夜明けのすべてのレビュー・感想・評価
全439件中、101~120件目を表示
新人 憎けりゃ 炭酸プシュ!まで憎い
いつもの気晴らし突発レイト鑑賞🚙💨
🙎🏻♀️PMSとパニック障害🤦🏻かー
自分はどちらでもないけれど、思春期以降は結構メンタル面でアンコントローラブルな浮き沈みの波に翻弄され続けてきたので、振り返って見た自分の人生の軌跡も👣… 決してノーマルではないな🐾
この2人も寛解したわけではないけれど、周りで見守る人々も含め、観終わってほっこりする人間模様だった😌
〝 今、自分が居る場所(宇宙)で、小さいながらも光輝く 〟
☆☆☆☆★(暫定)
〝 今、自分が居る場所(宇宙)で、小さいながらも光輝く 〟
原作読了済み。
個人的な事では有りますが、約2年以上を費やした実家終いが、やっと佳境に入りました。
ここ2年余り、映画館にはなかなか行けなく。その間に評判の高かったのがこの監督でした。
今回、三宅監督の作品を初鑑賞した訳ですが。
噂にたがわぬ実力を持った監督で有るのを認識しました。
元々、原作を読んでいて。そこそこの内容にはなりそう…とは思ってはいましたが。内容自体の大筋はそのままでありつつも、幾多の大胆な改定をした脚色の凄さに驚きます。
原作は、(精神的な)病いに苦しむ男女の。それぞれ、今、自分が置かれた立場で発作が起こり。それに対しての苦しみと、周りの人に対する接し方を反省する姿を交互に描写しています。
↓以下、原作と映像化との違い
(1度だけの鑑賞の為に全てを思い出せないので。今後、少しずつ思い出しては書き加えて行きます)
・栗田科学(栗田金属)
原作だと、職員が金物に関しての知識に詳しい職人達…とゆう、ザックリとした設定でした。
それを、映画では主にプラネタリウムに関する製品を製造する会社へと変更されています。
これは(おそらくですが)原作の題名から来る流れから思い付いたのかも知れませんが。これが映画のラスト30分にあたるオリジナル部分として、途轍もない威力を発揮して行きます。
・彼の元上司と、栗田科学の社長との関係
原作だと、彼の元上司の辻本は。原作の最初の方に、彼が昔の職場を回想する場面と。原作後半で、御守りの相手探しを続けていた彼の記憶から。御守りを送って来たのが、元上司の辻本だったのが分かり。お礼のメールからの、(本人からの)返信メールでしか登場しません。
それをこの映像化に於いては。この2人が共に、大事な姉(原作だと後輩社員)と弟。それぞれを〝 失い 〟(精神的に)片翼もぎ取られた感覚を覚えている【同士】として描いているところ。
だからこそ、今、彼がこの会社に居るその意味へと繋がっていました。
この改定には思わず唸ります。
・俺(彼)私(彼女)
同じ薬を服用していた事から、お互いの辛さに共感する2人。元々はいがみ合いに近い関係でした。
「何かしてあげられる事はあるのか?」
その優しさから、お互いを理解しようとします。
彼の部屋の中にはエアロバイクが有って、彼はそのエアロバイクを漕いでいました。
原作には無い、この何気ないワンカットですが。このカットだけで、彼が優良企業の優秀な社員で、日々の体力作りに励んでいたのが分かる場面です。
しかし今は、(外では乗り物には乗れないので)家の中でしかバイクは漕げない。
外では電車にすら乗れず、コンビニにすら行けない彼は。家と会社を徒歩で往復する日々が続いていました。
映像化でも描かれる散髪場面。
勿論、床屋にすら行けない彼は、自分で散髪をしようと考えます。
するとそこに、パニック障害で苦しむ人のプログを読んだ彼女が、自転車を持って来ます。
外では乗れない彼は断りますが。「何か自分に出来る事は何か?」…と考えた彼女は、替わりに彼の髪の毛を切ると言うのです。
実は原作だと。彼女は、いきなり彼の髪の毛を切りに彼の家へとやって来ます。
この改定自体も実に腑に落ちるのですが。この自転車が、映画後半で(原作共に)〝 大事な人の為に(自分が)何とかしなければ 〟…と、意を決して一心不乱に自転車を漕ぐ場面へと繋がるのですから、原作以上にしっくり来る場面です。
(原作だと、電車に乗るも一駅で苦しくなりレンタルサイクルで彼女のところに駆け付ける)
※ この自転車自体が《或る惑星》へと繋がるキーワードでも有りました。
・母親の病い/元カノ/ボヘミアンラプソディー/その他
映画では彼女の母親は身体が悪くなり、彼女は介護の為に転職を考えます。
この母親の介護に関わる展開は、完全に映画オリジナルにはなるのですが。それ以外にも、(原作だと)彼の元カノは。彼の病気に耐え切れず、彼の傍から去って行き、以後登場する事は無いのですが。映像化に於ける元カノは、絶えず彼の病気を案じる優しい彼女として描かれていました。
元々の原作では。元カノは、彼の回想での1場面にしか登場しないので。読みながら、どうしても2人の恋愛模様の進展を意識して読んで行きます。
そんな(原作での)恋愛関係に発展するのか?…と思わせる描写が。『ボヘミアンラプソディー』を観た彼女が映画を観て興奮し(映画館へは行けない)彼の家に、映画のサントラを買って押し掛ける描写。
ここが原作だと1番盛り上がる場面なのは、原作を読んだ人なら共通の思いだったのではないでしょうか?
この1番盛り上がる場面を、映画化では完全に切り捨てていたのには驚きました。
観ながら「マジか?」…と、少しは思ったのですが。考えてみれば、(映画本編では)ほぼ全ての登場人物の人達は、優しさに満ちて居る人ばかりでした。
元カノは(まだ)彼の事を見捨ててはいないのですから。彼女との恋愛も発展させる訳には行かない…とも言えるのです。
また原作自体も、2人の関係の発展には至らず終わるだけに。読みながら、どことなく(恋愛模様を期待した為に)中途半端気味に感じたのは事実でした。
だからこそなのか?原作で、彼女が盲腸で入院してしまい。慌てた彼は自転車で駆け付けるのですが。元カノとの関係性も有り。大事な人では有るものの、映画本編では、盲腸の話は完全にカットし。中途半端気味に終わる原作の【その後】を大胆に脚色して作り上げたのでしょう。
・ラスト30分の完全オリジナル
2人の関係は発展せずに原作・映画共に終わるのですが。少なくとも映画本編を観たところ。実は、完全にそうとは言い切れないところがこの映画の素晴らしいところでした。
勿論、2人の関係性は恋愛関係には発展しないのはご存知の通りです。
原作だと、盲腸で入院した彼女のところに、何とかレンタルサイクルで駆け付けるのですが。映画本編では、↑に記した様に。彼女が彼の家に置いて来た自転車を彼が使い、発作が始まった彼女のところに駆け付けます。
この時の描写が本当に素晴らしかった!
パニック障害の為に日々の移動は徒歩のみだった彼。
眩しい光を浴び、風を感じながら、スムーズに移動出来る。人の為に自分が生きる道を歩んでいると感じる喜び・そして幸せ。
思わず目頭に熱いモノが溢れ溢れて来ました。
そして、映画は。その熱いモノを搾り取りに、更にもう一つダメ押しされてしまうのです。
ここで、原作の栗田金属が。栗田科学へと変更された事での、最大の要因が遺憾なく発揮されていました。
子供や社会貢献の為にプラネタリウムを製造する栗田科学。
新たなプロジェクトとして、彼、そして転職前の彼女はこのプロジェクトに邁進します。
北斗七星を表現する台詞を考える彼に、彼女は一言「ありきたりじゃない!」…と言います。
そこで探し当てた〝 或るモノ〟
そこには、この栗田科学にとって、なくてはならない【遺産】が残っていたのです。
この【遺産】を基に作り上げたのが、彼女の口から発せられる言葉だったのです。
映画本編に登場した殆どの人を、プラネタリウムの施設を最大限に発揮し、同じシーンへと導いて登場させるその周到さに思わず感動し、感涙の涙を溢れさせられてしまいました。
※ 北斗七星は。光り輝く星の位置情報を、人間が勝手に線を引いて、それを1つの星座として認識したモノに他なりません。
しかし、元々の7つの星達は。本当は数千万光年もの距離が離れている星達に他ならない筈なのです。
(知識が無いので実際の距離間までは分からないのですが)
単なる点の惑星を《線》で繋ぐ事で大きな意味を持たせ、壮大な想いに馳せるのが天文学と言えるでしょうか。
彼女の為に自転車で駆け付けた彼の姿こそは、北斗七星の星々を、線で繋ぐ心の奥の想いの表れだった…とも。強引にこじ付けて想いを馳せる事も可能とも言えるのです。
(とんでも無いくらいに強引ですが💦)
〝 今、自分が居る場所(宇宙)で、小さいながらも光輝く 〟
1人1人がそれぞれの能力を発揮し、単なる点に過ぎない【個人としての惑星】で有ったとしても。線で繋がる事で、1つの《宇宙》として形成する事は可能なのです。
そんな想いを感じさせてくれたのがこの作品でした。
ちょっと、あり得ないくらいに飛躍した意見になってしまいましたが。観て本当に良かったです。
素晴らしい作品だったと思います。
市井の人々の日常を切り取った感じで締め括る、エンドクレジットの何気ない描写も、映画の余韻を増してくれる。
そして、劇伴が素晴らしかった事も一言添えて置こうと思います。
2024年3月3日 TOHOシネマズ錦糸町楽天地/スクリーン10
大袈裟な善意や共感なんて要らないのだ
鑑賞をずーーっと躊躇していた作品。
本日本命の「ゴールドボーイ」が面白かったら観ようかな。。と、ギリまで悩んだが、↑が面白かったから観ました。
実は、以前の職場で私が任された新入社員の女の子が「強迫性障害」で、対応にとても!
苦労した経験があります。
(強迫症って言ってたかな?)
本作の主人公が抱えている「生きづらさ」に共通している部分がありそうで、あの時の感情が蘇りそうで複雑だった。
共感出来ないと♪冷たい人〜と言われ
そーお〜♪だし、もし、今の自分も、
否定的な感情しか抱かなかったら。。
自分に失望しそうで正直言って怖かった。
自分の経験上、その彼女については、その症状がひどくなると、不安やこだわりが度を越してしまうから、人間関係や仕事、生活の全てに支障をきたしてしまい、生きづらそうだな。。とは思えた。
だけど。仕事って生モノで。
今確実にやらなくてはならない案件や、会議・打ち合わせなど、時間的縛りがあったり、社外の人への対応など、神経をすり減らす事が多いのに、、
これ以上大変なことを増やしてくれるなよ
( ; ; )と。。
否定的な感情があった事も事実です。彼女も頑なだったし。私も泣いたよ。
そして、本作の藤沢さん(萌音ちゃん)同様、会社にもその事を伏せていたため、周りのみんなも対応に困った。
自分ではど〜しよ〜もない「生きづらさ」と共存している人々に対し、こちらはどんなヘルプが出来るのか。
それを知るためには、当事者からある程度は説明してほしい。
デリケートな問題だから言い出しにくいのは理解する。
だけど、仕事だからね。お金を頂く以上はその分はしっかり働かなくてはいけません。冷たいでしょ〜か( ; ; )
だから、症状が出てしまった藤沢さんや山添君(松村君)に対し、栗田の人々がただただ心配して優しくしていたけれど、やはり、当事者が説明している描写は欲しかった。
こちらも理解したいと思っているよ。
社会の一員としている以上、誰だって皆んな何かしら抱えているし、しでかすし、そもそもが「お互い様」なのだから。。
そして本作が描く「生きづらさ」も、それってその人の個性だからね。
パニック障害、PMS、飛びすぎかもだけど、トランスジェンダーの問題とかも、当たり前に話せる世の中になれば、皆んな生きやすくなって良いのにねと思った。
まぁ、現実には栗田科学の様にはいかないにしても、
(おやつばかり食べてもいられないしw)
職種や環境も違うけど、1人1人が今の自分の周りを見つめ直してみてさ、少しずつ変わっていけたら良いのにね。
私はPMSの症状はないけれど、生理前には無性に何か食べたくなるし、
(藤沢さんのポテチ流し込みもソレ?w)
いつも以上に掃除したくなるし、
(巣籠もり準備?w)
生理中は腰もお腹も痛いし、あの不快感は慣れるものではない。
着る服も気を使うし、それこそ映画も行きにくい。
妊娠、出産は女子がするから、毎月の生理は男子にあげたいわ。
人と比べにいく事だからこそ、生理についてだって、同じ女同士でもかなり感覚がちがうと思う。
生理休暇に否定的な女性もいるもんね。
PMSへの理解が進むにはまだまだハードルが高そうだ。
そして症状が出た時の、自分の心と体が思い通りにならない事の恐怖、薬の副作用など、怖いだろうなと。不安が伝わってきました。辛いよね。
本作を通じて様々な生きづらさを感じている人々に寄り添えるきっかけになれば良いなと思う。
「クジラ」じゃないけど、声にならない声を聞いてあげたいし、声をあげられる環境作りの大切さも改めて感じた。
藤沢さんと山添君の関係性、距離感がとてもよかった。
お互い似たような悩みがある者同士として心の奥で理解し合えていたのかもしれないが、
「そ〜ゆう人」って位のライトな感覚で付き合っていて、悲観的になり過ぎていなかった。
困っていそうだったら声をかける、
辛そうだったら助ける、
当たり前の事を当たり前にしているだけなのに、心に響いたのは、私が人として未熟だからなのかなと反省。。
山添君がはじめてジャンパーを着たシーン、藤沢さん語りのプラネタリウム、山添君の元上司の涙。
静かながらも心に沁みたシーンでした。
萌音ちゃん、村松君の自然体な演技がリアルで良い。
大袈裟な演出がなかったのが効いていた。
ほっと、優しい気持ちになれる映画
冗談を言い合える関係って素敵だな、と思う。
自分が大切に想う人がその人のペースで、今よりも少し幸せになってくれるなら……
そう願いたくなるような映画でした。
炭酸の音が響いた時、藤沢さんの様子を気にしている自分がいた。
その瞬間に観客という立場から、少し彼女に歩み寄れたのかもしれない
山添くんがヘルメットを買った後も、少し窮屈なサドル位置で自転車を乗り続けているのは
それ自体が藤沢さんの思い出だからなのかな? と妄想した。
上白石萌音さんは感情の出発点を表現するのが上手いんだなぁと思った。
とても良かった、上手く言葉にできないけれど。
PMSによる月に1度のイライラを抑えられない藤沢さんと、パニック障害を抱える山添くん。小さな会社で同僚として過ごす二人を中心に描かれるお話。
とても良かったけれど、具体的に良かった所を説明するのが難しい。劇中で、学生の職場インタビューで会社の良いところを聞かれて、良いところがたくさんあるのに何も具体的には挙げられない社員の皆さんと、きっと同じ気持ち。
優しく理解のある人ばかりの職場環境や、藤沢さんと山添くんの関係は、理想的すぎてファンタジーなのは分かります。でも、生き辛さと苦しみと自己嫌悪を抱えてどうにかこうにか生きている人にとって、どうか少しでも、理解のある人や場所に巡り会えますようにと、そんなことを思いました。
藤沢さんと山添くんが二人でいるときの空気、二人を気遣う人たちとの関係、職場での社員同士の距離、描かれる全てがとても心地良く、好きでした。
92点 心が洗われました。感謝しなきゃな…!
オーディオコメンタリー
生きるのが楽になった
めちゃくちゃ良かった
好きなシーン⇨
•藤沢さんが山添くんの髪を初手で切りすぎた時に、切った髪をまずポケットに入れて隠そうとしたところ
•ドキュメンタリー撮影に来てる中学生男子が「だめ!」ってNG出すところ
•夜があるおかげで地球の外の世界があることを知れる、という亡くなった弟の肉声
•山添くんの元上司をプラネタリウムきてくださいと誘ったら不意に上司は泣いてしまって、上司のお子さんがスマートにハンカチを出すとこ
•早退した藤沢さんの家へ山添くんが自転車で向かう時のシーンで、坂道の入り口でちょうど日向と日陰が分かれている道があって、山添くんがそこから日陰が続く坂道を登る前に一度足を止めるとこ
•2人の職場の時間の流れを光の角度が徐々に変わっていくところでタイムラプス的に映していたとこ
必要な夜とは
映画館じゃないと見終えることができないタイプの映画があって、個人的にはこの映画の冒頭の10分くらいの主人公が周囲の人と馴染めずにはみ出していくシーンたちがつらすぎてきっと配信などで観ていたら停めてしまっていたと思う。
この映画には意地悪な人や悪意のある人は出てこないある意味ファンタジーなんだろうけど、そういう舞台の映画の中にも地獄があって、冒頭の10分は自分にとってかなり刺激の強いシーンだったけど、映画館でだからこそじっと見続けることができて、結果とても良かった。
そのあと、自死した家族がいる残された人たちの互助会のシーンから主人公の男性が発作を起こすシーンまで、もう何故かわからなくなるくらい涙が止まらなくなった。
つらい本人たちとその人を心配している周りの人たち、残された人たち、それらを説明することなく見事に描いていたからだと思う。
あなたのことを理解して心配している、と言葉(セリフ)ではなく2時間かけて映像で表現していく、まさに映画でしかできない作品だった。
映画としてとてもスマートで、あぁこの映画はとても好きだなと思ったのは、冒頭のカフェのシーンで主人公の女性が履歴書を書いているシーン、隣の人が立って席を離れて、次のカットでおそらく主人公の女性が自分の飲み物をこぼして机がびしょびしょになっているシーン。
この省略、描かれていないシーンが、この映像の先を我々観客に想像させて、つまりこの映像以外にもこの人たちは存在すると思わせてくれる。
この映画に出てくる人たち、全ての人たちを好きになるし、この映画が終わった先も大変な時は多々あると思うけどどうか幸せを感じながら過ごしていて欲しいと心から思った。
そういった意味でも、ラストのクレジットのシーンが会社の一コマの長回しシーンであることがとても嬉しかった。
映画の力を存分に感じることができた傑作でした。
素晴らしかった。
「夜明けの全て」はPMSとパニック障害の映画だった
テーマとして疾病を扱いながらも、しみったれた感じはしない映画だった。
小難しい作品ではなかった。
PMSとは月経前症候群。
PMSって生理の別の呼び方かと勘違いしていたが、違うらしい。生理時の症状が重い場合にPMSと診断されるみたいだ。
PMSの主人公ひどい月経前症候群で、そのせいでたまに自分をコントロール出来なくなってしまう。
そして新卒で入社した会社でもうまくいかず、自分から辞めてしまうのだ。
そしてティッシュ配りを始める彼女。
「職業に貴賎なし」とはいうけれど「なんてもったいない」と思ってしまう。そう思わせるシーンだ。
その主人公もやがては中小企業を見つけて再就職する。それがプラネタリウムのミニキットの会社だ。
パニック障害の男
プラネタリウムの会社には彼女の次に、新人の男が入社してくる。
めちゃくちゃ無愛想で「俺はこんなところにいる男じゃない」的なことを思いながらやるせなく働いているのだ。
だがこの男はパニック障害で、電車にも乗れないし、生活範囲がめちゃくちゃ狭くて美容室にも行けない。
恋愛物語ではない
二人の主人公である女と男は近づくが、恋愛関係にはならない。
お決まりの恋愛話には落ちなかった。
個性
誰にでも夜明けは訪れる
PMS(月経前症候群)やパニック障害について色々と知ることが出来たというだけでも本作を観た甲斐があったように思う。幸い自分の周りには藤沢や山添のような病気を抱えた人はいないが、もし偶然街中で遭遇したら…と思うと、決して他人事のようには観れない。現代は特にストレス社会である。精神的に疲弊してしまう人は多いのではないだろうか。そういう意味では、非常に現代的なテーマを扱っているように思った。
ただ、作劇上、気になる点が幾つかあった。
まず、藤沢や山添の周りに悪人が一切いないという点である。現実にはここに出てくる以上にシビアな状況があると思うのだが、それらが意図的にオミットされているような気がした。
山添の恋人の退場の仕方も取って付けたようでいただけなかった。むしろ描かないことで物語に余白を残しておいた方が、観る方としても色々と想像できて良かったのではないだろうか。
演出面でひっかりを覚える個所もあった。藤沢のモノローグで始まるオープニングシーンである。おそらくPMSの症状の解説という意味があったのかもしれないが、いささか安易な処理で個人的には余り感心しない。
監督、共同脚本は「ケイコ 目を澄ませて」の三宅唱。本作には同名小説(未読)の原作があるが、これが原作準拠なのか、それとも監督のアイディアなのか分からない。しかし、少なくとも「ケイコ~」の三宅氏であればもっとスマートな演出が出来たのではないか…と落胆させられた。
色々と不満を書いてしまったが、だからと言って本作が凡作と言うつもりはない。むしろこれらの不満点を補って余りある点もたくさんあったので述べておきたい。
まず、藤沢が山添の散髪をするシーンがとても印象に残った。ここで山添は初めて笑みをこぼし、それまでの暗く鬱屈したキャラに一気に朗らかさが加味され印象がガラリと変わった。この演出は見事だと思う。
山添の元上司も良い役所だった。特に、後半のレストランのシーンは見ているこちらも思わずホロリとさせられてしまった。余計な言葉など一切ない。その表情だけで感動を引き出す演出が素晴らしい。
そして、本作の最大の美点は、藤沢と山添の関係を安易に恋愛に発展させなかったことだろう。他人には理解しづらい特別な病を抱える者同士。困った時には助け合い、時には厳しいことを言い合い、まるで人生の盟友のように並び立つその姿を見て何だか羨ましくなった。
この”近からず遠からず”の距離感にも納得しかない。他者と深く関わらないことで傷つかない人生を送って来たであろう二人のバックストーリーが想像できた。
クライマックスはかなりベタな展開ではあるものの、ここでの藤沢の朗読の内容も素晴らしかった。人生における金言と言ってもいいだろう。映画のタイトルの意味が噛み締められた。
鯛焼き
食べ物の使い方がいい。シュークリーム、しば漬け、鯛焼き。
トンネルの使い方もうまい。あの風景はレイニーデイインニューヨークを思い出した。あのトンネルの向こうに行くかどうかが境界線。
人数が少ない分、会社の雰囲気は人次第な中小企業っぽさがよく出ていた(この会社は良い方に)。エンドクレジットでみるとチームビルディングの専門家も入っていたようでなるほどと思った。すごい目配り。
上白石萌音の朗読が上手!!圧巻。
同時代を生きている人が撮った映画だなあとしみじみ思う。細かなディテールが今なんだよなあ。
出てくる人も映るものもちゃんと考えられてて、なんでこれが?みたいのがない。
ジャンバーを着る場面がさりげない!!ここを居場所と思ったのでジャンバーを着ます!!!ってのではなく、ちょっと出てきまーすってときに着るの。周りもちょっと気づくけど何か言ったりしない。
オープニングの黒いスーツと第一ボタンまで留めた真っ白なシャツで、真面目な性格と、硬めの会社であることを説明するとか。
中学生ふたりも視点を変えるよいアクセントになっている。お母さんはシングルマザー?いろいろあったから優しいんだろなと思わせる。
エリート目指してそうな彼女との微妙な噛み合わなさ。好きだから理解して支えたいとは思ってるけど、どうしてももう気持ちが重ならない感じ。外で話せる?と言って、外で話すシーンはきっぱりカットも潔かった。
元上司に復職希望伝えるのにエアロバイク漕ぎながらっていうのが今どきっ子〜。知り合いの20代男性ならありえる。リアルだ。絶妙だ。アラフォーは驚愕だよ。正座だよ、そもそもzoomでは無理だ。
グリーフケアのミーティングもさりげなく、関係性や彼らの背景がうまく説明されていた。お姉さんのこともあったからなおさら心配したんだよね
退職のはなしを仕事しながらさらっと伝えるのも、以前から転職しようとしてるのは伝えてたんだろうなあと、その関係性が現れていた。
ただ、2000円以下に見える商品をあんなちんたら箱詰めしてたら利益出ないでしょ〜というのは気になる。1箱15秒でしょ。社員8人くらいいたし。人件費、考えて。望遠鏡が利益率高いんだろうか。別工場で光学機器作ってるとかかもしれない。
身近な人がパニック障害なのでこんな風に辛いんだなあと思った。症状について知ってはいたけれど、演技で見るとまた身につまされる。
イライラしたとき、あんな風に対応してくれたらいいんだなあ。優しい時代になったものだ。そしたら私ももっとうまく優しくできたかもしれないな。私もあそこまでではないけどずいぶんイライラしてしまっていたから早く病院いけばよかった。
映画館、月曜の夜の回に20代くらいの人たちがよく入っていた。だれか俳優目当てなのかもしれないけれど、この感じが若い人に響くのかな。
本篇前の予告ではたくさん若い恋愛映画がかかっていて、つくづく興味ないのだなあと思う。年のせいか時代のせいか。恋愛以外の人間関係もあるよねえ
植物に水をあげるとき、おはようって言うのいいな
夜明け前の闇が一番暗いのなら、朝が来るまでうずくまってていいから生きよう。
メンタルヘルスが言われて久しく、心療内科が家の最寄り駅近くにいくつかある現代。
「夜明けのすべて」は、PMS(月経前症候群)の藤沢さんやパニック障害の山添くんの日々ををのぞき見しているような気分になります。
しみじみと、心にしみわたる映画でした。
私は女性ですが、生理の時に体調や気分が悪くなることが全くなく、食欲が増進して2キロくらい増量するのがデフォです。
生理によってこんなに重い症状を抱えている人もいるのだとびっくりしました。
余談ですが、私の生理不順は、妊娠・出産でなおりました(生理周期が一定だと便利!)。
友人は、胃下垂が、妊娠時子宮が大きくなったことでなおり、栄養を十分吸収できるようになったそうです(その分、食べた分だけふっくらするようになりましたが)。
藤沢さんのような人も、妊娠・出産すると、体質が大きく変わる可能性はあります。
移動プラネタリウムの藤沢さんのナレーションは、素敵でした。
藤沢さんの声で語られる言葉に、共鳴しました。
「自転しながら公転している地球では、一度として同じ夜明けはない」
心して生きます。
この移動プラネタリウムのところで、唯一涙しました。
藤沢さんと山添さんの勤務先の社長の、自殺された弟さん。
映画では、弟さんは写真でしか登場しませんが、とても印象的でした。
彼は、移動プラネタリウムの原稿の元ネタになる音声と文章を遺していました。
頑張り屋さんで、昼よりも夜が好きで、きっと何らかの生きにくさを抱えていたのでしょう。
普通や常識に対する同調圧力や、違反者に対するヒステリックな反応を見ていると、少数派はしんどいと共感します。
彼の言葉をきちんと受け取りたいので、原作を読んでみます。
ちなみに、私は夜より昼が好きです、夜は得体がしれなくて怖いなと感じるからです。
個人の特性と、効率性や社会常識とのバランス。
自分を知り、社会との関係性を調整しながら、各々かけがえのない1日を積み重ねていけたらいいなと思います。
しみじみとした優しさ
全439件中、101~120件目を表示