれた感じも、マイク・ファイストの頼りなさげな感じも、試合シーンや日常シーンにうまく繋がっていくもんですから下を巻きっぱなしでした。
テニスを通しての関係性やコミュニケーションをここまで映画として成り立たせる手腕にあっぱれですし、良い意味で思っていたものとは違うものを観れた感動がそこにありました。
映画館で観れて良かったな〜と改めて思いました。もっと上映館増えてけろ〜。
鑑賞日 6/17
鑑賞時間 15:20〜17:45
座席 I-7