「【近代ドイツの悪法、男性同性愛を禁じた刑法175条に対し、人間の尊厳を求め長年抵抗した男と、同房になった男との20年に亘る関係性の変遷を描いた作品。ラストシーンは多様な解釈が出来ると思います。】」大いなる自由 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【近代ドイツの悪法、男性同性愛を禁じた刑法175条に対し、人間の尊厳を求め長年抵抗した男と、同房になった男との20年に亘る関係性の変遷を描いた作品。ラストシーンは多様な解釈が出来ると思います。】
ー 1945年、ハンス(フランツ・ロゴフスキー)は同性愛行為により、刑務所へ収監される。同房のビクトール(ゲオルク・フィリードリヒ)はハンスが175条に触れるモノと知り、嫌悪感を隠さない。
だが、彼の腕の数字の刺青を見て収容所に居た事に気付き、ミシンの針をくすねて来て、その刺青の上から別の刺青を入れてやるのである。
そして、彼らの関係性はその後20年以上も続くのである。-
◆感想
・今作で描かれる、ハンスの175条に対する刑務所内での抵抗が、凄い。
ー 何度も、独房に入れられても彼は抵抗を止めない。-
・今作は、1945年、1957年、1968年の三つの時代にいづれも刑法175条違反により刑務所に入れられたハンスとビクトールの関係性を時代を行きつ戻りつしながら描き出している構成が面白い。
ー 更に言えば、ハンスとビクトールの老けメイクが秀逸である事も、記さねばならないであろう。-
・1957年にはハンスはオスカーと言う美青年と恋人になり、1968年にはギーゼと言う教師の青年と恋仲になる。だが、オスカーは将来を悲観して刑務所の屋上から飛び降り自殺。ギーゼには、ハンスからこの関係は止めようと告げるのである。
ー 聖書にミシンの針で穴をあけたラブレターを配膳担当のビクトールに頼み、届けて貰うもオスカーは未来を悲観したのかな。(175条により、14万人の男性が有罪になっている。)ギーゼにはオスカーの様になってもらいたくないという気持ちがあったのだろうと、推察する。-
・ハンスとビクトールの関係性の変遷も巧く描かれている。健康を害しつつあったビクトールは1968年時にハンスが刑務所に再び入所する際に、看守に賄賂を渡して同部屋にして貰っている。
そして、1945年時にはあれ程、ハンスの性癖を”変態”と言っていたのに、1968年時にはハンスが寝ている布団に夜、こっそりと入り彼を抱くようにして寝ているのである。
ー ビクトールは戦時中に一人も人を殺していないのに、妻リタの浮気相手を殺害して、長期入所している。この辺りの設定もシニカルだし、ハンスにフェ〇〇〇を頼むシーンも実にシニカルである。-
■1969年、刑法改革が為される中、ビクトールが激しく嘔吐し、”俺の健康なんか、誰にも気にしない。”と言う中、ハンスは釈放される。。ビクトールの”煙草を差し入れしてくれよ。”と言う声を聞きながら。
そして彼は真っ赤な「大いなる自由」と書かれた酒場に入り、酒をショットで頼む。その際に彼を誘うような目で見る男の後を追って、地下室に行くハンス。
そこでは、様々な男色行為が行われているが、ハンスはそれを見ても反応する事無く店を出る。
このシーンは、ハンスの男色行為は若い頃は性欲を満たすためだったが、20年経ちオスカーやギーゼとの関係を経て、真に愛した男性のみとの行為のみを求めるようになった事を如実に示しているのである。
<そして、ハンスは煙草を一つ買い、街のショップケースを叩き割り、サイレンのなる中、落ち着いて道に座り、煙草を燻らすのである。
私は、このシーンはハンスが再び刑務所に戻りビクトールに会うためであり、世間的には同性愛者に対する見方は変わっていない事に対するハンスの”大いなる自由”に抵抗するシーンだと思ったのである。>
NOBUさん、こんばんは。お元気かと存じます。少しバテ気味ですが映画から元気をもらっています。ロゴフスキ、いいですよね。今までとかなり異なる役柄で新境地かなと思いました。「水を抱く女」の彼も好きだし、「大いなる自由」の彼もいい。「大いなる自由」、刺激的で皮肉なタイトルですね。