「モヤモヤが残る作品だった」バービー JYARIさんの映画レビュー(感想・評価)
モヤモヤが残る作品だった
これ、バービーでフェミニズムというテーマ扱うって
なかなか難しい事だったと思う。
バービーランドでは女性が主権を握っているけど
リアルワールド行くと逆で……って
物凄い恐ろしい事実を突きつけられた感があって、
そしてそれをバービーが掘り下げて終結させるんだけど、
バービーランドは元の様に女性に主権が移ったにも関わらず、バービーは人間になりたい!ってよく分からない。
バービーがリアルワールドに行って受ける視線とか
不安感、羞恥心はかなり生々しくて、
あれ誇張も肥大化もしてないからね!?とは声を出して言いたい…。
バービーランドは、殆どバービーとケンで出来ているので、どうしてもこのテーマをやろうとすると、バービー&ケンの構図になり、男女二元論という構造の元でしか話が進んでいかない。ケン(男)が上だ、バービー(女)が上だって話。アランの活躍も半端な感じで中々モヤっとした。
"フェミニズムの波に打ちひしがれている男を慰める映画"に見えてしまう面があったのよな…。
ルッキズム的な部分をもっと突っ込んでも良かったのでは?と思う。(実際いま市場にどんなバービーが出回っているのかは知らんが…)
後半のケンダムシーンはマジで執拗に感じたし、
何だったのあれほんと……。
なんかケンチームの印象ばっかり残ってて、
バービーチームってあんまり掘り下げられてない印象。
職業や受賞歴ばかりが取り上げられて、
内側の個性が伝わってこなかったよ……。
そもそもバービーに内面は無いって話かもだけど
ケン側って意外とそういう部分が見えたりしたんだよな。
というか、色んな個性溢れるバービー見るために
「バービー」観に来たんたよ!って感じ。もっと見せて。
でも現実社会では、バービーが美しいと褒めあったり、
多様性のある各々の魅力を認め合ったりする余裕すらなくて、
バックラッシュの波が来ているんだから有害な男性性を
どうにかしないと!ってことなんですかね。
個人の魅力に目を向けてる場合ではない、
脅威はもうすぐそこまで来ているってことなのか。
やっぱり、人間社会の構図が変わっていないから
いくらバービーランドで覆しても……ってなってしまう。
ケイト・マッキンノンも、外れものだけど許してやるか、みたいな感じでランドに加わってたのも何だかな、だったし。頑張ろう人間ってことか。
あの母娘の存在は素晴らしかったのだけど、
結局すべてが説明的で、お勉強会みたいになってしまっていて辛かった…。もう少しストーリーに絡めて見せることも出来たんじゃ無いだろうか…。
とはいえ、現代社会で生きる女性を取り巻く複雑な障壁を
多角的に描いていて、様々な角度から議論できそう。
それでも、アメリカ・フェレーラ起用してるのとか
「アグリーベティ」観てた人々にはぶっ刺さるだろうし、
「セックスエデュケーション」や「フリーバッグ」のキャスト、エメラルド・フェネルやらとか出てきた辺りは良かった。
鑑賞前までは2020年代の「オズの魔法使」になるかもしれない!と意気込んでたんだけど、そうはならなかったですな……。
グレタ・ガーヴィグって映画すきなんだろうか、と
ふと疑問に思ったりもしてしまった。
これまでの3作品含め、肌に合わない感じがしている。
『ウーマン・トーキング』を引き合いに出さずにいられないのだけど、やっぱりあの映画ってだいぶ先を行ってたっていう扱いになってしまうのかな。アケルマンの様に、何十年後に掘り返されて、進んでる映画だったなんて言われてしまうのだろうか…。