「アトラクションとしては良いのでは」死霊館のシスター 呪いの秘密 SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
アトラクションとしては良いのでは
なんかシリーズの九作目(?)らしい。むこうの貞子的なやつなんかな…。
全く前作まで観てなかったのだが、予告編が面白そうだったので観てみた。あまり期待せず観たつもりなんだが、それでもやや物足りなさはあった。予告編の「面白そう!」を超える本編ってなかなかないものだな…。
こういうホラーものはそもそも定型的になりやすいものだと思うけど、この作品もお手本みたいにセオリーどおりに作ってます、って感じ。わかりやすくて安心感があるけど意外性がなくて薄味。
ホラー演出はまあまあ良かったと思う。幽霊の正体見たり枯れ尾花…、怖い怖いと思ってるとなんでも怖く見える、という生理的現象を逆手にとり、錯覚の怖いものが本物になってしまう、という面白さがある。
こういうマイルドなホラー演出はがテンポ良く出てくるので、お化け屋敷的というか、アトラクション的作品としてよくできてると思う。友達どうしとかカップルで観るのに良いのではないか。
雰囲気も良かった。古い寂れた教会とか、陰湿ないじめとか差別がある学校とか、ホラーの舞台としてぴったり。
ここが弱かったな、と思うのは、謎解き。最後に主人公が絶体絶命になり、どんでん返しでボスを倒す、というのがパターンだけど、どんでん返しと謎解きはセットになっている。
この作品では、ワインも信仰によって聖遺物であるキリストの血になる、ということと、主人公が聖人の子孫だった、というのがどんでん返しの仕掛けだった。
でも、ふーん、って感じで、なるほどそうきたかー、って感じにはならなかった。全体的にご都合主義で、はでに攻撃されたりするけどあまりダメージがなかったり(主人公サイド誰も死なないし)して、はらはら感がなかった。もう少し敵を倒す条件を厳密に限定した方が恐怖や絶望が増したし、どんでん返しのエッジも効くと思う。
なぜ敵の悪魔がシスターの姿なのか、教会は悪魔が嫌うはずなのになぜ教会に悪魔が出るのか、というのをぼんやり考えながら観ていた。
「信仰」って、日々の救いになるものだとは思うけど、絶対的な救い主である神を信じることと、自分が罪深い存在であることを自覚することは、表裏一体の関係で、切り離せないのではないか。
そして、神を疑う、信仰を否定する、という最大の(死ぬよりも怖い)罪を自分が犯してしまうのではないか、という恐怖を心の底に植え付けることになる。
悪魔とは、自分自身が神の冒涜者になってしまうかもしれない、という恐怖の象徴ではないか。だから、実は悪魔というのは信仰者にのみ存在するもので、だから教会に悪魔が出現するのではないか。
倒すべき悪魔もシスターで、自分自身もシスターである、というのは面白い。この物語はある意味で自分自身との戦いともいえる。僕がこのシリーズの物語の最後を描くとしたら、シスターヴァラクと主人公の和解をテーマにすると思う。
あともう一つこの映画のユニークなところは、男性のキャラがほとんど登場しないことだ。主要キャラがほとんど女性で、男性はそれこそひと昔前のヒーローものの、助けられるためだけに登場するヒロインみたいな役どころでしか登場しない。
アナ雪が大ヒットしたぐらいの頃から潮目が変わってきた気がする。