劇場公開日 2023年8月11日

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「脱構築バービー」バービー ぶたぶたさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0脱構築バービー

2023年8月13日
PCから投稿

楽しい

企業商品の映画では普通ありえない監督・脚本コンビ、また予告から伝わる悪意に満ちた映像を見て結構楽しみにしていました。

果たして内容は期待通りというか予想通りといいますか、おそらく良くも悪くも中途半端にフェミニズムに関心のある人や件のミーム画像に激怒する人にほど伝わりづらい、『チーム★アメリカ』的な両サイドに喧嘩を売るブラックコメディになってます。
※社会運動に一家言あるヘレン・ミレンをナレーションに据えるのもいちいち意地が悪い!

冒頭からベタベタなキューブリックパロディで始まり、これ大丈夫か? 純粋なバービーファンに伝わるのか? と何故か分からないけれど周囲を気遣うことになりますが、面白いパロディは元ネタを知らなくても面白いということで、女児の形相と破壊で笑いも起きていて一安心。
やりすぎでは? ここは攻めないのか? モンティパイソンはさすがに無理では?
このようなスレスレのボーダーを行き来する展開は楽しめました。

通常分かりやすく脱構築するのならば、空想世界と現実世界のギャップを強調すればするほど良く、例えば現実世界で適応できなかったバービーが売春婦まで身をやつし、トラヴィス化した怒りのケンがポン引きを皆殺しにする……みたいな極端な方向に舵を切った方が話は作りやすいです。
しかし本作はお決まりのカルチャーギャップコメディ要素が有るには有りますが中盤で早々に切り上げ、空想世界に現実世界の価値観を持ち込む『カラー・オブ・ハート』展開へとツイストしており、これには制作者たちの矜持を感じました。
また、大企業の首脳陣や資本家たちを馬鹿にしまくる展開を許可したマテル社の懐もすごい。さすが冗談の通じる成熟した大人な企業であることが分かります。

バービー人形制作そもそもの発想が、大人の女性への憧れをシミュレートする玩具ということらしく、この映画もすべからく少女は大人に成長する、という非常にシンプルなストーリーが核となっています。
そういった普遍性が種々雑多な声を押しのけてヒットする要因になったのだと思います。

ぶたぶた