大いなる自由のレビュー・感想・評価
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175条とおよそ123年間
苦しかった…。けれども、見なければいけないと思ったし、見てよかった。『トム・オブ・フィンランド』を見た時も同じ感情にはなったことを思い出したし、こういったことが同じ時代に違う土地で行われていたと思うと…。ただ、こういった過去をしっかりと描いて世界に配給している国は大抵現時点で同性婚も法制化しているんだよね。もちろん、ハンガリーやポーランドのように現代においても差別的な法案が通ってしまったり、日本のように理解しているようでしていない法案が形だけ通っておまけにバックラッシュまで起きてしまうような国もある。
閉塞さを演出する静寂を時折トランペットの音が痛快に打ち破ってくれるのが好きだった。そして、175条が改正された時ってあんなに急なタイミングだったんだね。とにかく、音楽の演出に心が救われた部分が結構あった。
ドイツの刑法から175条が削除されるのは1994年、削除までの約120年間で罰せられた男性同性愛者は約14万人。政府がコミュニティに正式謝罪したのは2017年、6年前。
愛や自由にお墨つきは要らない。でも幸せになる権利がないことで人は死ぬ
主役ハンス演じるロゴフスキが素晴らしかった。いつもの彼のように静かな眼差しで内向的で口数少ない。今回は加えて彼の美しく逞しい身体が生きていた。その彼が声をあげて泣くとき、その彼が懲罰房に入れられるようなことを自ら進んで言うとき、ハンスは人で神?いいや普通の人。
肌の温もりを求める性欲も自由な愛も国家や社会から許可みたいにして与えられるものじゃない。国家も社会も不幸な人間を作り上げることだけはとても上手だ。1945年だろうが1968年だろうが現代だろうが。時間軸の行き来が永遠に続くループのようだった。日本もいまだにやってる。国家がやることはいつもずれている。国家には何も期待しない。
愛する人の本性 と 許さぬ社会の本質
個人的な思いだが、これを見て自分は
制度や同性愛の特殊性に囚われ過ぎたくはない。
「エゴイスト」で同性愛に注視し過ぎないように。
それにしても何と濃密な心への揺さ振りなのだろう!
日本との比較ほか、こういった事情が存在していた背景にも要注意(説明入れてます)。
今年231本目(合計882本目/今月(2023年7月度)17本目)。
(参考)前期214本目(合計865本目/今月(2023年6月度まで))。
映画の趣旨としては、実際にドイツでは「つい最近」とまで言えるほど「最近」まで存在していた男性どうしの同性愛を実際にドイツ刑法で禁じられていた、という事項をテーマにしたもので、刑務所うんぬんのパートはその表れ(刑法から派生する刑事訴訟法が発揮される裁判所で有罪判決を受けたものは、通常は刑務所に送られます)にすぎず、実際問題はLGBTQの在り方を問うている映画と解することが可能です。この点、一応映画内ではちゃんと説明はありますが、深い部分までは出てこず、そこそこの知識が必要な映画になっています。
要はこの映画、ドイツの刑務所はこんな感じなんですよとかという宣伝等をする映画というように解するのは変で、あるいはドイツ(旧)刑法のおかしさを検証する映画でもないはずです。より大きい視点で見たLGBTQの問題が背後にあると解するべきで、その点の言及が十分とは言えなかった(刑務所シーンばかり見せても…というところ。もちろん脱獄もの等なら理解はできるが、この映画はそれが趣旨ではない)点は残念です。
採点に関しては以下の通り、映画内で説明が足りていなかったかなと思える点などは補足で入れてあります。
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(減点0.3/やや問題提起が足りない)
字幕等で「つい最近といえるほどまでドイツ旧刑法等に存在した」などと出るように、一定の配慮はありますが、この映画の根本の主義主張はLGBTQ等の論点であり、その論点がどうしても映画として見えてこない(かつ、高度な議論を要する知識が必要だが、それも説明がない)点がちょっと残念なところです。
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(減点なし/参考/「ソドミー法」とは何か、男性と女性の「恋愛」の在り方の差等)
もともと、同性愛を禁止する法律は紀元前10世紀ごろからあったといわれます。その後、古代ギリシャ、ローマの時代にはキリスト教が盛んになると、キリスト教の教えとして「性に対する考え方」は厳しくなりました。実際に15世紀に入ると「一般的ではない性的な活動、行動」を禁止する考えが多くの国でできました。これを総称して「ソドミー法」といいます。
法律であるので「何が罰則対象なのか」ということは明確に書かなければならない(罪刑法定主義の現れ)のですが、当時はそもそもまだ「罪刑法定主義」といった論点が存在せず、また、その制限の趣旨的に「何をもって一般的で、何が一般的ではないのか」等ということを成文的に書くことが無理だった(はばかられた)事情もあって、「一般的ではない恋愛等」といった、何とでも読める謎の規定は国の差はあれあり、それは大航海時代以降、「発見された」多くの国でも同じような規定は存在していました。
一方で男性・女性の観点でいうと、概して厳しかったのは男性(どうしの行為)です。当時、女性にはあまり移動の自由がなく、家にいるか、そうでなければ教会にいるかくらいで、「家で行う行為まで制限する必要はなかろう」ということ、後者に対しては、三権分立という概念がまだ存在していなかった当時でさえ「教会内部の出来事に勝手に関与するな」ということで、教会内での「女性どうしの行為」はある程度見逃されていた経緯もあります。これに比べて男性は一般に教会に入ることが少なく、それは例えば百年戦争以降の一般的に多くの兵力が動員される当時の戦争では、そこで「男性同士が恋愛をはじめて行為に及んでも困る」(指揮が落ちる等)といった問題があり、この点のほうが実は深刻な問題で、多くの国で「男性だけ」この規定が残っていた(ドイツは「つい最近まで」存在していた。映画内の描写通り)のは、こういった事情です。
(減点なし/参考/日本においてはどうだったのか)
日本では、明治7年(6年とする文献もある)~13年までの6年間(7年間)のみ、「日本版ソドミー法」が規定されていましたが、キリスト教がそこまで大きく普及していなかった日本では(あれだけ江戸幕府が取り締まっていれば当然)、そもそも法を作っても適用する対象がごく少数すぎてたったの6~7年でなくなってしまいました。
この後、日本ではソドミー法に相当するような法律は一切成立せず、一方でLGBTQといった語は昭和25年、30年といった終戦時代にはまだなかったのですが、「概念だけは知られていた」ところ、法がない以上規制対象にできず、一方で問題になるのは「不潔な状態による疫病の蔓延」「どこででも見えるところでやるな」の2点(要は、衛生行政と、やや警察行政的な事項)に尽きる点であったため、これらは「よく手を洗いましょう」「場所はよく考えてください」くらいにしかならなくなり、今に至ります(それは現在の令和5年でも同じで、「どこででも」やると、さすがに警察が来ますよね)。
ソドミー法という「ある種特別な趣旨の法律が各国に存在したこと」と、「日本が歩んだ道のり」とを比較してみると、また違った見方もできます。
2度目まして3.8
観たことあるよなぁ的でしたが、甦りました。昔の色々なゲイ映画ありますが、映画内で法律変わったのってこれだけなのかな。。。ラストの罪にされて何年間も制約受けて出所した時にはお咎め無しって、何なんだよってなりそう。何だか分かる気がしました。こちとら純愛だって😅
生と性
密接に繋がっているものだ。アウシュビッツの描写は出てこないけれど、その烙印は主人公の体に刻み込まれている。そしてドイツで悪名高い刑法175条によって、強制収容所や刑務所が主な棲家になるゲイの主人公。(その間およそ20数年)
例えば行為を行って、相手が無理やり求められたと嘘の供述をしてもその事実をひょうひょうと受け入れ、同じ房の殺人犯から持ちかけられ入れ墨の道具を発見され咎められるも相手をかばう等
そのスタンスが「あるプライド」を基にしているので、いっそ清々しい。
刑法175条廃止になり、シャバに降り立ったこの主人公が「勝利した」あるいは「その姿をみて、おれの夢みた世界はこうだったのか」と自覚した時、シャバはこの上なく自由の掃き溜めにみえたのかもしれないと思った。
Große Freiheit(原題) Great Freedom(偉大なる自由)現在を生きる、我々一人一人が刻むべきことばだ!
彼が本当に欲しかった自由とは
なんとも新しいものをみた。
主人公は優しくて、愛に生きる人。
色んな人と恋をしてるけど、どの人にも愛情深い。
何度繰り返してもやめられない、麻薬のような衝動を止められず、塀の中と外を行ったり来たりしている。
多分彼はとんでもなくロマンチストだと思う。
そして刑務所という不自由な所で得ていた束の間の幸せが、実は塀の外の全くの自由よりも心地良かったのかもしれん。
縛りがなくなって、もう何一つ恐れることなく人を愛してもいいのだ、と言われたらそれはまた違ったのか。
不自由から生まれた想像や理想は、現実を味気なくさせてしまったかも。
ラストシーンが心に残る。
戻りたかったのはあの人の元なのか、それとも彼自身の中なのか。
後味が複雑で、色々考えてしまう。
フリーダム
2023年6月25日
映画 #大いなる自由 (2021年)鑑賞
男性の同性愛を禁止していた戦後ドイツにおいて、刑務所でも自分の生き方に信念を貫く男
ドイツでは1994年まで男性の同性愛が禁止されていたとは驚きですね。先進的なイメージがありました
@FansVoiceJP さん試写会ありがとうございました
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