夜明けのすべてのレビュー・感想・評価
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心の闇
2024年の作品
この作品は物語というジャンルだが、非常に象徴的に「人の心の揺らぎ」を紡ぎだしている。
そのために物語という構図が当てはめられたのだろう。
この心の揺らぎの振れ幅が一定の範囲を超えると、身体に現れてしまう。
それに病名がつけられることになる。
PMSとパニック障害
そしてこの物語のテーマは「失ったと、思っていた」ことなのかもしれない。
この「青い鳥」にも似た型は、人間が考える不条理や理不尽などを通して、人々が求めている「それ」を見つけ出しに歩かせるきっかけを作り出しているのだろうか。
藤沢が失ったのは職場
高校時代に顕著になってきたPMS
自分自身を消去法で探しても答えは見つからないままで、1か月に数日間起きるPMSの所為で苦しんでいる。
しかし、その苦しみは連鎖したのだろう。
母がなぜリハビリ施設に通わなければならないようになったのか?
「語られない」それは、娘の心配が招いた原因不明の体調不良だろうか。
藤沢の転職先となった栗田科学
ここで出会った山添
彼から感じる閉鎖感
まずその異質な感覚に感化されたのが藤沢だった。
また始まってしまったPMS 同僚から心配されてしまう。
そして、
突然始まった山添のパニック障害 自分と同じ薬
「自分と同じ」 これはひとつの糸口になるのだろう。
それでも山添の閉鎖感は、藤沢を寄せ付けない。
藤沢に起きた気づきと、それを受け入れない山添
「髪を切ったこと」
変になってしまったことが、山添の笑いを思い出させた。
おそらく彼は、2年間笑うことを忘れていた。
大きな会社はパニック障害で退社したが、また復帰したいと思っていた。
しかし調整は難航していた。
寄り添ってくれている彼女
しかしキャリアアップと「それ」とを天秤にかけたのだろう。
山添のアパートで話さず、「外」に連れ出したのは、彼がパニックを起こさない場所ではなく、パニックになっても「外」で自分のキャリアアップの話をすることにしたからだろう。
2年という歳月は、簡単に男女の仲を破壊する。
面白いことに、山添は藤沢に対し「男女の友情」のありか、なしかについて語り始める。
その対照は間違いなく藤沢だったはずだ。
元カノと比較してキャリアもなければチビ でも、次第に回復し始めている体調の原因こそ、あの笑いにあったことに気づいている。
そして山添は言う。「藤沢のPMSを、起きる前に止めてみる」
「誰かのため」 または「何かのため」
味覚を忘れ、感覚を失い、他人と自分を完全に分けていたころとの違い。
自分の周りから消えてしまったもの 失ってしまったと、思っていたもの
これらを取り戻すように思い出し始めたこと。
アノニマス会で栗田社長が言った言葉 「弟が、突然いなくなった」
この言葉には、直接的なことを覆い、彼自身の心から何かが消えてしまったことを意味しているように聞こえた。
やがて発見された弟の声
プラネタリウムに込めた想い 大航海時代や星座の意味
弟が思いを寄せた大宇宙
そして、夜があるからこそこの世界の咲にある世界を知り得たという事実。
「夜についてのメモ」
この移動式プラネタリウムの解説を手掛けながら、山添はやりがいを掴んだ。
藤沢は、同じくこの解説に関わりながら、自分を支え続けていてくれた母のことを考え始めたのだろう。
語られない母のリハビリの理由
「自分の所為」
藤沢は、母に寄り添う人生を選んだ。
それが彼女にとっての答えだった。
2024年現代 単純に藤沢の選択を指示する人は少ないだろう。
でもそれこそ、いま彼女が出した答え。
赤い手袋に込められていた母の愛
それは今始まったことではなかったはずだ。
絶えず隣には母が見守っていてくれていた。
そして、その時間は少しずつ消えていく。
そう思った時、藤沢は母に寄り添って生きることに「意味」を見出したのだろう。
その選択に誰も何も言ってはならない。
山添と同じように、ただ見送るだけだ。
辞表を持って朝一出勤してきた藤沢に、栗田はただ辞表を受取ったが、その目に浮かぶ涙
それを見て藤沢の眼にも涙が浮かぶ。
何気ない日常で、変わってしまう瞬間
寂しさ
それでも毎日の日常は変わらないようだ。
失ったと思っていたものは、そこにあった。
それに気づいた時、人は成長するのだろう。
「夜についてのメモ」は、この世界に何故昼と夜があるのかを伝えていた。
PMS パニック障害という「夜」があったからこそ、二人はそれぞれ自分自身を再発見した。
そして、
夜になればまた朝が来るように、その間際の夜明けの直前に、気づきという「奇跡」がやってくるのだろう。
これは、物語というよりも純文学に近い。
このジャンルを使って「心の闇」から朝になる瞬間を捉えている。
なかなか知的な作品だった。
私もPMSで、同じようにイライラして態度に出してしまいます。人が変...
静かで優しく居心地の良いところ
見た目ではわからない障がい
情緒不安定の人
夜と朝と人の暖かさ
三宅監督が撮る光の中で
三宅監督前作「ケイコ 目を澄ませて」同様、画面に陽が差し込むとこちらまで日光の暖かさを感じるような柔らかな空気感を映した本作。
そこに描かれるのは決してドラマチックではない、市井の人がただ"居た"という記録です。
登場人物に自分を重ねるわけでもなく、派手なドラマに心を動かされるわけでもなく、ただ彼らが出会い変わってゆく様をじっと見つめる。
私はこの映画が大好きです。
エンドロールの動線の美しさ
松村北斗くんは正直今まであまり気にしていなかった。それが、1sr kissでの彼の演技を観て良いなと思い、レビュー評価が高い夜明けのすべてを観ておけば良かったな、と思っていたところ、フォローしている方から再上映の情報をいただき、先日鑑賞しました(有難うございました!)。その後、かなり忙しくやっとレビューを投稿できる時間が取れました。
主人公達はそれぞれに病気を抱え、辛い時間を過ごしているはずなのに、見た目のストーリーは淡々と流れていく。自分の世界が狭くなってしまう苦しみ。もっと色々な選択肢があったはずなのに。もっと色々な事ができたはずなのに。それでも生きていかなければいけない。2人はそれぞれに自分の道を見出して、それぞれの道を歩いていく。
上白石萌音は徐々に仕事の選択肢が狭まっていく過程を。松村北斗はバックキャスティングで、今の状態になった過程や彼の病気の状態を映し出している。2人へのアプローチの違いが良いコントラストをもたらして、そのままだとテアトル新宿系になりそうな雰囲気や淡々と流れていくストーリーに明るさや変化を与えて飽きさせない。
ハッとしたのは、松村くんの、「自分の病気はどうにもならないかも知れないけれど、藤沢さんの事は助けられることもある」と言う言葉。自分が健常でなくてもできる事があり、その対象が他者だという事。辛さや苦しみを知っているから、気付く事ができる。優しくできる。それも人間の本質の一つだと思う。
人間関係も流れていく。だけれど、その時大切だった人を思い返して、良い出会いだった、と振り返る事ができるのは幸せだ。通り過ぎていく人と人。その中で交わるその点が、立体になり、また次に進んでいく。そのようなオブジェクトをしっかりと幾つか持つ事ができたなら、人生は充分だったと言えるのではないだろうか。
エンドロールのお昼休みの風景は良かった。何気ない日常の風景だが、これまでの過程を観てきたから感じるその大切さと愛おしさ。皆が流れていく動線がきれいだった。
あ、散髪のシーンは思わず吹き出して笑ってしまいました。笑
良い作品でした。
ネトフリで観たのですが、映画館の大画面で観たいとずっと思っていたと...
ネトフリで観たのですが、映画館の大画面で観たいとずっと思っていたところ再上映があり念願叶って鑑賞。
映画館で観るのはやはりいいですね。
淡々とした内容の映画なのですが、主演の二人の演技力もあり、辛さの表現とか心情の変化とかがとても良い。
観た後にスッと優しい光が差すような映画。
観ているだけで優しい気持ちになる
朝ドラで夫婦役を務めた二人が主演していることでも話題になった本作。
それが顕在化しているか、ぱっと見では分からないかは別として、学校や職場ではほとんどすべての人が多かれ少なかれ何らかの問題や悩みを抱えており、それらの人々とどう向き合い対応していくのかは、現代を生きているあらゆる人にとっての課題であろう。
職場でも毎年のように研修を受けることが義務付けられているし、知識としてはそれなりに持っているとも言えるが、自分が常に正しい言動を行えるかといえば、そこまでの自信はない。
でも、特に大きなイベントがある訳でもない、ほんわかとした日常を描いた本作を観ているうちに、あれこれ難しいことなど考えずに、ただ誰に対しても「思いやり」を持って接すればいいだけじゃないのか、という気になってくる。
観ているだけで優しい気持ちになる佳作。
渋川さんと光石さんという処方箋がほしい
自分の弱さや羞恥な部分を誰かに理解してもらえないのは普通であってそれが当たり前。ほんの少しでいいから“人に甘える”これがもの凄く難しいからだ。
私の周りにも〇〇失調症やPMSの知り合いがいてそんな自分も10種類以上の薬を飲むような毎日を過ごしている。
山添くんの「全然違いますよね?(病気のランク付け)」は日常あるあるで藤沢さんに同情しちゃったな。
後半は2人でお互いを助け合うという概念が生まれこれが病気と上手く付き合うための希望になった。
ただ、正直周りに理解してもらったり助けてもらえる環境は何処にもないのが社会で現実なのである。だから鑑賞していて辛くて仕方がなかった。
作中の光石さん演じる社長の温かい眼差しと話し方、渋川さんが演じる元上司としての聞き手としての振る舞い方。お二人の存在が物語の中でとても柔らかエッセンスに感じ取れて心の処方箋になっていたのが良かったですね。
主演のアイドルファンが評価してるだけ…
アカデミー賞作品賞にノミネートされてたし評価も高いから見てみたけど、冗長で退屈。
何でこんなに評価が高いのかと思ったら主演がアイドルだったので納得。
キネマ旬報もサブカル的な人気の作品に票を入れちゃうんですね…
優しくなれる、できない自分を許せる
話題作をやっと観た。
松村北斗が、映画やドラマに露出が多い理由が分かった気がする。
性格の良さが自然体で表現されている。
上白石萌音の、不器用で真っ直ぐな主人公にも共感できた。
病気からくる辛さ、シンドさ、抑えきれないイライラ感が伝わってきた。
朝ドラの「カムカムエヴリバディ」の夫婦役だった二人が醸し出す雰囲気がとても心地よい。
社長役の光石研さん、さすが。
弟の位牌に献杯するシーン、松村北斗の山添がお酒をついで、二人で手を合わせるところ、自転車のヘルメットを被ったままの姿が、山添を思う優しい気持ちにあふれていた。
最近観たドラマ「アンサンブル」でも、主人公である松村北斗を愛情深く見守る(義理の)父親をやっていた。
少し残念だったのは上白石萌音の藤沢美沙と母の関係、転職を決意したのは母への思いからだったので、掘り下げて描いてほしかった。
でも、まわりに優しくなれる、できない自分を許せる気持ちにしてくれた映画だった。
2515
恋愛につながらないもの、でいいのだ。
日本アカデミー賞で知った映画。上白石さん、堂々として綺麗でした。人生って絶望感満載の、まさに夜明け前な時が度々訪れる。幸せそうな人に見えても心と身体は嵐の真っ最中とか。そんな希望のない毎日の中で起きた、お互い期待してない人間関係の中で神様はまた一本の「トラブル」の系を垂らす。何が自分に「世界」を繋げてくれるかわからない。自分以外の人が自分を理解しようとしてくれた、その想いを自分も汲み取れた時、ちいさな「奇跡」が起きるきっかけになるのかもと思った。2人の男女が恋愛に発展しなくても、好感度はお互い良い関係って奇跡だよね。焦らず、自分の気持ちや生活を大事にしながら正直な気持ちも伝え合える関係は、地味だけど最高の幸福感。時に期待は裏切られてもそれでもよし!私、できたよって思える階段を一歩づつ進む、それが気づけば夜明けになるって信じたい。
プラネタリウムの話が素敵で、宇宙と自分は無関係ではない。爽やかな風が吹いたような映画だった。身近なテーマがじんわり身に染みました。
良い時代に、なりましたね
私がPMSに苦しんでいた頃
それはまだ市民権を得ていなかった
知る人ぞ知る、というか誰も知らない
(初めは自分でも知らなかった)
だからメンタルダウンもイライラも
単なる面倒くさい変な奴だと思われた
それが分かっていたから
あんな風に外に出すことなんて無理で
どれだけ心が乱れていようが
それは1人のときに発狂したりして
何とか普通を演じきって過ごしていた
そういう意味では、良い時代になりましたね
きっとパニック障害の人も、その昔は
なったら最後、誰にも知られないように
ひた隠しにして、生きていたのではないか
そんなこと知られたら社会復帰できない
そんな時代もあったのです
こういう題材が映画になること自体
とても良いと思います
作品は平凡でしたが、そういう意味で
有意義な作品だと思います
渋川清彦さんの表情がよかった
パニック障害の若い男性とPMSの若い女性が働く会社の、心優しい職場の人たちと、彼らを見守ってきた、心優しい前職の職場の人たちの心温まる、ほんわかと心が温まる作品。
他人の痛みに共感して見守る優しい人々の、それぞれ過去に秘められた艱難辛苦もチラ見せしながら、誰もが抱えている労苦を慮りながら、穏やかに、愛をもって共に生きようとする人々は、勤めているところが一流企業でもあろうと町工場であろうと「民度が高い人たち」と言い切ってもいいんじゃないかなと、この作品を見ながら感じました。職業や収入で人の価値は決まらない。幸せな生き方は人それぞれたという考え方は、世界的にあって『PERFECT DAYS』が海外でも高く評価されたことも、その流れがあったからだと思います。
パニック障害(PD)の男性山添さんを松村北斗さんが、PMSの女性藤村さんを上白石萌音さんがそれぞれ務められましたが、冒頭からいきなり上白石さんの演技にやられてしまい、心が持っていかれました。その後は穏やかにストーリーが進行して、観てるだけで癒されました。
山添さんと藤村さんがお互いを助け合うことで、お互いが成長していき、あんな理解のある会社があったら私も働きたい!
現実はシビアで、会社には毒蛇のようなお局様がいて、パワハラモラハラが蔓延しているということもあるので、私などはお局様の刀をどのように交わして逃げながら働くかが大きな課題で、それで頭を痛めていることがほとんどなのですが、この作品に出てくる職場の人たちは心優しい人たちで、前職の職場も、毒社員は見当たらず(いるのかもしれませんが、出てこない)。
なので、この作品は、PDやPMSに悩む方が見ても、つらくならないように配慮されていて、ほんとうに「元気になってほしい、あの人」や「この人」が念頭にあって制作された作品じゃないのかなと思いました。
二人が困難を抱えている障害の原因は、人間関係ではないところに原因があるようで(観客としては表層を見るしかありませんが)、その分、人のやさしさ、温かさが全面に出ていて、「人のあたたかさを描くのが目的の作品」なのかもしれない。
私は、いつも、その時の気分で見る映画を決めますが、その時「見たい」と感じた映画は、その時期の自分の人生の問題を打破するためのヒントが隠されていることがよくあるので、人生の転機になるヒントを映画からもらったり、励まされたりという経験をよくします。
この作品は、苦しむ人に、優しく、プレッシャーを与えない形で、ただただ共感を伝える形で、エールを送る作品で、「見る心のおクスリ」なのかな…と思いました。
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