劇場公開日 2024年2月9日

「持ちつ持たれつ、お互いがお互いを自由に。」夜明けのすべて 羊さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0持ちつ持たれつ、お互いがお互いを自由に。

2024年3月2日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

幸せ

PMSに悩まされる藤沢さんと
パニック障害に悩まされる山添くん。

生きたいとは思わないけど死にたくはない。
そんなふうに思いながら生きていくのは
とてもつらくて毎日が退屈で苦行。
電車に乗れず行動できる範囲が狭く世界も狭い。
ひとりの世界に閉じこもるような山添くん。

普段は温厚で人当たりが良さそうな藤沢さんは
月経の前になるとまるで人が変わる。
ちょっとしたことですごく怒る。
炭酸水を開ける音にさえ怒る。

そんな2人が徐々に心を開いていって
お互いがお互いの世界を広げてあげるような話。

そのきっかけになったのは…
山添くんの髪の毛を藤沢さんが切ってあげたこと。
なのではないか?と個人的に思っている。

このシーンはゆるいオーダーを受けて
あとは北斗さんと萌音さんのアドリブだったのか?
と思うくらいに自然だった。すごく面白かった。
北斗さんの笑い方がほんとに弾けていました。

山添くんはPMSを理解しようと
パニック障害のかかりつけのクリニックで
本を借りて読んでみたり…

藤沢さんは電車に乗れない山添くんの
行動範囲が広がればと乗らない自転車をあげたり…

あたたかな人間関係がおだやかに築かれていく。
観ていて心が和やかになっていきます。

山添くんと藤沢さんが勤めている
中小企業の方々もすごくアットホーム。
一緒に働く方にも2人は恵まれていたと思う。

僕も昔、中小企業に勤めていたんだけれど
なんだかとても懐かしかったな。(余談)

生きても死んでもどっちも良さそうな山添くんが
希望を見出して「すごくないですか⁈」って
前職の上司に仕事の話をしていたシーンは
僕もその上司と泣いていました。

出会う人、出会う環境よって、
人は変われる。生き方が変わる。

山添くんと藤沢さん以外の登場人物も
重い問題を抱えているのだけれど
みんなで支え合って生きているという描写が
しっかりとあって全体を通してあたたかな作品です。

エンドロールがこれまた良かったです…

山添くん、これからもゆったりと生きてね。
藤沢さん、辛くなったらまた戻ってきなね。

そう、声をかけたくなりました。

羊