「ノリは軽いが、メッセージは重め」バービー おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
ノリは軽いが、メッセージは重め
楽しそうな予告と主演のマーゴット・ロビーに惹かれて、公開2日目に鑑賞してきました。お盆を迎える週末のわりには客入りはイマイチでしたが、内容は悪くなかったです。
ストーリーは、世界中で愛される人形・バービーたちが暮らす国・バービーランドで、幸せな日々を過ごしていた“定番バービー”が、心や体に起きた異変に気づき、その原因を求めてボーイフレンドのケンとともに訪れた現実の人間世界で大きな衝撃を受け、自身を見つめ直し変容していく姿を描くというもの。
バービー人形に詳しくないのですが、ネットの情報によれば60年以上の歴史があり、かなり多くのバリエーションが存在しているようです。そして、その世界観を広げる存在としてケンを始めとする他のキャラクターも生み出されてきたのでしょう。言い換えれば、多くの夢や希望を与える存在として親しまれてきたバービーの容姿や職業は、女の子の憧れの象徴であったのかもしれません。しかし、発売時とは社会も大きく変わりました。かつての憧れの象徴は、現代では価値観や理想の押しつけ、型へのはめ込みと捉えられかねません。
変化のないバービーランドでハッピーな日々を過ごしたバービーは、初めての人間世界で、その社会変化に大きな衝撃を受けたことでしょう。そんなバービーの悩みや葛藤を通して、誰かの敷いたレールを走ったり、誰かに期待された自分を演じたりすることなく、自分で考え、感じて、限りない可能性に目を向けようというメッセージを本作から受け取った気がします。
一方で、バービーのおまけとして存在していたケンが、自身のアイデンティティに悩む姿や、「ケンはケンであればいい」という言葉で自分を取り戻す様子もなかなかよかったです。人間社会の男女を逆転させたアンチテーゼのようなケンの存在が、作品に深みを与えていたように思います。
終盤で描かれる、バービーの生みの親ルース・ハンドラーとの対話のシーンもじんわりと沁みました。彼女の「自分の道を選ぶのに親の許可は要らない」「親は、子どもが振り返った時にその道のりを確認できるように出発点にいる」という言葉にジーンときました。ラストで、シックな装いに身を包み、ヒールのない履物でしっかりとかかとをつけて立つバービーの姿が描かれます。まさに地に足がついた瞬間です。彼女が名乗る名前からも、力強く新たな一歩を踏み出したことが伝わってきます。序盤との対比による見事な締めくくりです。
そんなメッセージ性のある作品なのですが、表面的には軽いノリで展開していきます。ギャグやジョークと思われるシーンも多いのですが、ほぼ意味不明で笑えませんでした。が、隣席の外国人3人組は何度も笑っていたので、英語圏の人には楽しめたのでしょう。あと、ケンが周囲を洗脳し、それをバービーたちが解いて世界を取り戻すくだりもよくわかりませんでしたが、バカバカしい展開なのでどうでもよく感じました。でも、バービーランドの世界観そのものは、かなりおもしろかったです。
主演はマーゴット・ロビーで、キュートな魅力はまさにリアルバービー。感情表現も豊かで、バービーの心情の変化がよく伝わってきます。共演のライアン・ゴズリングは、イメージとはちょっと異なりますが、コミカルにケンを演じています。脇を固めるのは、アメリカ・フェレーラ、ケイト・マッキノン、シム・リウらで、他にもバービーとケンがうじゃうじゃ登場します。
この物語の深みはよく脚本が練られているということでしょうね‼️マリオとかもそうでしょうけど、世界的に有名なカルチャーを映画化する際に一番大事な事ですね