「やや映画の述べる趣旨がわかりにくいところはあるかなぁ…。」高速道路家族 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
やや映画の述べる趣旨がわかりにくいところはあるかなぁ…。
今年139本目(合計790本目/今月(2023年4月度)34本目)。
高速道路のいわゆるサービスエリアなどで俗にいう寸借詐欺を繰り返す家族のお話。単純にいえばそれだけですが、韓国映画ですので、かなり深い奥のストーリーが隠されていて、映画の予告編からではまずわからない展開に半分近くは飛びます。
単純に(民法上・刑法上の)詐欺に関すること、というとらえ方もできると思いますが、作品内では国家賠償法に関すること(日韓ほぼ共通)まで出ますので、個人的にはやや公法(憲法と行政法(縦の関係。「国とあなた」のようなもの。これに対して民法は「私とあなた」のような横の関係)的な法律的な枠で視聴しました。
あるいは、この家族の特に子供の子が抱えている「ある問題」(日本でも時々問題視されることがある。映画内ネタバレ回避)に関しても真正面に取り上げられていて好印象です。この点、日本映画はぼかしがちな部分はありますが、韓国映画はこういった公法上の問題(特に憲法論など)に関してはかなり真正面から取り上げる傾向がつよく(いわゆる問題提起型の映画)、この観点でも日韓でやや仕組みは違うものの憲法行政法ではほぼ差異がなく、日本のそれをかなり応用してみることができる点で、個人的にはその観点(法律的な観点)でみました。
作品の途中から、韓国映画の中で韓国人の名前としては「ちょっとないかなぁ…」という名前の方が出ますが、この方についてはのちに語られます。このことも映画の一つの主義主張の中に入ってきているのではなかろうか、と思います(中国などならまだしも、「この国」を取り上げることがあまりないので)。この点に関しては、確かに「韓国の比較的近くの国」ではあっても「およそ韓国映画でとりあげられることがなさそうな国」がとりあげられており(ネタバレ回避)、この点も国際協調という観点では(「この国」が映画に出てくることはかなり少ない)韓国も「懐が広いな」と思ったところです。
ただ一方で、序盤は序盤で寸借詐欺や事務管理(やや不当利得。なお「善きサマリヤ人の法」は緊急事務管理なので映画の描写からすると若干違います)の話である一方、後半は「子供の福祉に関すること」にテーマがあたっており、「やや」映画の述べる主義主張がゆらいでいるかな、という印象はあります。この観点はどうしてもマイナス材料にはなります。また、明確に妥当性を欠く発言をしている方もいて、このことは日韓共通で同じような妥当性のなさを展開される方がいますので、そこはケアが欲しかったです。
採点に関しては下記の通りです。4.7を4.5まで切り下げています。
(減点0.3/国家賠償法と保険の関係)
・ 公務員などが国民に危害を加えたり、国の建築物等が壊れてけがをした等の場合は、国家賠償法による救済がはかられますが(日韓共通)、ここから保険金は差し引くべきではない、というのが「日本の」判例の立場です(保険は保険料を払っている以上、そこからの控除を認めると保険に入らないほうが得という好ましくない状況が起きるため)。このことは韓国においても同じと思われます。
ただこの点について「保険に入っているんだから…」という趣旨の発言をされている方がいて、それもそれで理解はできる(国家賠償法で補償されるお金は、究極最後は国民の税金などで賄われています)ものの、保険に入っていることをもってその控除を持ち出すのはややフェアではない(少なくとも日本では通りません。いくつもの最高裁判例あり)ように思えました。
(※) なお、勘違いが多いですが、「日本では」国家賠償法による裁判は、民事訴訟法による民事訴訟になります(行政事件訴訟法による行政訴訟ではない)ので注意です(ここは日韓の違いは調べたものの見当たらず)。