「滑稽な男(ケン)達、だが救いはある」バービー ハッカ飴1/2さんの映画レビュー(感想・評価)
滑稽な男(ケン)達、だが救いはある
「バービー」と「ケン」でゲシュタルト崩壊を起こしそうになり、制作により世界中でピンクの塗料が不足しているというニュースにも納得の今作品。しかしテーマもノリも対照的なクリストファー・ノーランの最新作「オッペンハイマー」と同時公開となってしまったことで詳細は今更語らないがケチがついてしまった印象である。筆者個人としては爆発を前にオッペンハイマーがバービーを抱える画像は正直男女バディ物のアクション映画みたいで好きであり、ビデオスルーでもいいから観たいところである。
閑話休題。今作のグレタ・ガーウィグ監督はフェミニズムに傾倒した監督という印象があり、男性目線としてはどうしても「ケン」=男性の側に感情移入してしまう。特にケン(ライアン)が人間界から「男社会」の概念をバービーランドへ持ち帰ってバービー(マーゴット)の家を占拠した際の「(爪弾きにされるのは)面白くないだろ?」と言うシーンは象徴的だ。でも「そんなの関係ない、男社会は害悪だからブッ壊す!」となると思えば(壊されはしたものの)そんなことはなく、最後にはキチンとケン達も救われる(まあ最高裁判事にさせないのはどうかと思うが)。そしてケン達と同じく人間界の男性、特にマテル社の首脳達もひたすら幼稚で滑稽に描かれる。男性がどちらかというと蔑ろにされる映画ではあるが悪意を感じなかったりフォローがあるのは評価できるところではある。また、本作の英語版wikiで見かけたバービーの生みの親ルース・ハンドラー(バービーという名前は彼女の娘バーバラの愛称)が既に鬼籍にあるのでどう絡むのかと思ったらとてもいい使い方であり、単にバービーという人形の映画ではなく母親から独り立ちする娘の物語とも取れた(ルースの口から出た「脱税」という言葉が非常に気になるし、マテル社は秘密組織か何か?)。
ただ冒頭の「2001年宇宙の旅」のパロディシーンで赤ちゃんを模した人形(本邦でいうポポちゃんやメルちゃんか)を壊すのは絵面がよくないし、最後に人間界に移住してバーバラ・ハンドラーを名乗ったバービーが婦人科を受診するシーンがよくわからなかったので減点。廃盤になった妊婦(お腹に赤ちゃんの人形が入っているのが生々しすぎる)人形のミッジ、人気が出なかったのか商品展開がされなかった人形アラン、持ち主にあるあると頷いてしまうほど荒い遊び方をされた変てこバービー、他にもイロモノ路線のバービーなど知らない部分も知れて楽しめました。