夜明けのすべてのレビュー・感想・評価
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仄かな希望、生きるチカラを、胸の裡にそっと宿らせてくれる傑作。
生きるということは「どうにもならないこと」。どんなに頑張ってもなかなか思いどおりにならない。そんな「制御できないもの」といかに折り合い、遊ぶか。本作は、そこのところを焦らずに語っていく。
ファーストシーンは、意表をついて藤沢さん(上白石萌音)の長いナレーションから始まる。加えて、彼女のこみあげる怒りや恥じ入る謝罪のことば…。ときに深いため息までも交えたそれらの「声・音」に、いつしか耳そばだてている自分に気づかされる。
「声・音」に続いて印象的なのが、数々の「映画的記憶」とでもいうものだ。
劇中「おじいちゃんたちが宇宙に行く話」「月に向けて親指を立てる話」といった映画絡みのセリフも出てくる(『スペ●●● ●●●●●』『ア●●●』のこと?)が、そんなフレーズだけでなく、むしろここで言いたいのは16ミリフィルムで撮られた豊かな映像が喚起してくれる個人的な妄想のたぐいだ。
たとえば、室内から扉の間口越しに映し出された戸外は、思いがけずジョン・フォードの『捜索者』や小津安二郎の『晩春』を連想させる。また何度も挿入される列車の遠景シーンは侯孝賢の『珈琲時光』を思い出させてくれる。それは、いずれも純粋に映画そのものを推進する“チカラ”としてひたすら美しく、心地よい。
特に中盤の、山並みを背に画面左から右へと走り抜けていく列車のロングショットでは、大好きな『東京物語』の尾道のシーンと不意に「記憶」がダブり、泣いてしまった。このあたりから涙腺の緩みは加速してゆく…。
山添くん(松村北斗)が、早退した藤沢さんに忘れ物を届けるため、職場の制服をごく自然に羽織り、チャリをゆるゆる転がして(このシーン、山添くんの表情と自転車のスピード感が絶妙!)坂道を下るあたりで涙腺決壊。以後ラストシーンまで波状的に涙がこみ上げ…。映画でこれほど涙してしまったのは『わが谷は緑なりき』以来かも(苦笑)。
一方、藤沢さんがサンドウィッチや蜜柑をほおばりながら歩く、あるいは部屋でポテチの缶に口をあてて一気食いするといったシーンでは、彼女の人となりがさりげなくあふれ、思わずにっこりほっこりしたりもする。
このふたりの関係は、『はじまりのうた』のキーラ・ナイトレイとマーク・ラファロの結びつきに近いか。親友とも恋人とも違う。ここで三宅監督のことばを借りると、やはり「同志」と呼ぶのが一番しっくりくる。自分とは異質の人とどんなコトバを交わし、異なる生活感や価値観にどう橋を架けるか。そんなふたりの会話が実にスリリングだ。その向こうにゆるやかな連帯感が広がる。映画のラスト、ふたりの関係性は時や場所を超えて、山添くんのナレーションでゆるやかに閉じていく。
三宅監督はインタビューなどで、本作を「『特別な人』の『特別な話』にならないようにしたかった」と語っている。「主人公たちはいずれも前進しようとする人」で「相手が困っている時、何かできることがあるんじゃないかと小さなアクションを起こす。それは必ずしも正解と限らないがチャーミング」なのだと。
けっして他人事でも例外的なことでもない。日々暮らすうえで、私たちが否応なく感じさせられる無力感や幻滅。それにどう向かい合い、かすかなりとも希望を見出していくか。本作は、そこを考えるチカラを与えてくれる、私たちの心にそっと寄り添いながら。
映画終盤、「移動式プラネタリウム」に主な登場人物が一堂に会する“見せ場”があって、ここでも泣いてしまったのだが、その時ふと思い出したのが木下順二の戯曲『子午線の祀り』。壇ノ浦の戦いであえなく散った平家武将らの姿を、天空の運行と対比させつつダイナミックに描いた叙事詩だ。
そしてもう一つ。この「移動式プラネタリウム」内で“天空”を捉えたショットは、無限な宇宙の「拡がり」よりも、カメラが収める「狭さ」をむしろ感じさせた。この印象は、映画『晩春』で室内から窓越しに捉えられた裏山の景観を観た時に感じたものと同じだ。
私たちがふだん眺める光景はごく限られた狭いものに過ぎない。そこに、人の意思とは無縁の“天空からの視点”を加えることで、新たな風景・人々そして自分の立ち位置が立ち上がってくる。それは歴史的人物であろうと無名の自分だろうと変わりはない。
本作を観終わった後は、だれしも自分のキモチがちょっぴり変わったことに気づくだろう。映画に心から「ありがとう」と言いたくなった。
※監督のティーチイン付き試写会にて鑑賞(あまりにも泣いてしまったので、もう1回、劇場で観直します)。
じんわりと沁みる温かさ
悲しい場面もないし感動を誘われた訳でもないが、なぜかずっと泣きそうになりながら見ていた。PMSによって前の会社でうまくいかず、今の会社でもイライラが抑えられないことのある藤沢さん、パニック障害で普通の人が普通にできることができない山添くん。相手のことを知らなければ「なんだコイツ」と思ってしまうようなことをお互いしていた2人が、相手のことを知って関わるうちに、男女だろうと苦手な人相手だろうと、助け合うことはできるということを認識する。最近はよく男女間のいがみ合いや気に入らない人間には何をしてもいいだろうというような人たちが多いような気がしていたので、この映画の中の人たちの優しさがそういったいざこざに疲弊していた心に沁みた。エンドロールも秀逸で、主題歌が流れて以上映画でした、というような感じではなく、日常がずっと続いていくような終わり方がこの映画のテーマに非常にマッチしているように感じた。
主演二人をはじめ、脇を固める俳優陣も皆よかった。
なにか大きな事件が起こるわけでも、ありえないような設定がある訳でもない。私たちの日常と地続きの世界で、藤沢さんと山添くんが生きている。現代社会に生きている人々にこそ見て欲しい映画だと思える作品だった。見られてよかった。
無題
じわじわと感動で泣けてきた
二人の変化から学べる様々な人の生き方
ずっと癒され続けているような、素敵な時間でした
自分には合わなかった
精神的に障害や疾患を抱えていてなかなか社会に馴染めない2人が仕事を通して徐々に社会に馴染んでいく様子を描いた作品。
同じ共通点を持つ2人が恋愛に発展していろいろ起きる事件を2人で乗り越えていく恋愛映画なのかな?と思っていましたが全然違いました。
個人的には起承転結喜怒哀楽がはっきりしている映画が好きなので、残念ながら今回の映画は内容的にはかなり平坦で自分には合わなかったと言いますか、正直退屈に感じました。
どちらかといえばややドキュメンタリー寄りの作品で社会認知を目的としているようにも感じました。
夜明けとは何を指しているのかもいまいちよく分かりませんでした。もしかしたら寛解のことですかね?
最近の映画にしては解像度がずいぶん低いのが気になったので調べてみたら16mmフィルムで撮影していたんですね。納得しました。
栗田科学就職希望
原作のファンで映画化の発表があってからずっと楽しみに待っていました。
さらに大好きだったカムカムのお二人が主演。もう待ちきれず朝一で見てきました。
今まで何度か好きな作品が映画化されて思ってたのとだいぶ違う…みたいなこともあったのですが、この作品は、自分が作品の中の一員であるかと勘違いしてしまうような原作そのままの世界でした。そのままの藤沢さんの山添くんがいました。
生きているのが楽になるような、深呼吸したくなるような、空を見たくなるようなそんな映画です。
ずっとこの世界を見続けたいなと思うような不思議な感覚でした。
主演のお二人の声がとても心地よくてずっと聞いていたかったです。
光石さんの社長も優しい中に悲しみも秘めていたり、凄く良かったです。
またエンドロールもよくあるタイアップの音楽がバーンって流れる感じじゃなかったのもとても良かったです。
またひと息つきたい時見に行きます
ゆったり生きよ
優しく静寂に包まれた─
正直それほど見たいと思ったわけではありませんが、非常に良かったです。
あまりに淡々としていて、あまりに何も起こらないので、もしかしたらつまんないかもしれません。あっさりしているし、常に引いた目線のようなものも感じるし─。でも、個人的にはその雰囲気が非常に好きだったし、映像の質感とか静かに流れるメロディーなんかも好きだったなぁ。ロケーションとかもかなり良かったと思ったし、基本的に映像だけでかなり引き込まれたんですが、テキストで魅せるところと映像だけで見せるところのメリハリとかバランスが絶妙でしたし、何よりも優しさに満ちていたので、予想外の笑いとか涙がとても心地よかったです。
過剰な優しさなのかもしれないし、表面的な優しさや丁寧さなんかも感じたので、内容に対しての良し悪しはかなり一人一人違ってくるんでしょうけど、映画としての完成度とかクオリティはかなりのものだと思います。
内容や台詞、情景なんかに所々疑問符がついたところもありましたが、いい作品でした。
普通の日常を素晴らしいと
何も起きない日常の中の非日常
生きることを少し楽に
#夜明けのすべて出会えてよかった
プレミアムナイトにご招待いただき、一足先に鑑賞。
パニック障害の山添くんとPMSの藤沢さんの2人が抱える葛藤や生きにくさを通して、今を生きる私たち1人1人が社会に感じる息苦しさや歯痒さを救ってくれるような作品でした。人は大小さまざまな悩みを持っていると思いますが、鑑賞後は「生きる」を少し楽にしてくれたそんな気がしました。
山添くんの藤沢さんのことをはじめは苦手意識を持っていましたが、最後には打ち解け理解していくその姿が素敵でした。人は他人を第一印象や外見で判断しがちですが、向き合うことで良き理解者を見つけていく山添くんを通して、難しいことではありますが、とても大切なことだと感じ、自分の偏見や思い込みを少なくして人と関わっていきたいなと思った瞬間でした。
2月9日公開後ももう一度観に行きたいと思います。
一発免停!!
レビューの評価高いし、
生き辛さを抱える人への理解を。と、
期待して見にいったが、ダメだった。
いや、映画の内容も生き辛さを抱える人達の
環境の描写も、よい内容だったのだけれど。
PMSですか?突然怒り出す病気、
僕には受け入れられなかった。
あんな風に、突然怒り出されたら、
僕の中の法律では、一発免停!!
イヤ違うな、即死刑、デスノート記入!!
です。
病としての理解以前に、
ああいう風に、意味不明に攻撃的に
強く当たってくる人は、全く受け入れられない。
たとえ痴呆老人であっても、身内であっても、
意味不明に攻撃的にされると、
一発でシャットアウトです。
ということで、
僕は、生き辛さを抱える人に寄り添うことは
できそうもないなぁ〜(*_*)と
やや凹んでしまいました。
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