劇場公開日 2023年6月23日

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「戯曲のような演出」告白、あるいは完璧な弁護 TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5戯曲のような演出

2023年6月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

正直、公開前にトレーラーを観て「いかにも芝居がかったナレーション」が鼻について鑑賞候補から外していた本作品。ところが公開が始まって評価を確認してみると、ずっと高評価のまま一向に下げる気配を見せません。諸々の事情や巡りあわせで、最近の私にしては珍しく前の劇場鑑賞から十日以上も空いていたこともあり、仕事を片付けて遅ればせながらシネスイッチ銀座で鑑賞です。
予告やあらすじ紹介にもある通り、「ある密室殺人の容疑者と弁護士による心理戦」なのですが、観ていて若干ご都合主義的な展開や、やや意図的すぎる編集と感じる部分があるものの、そこに囚われたり拘ったりするとこの作品の醍醐味は半減してしまい、それこそ「野暮な観方」なのだと思います。そもそも我々が観せられているものは事実の回想ではなく、いずれも容疑者或いは弁護士によって語られる「過去」であってそれが真実かどうかは判らないわけで、その純粋な心理戦こそがこの作品の見どころです。何なら一時期「流行った」伏線回収みたいなことをしていない潔い展開は、なるほど評価が高いのも頷けるよく考えられた脚本だと思います。
そして観終わればなるほど、予告に感じた「芝居がかった」は演出こそ実はこの作品を巧くTrail(牽引)していると思いました。おそらく、映画としてだけでなく舞台でも楽しめそうな戯曲のような演出で、主演の二人ソ・ジソブとキム・ユンジンの顔芸対決も間違いなく「見もの」ですし、さらに脇を固めるナナ、チェ・グァンイルも素晴らしい。
どうしても劇場でなければとは言いませんが、ネタバレ回避は必須。いずれ配信でも、是非一度観て損はない作品だと思います。良作です。

TWDera