劇場公開日 2023年4月21日

  • 予告編を見る

「社会構造の被害者たち」高速道路家族 コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5社会構造の被害者たち

2023年4月29日
PCから投稿

格差社会の韓国で、底辺は底辺同士潰し合い、より弱い者をくいものにするのが当たり前で、その被害者は落ちるところまで落ちるという現実をモデルに描いているように感じました。

主人公のホームレスは、過去に詐欺にあって何もかも奪われた上に、詐欺の罪を全て着せられて指名手配を受けてしまい、精神崩壊を起こして(おそらく)統合失調症になった人物。
病気と指名手配で働くこともできない彼は、高速道路のサービスエリアで寸借詐欺で暮らすが、彼に残っているのは家族だけ。
家族への愛が死なずに生きている理由というその姿は、一見すると「生きている価値もないクズ」としか思えないのだが……
よくよく考えると『パラサイト』に出てきた底辺家族にも似た悲哀を纏っていて、社会構造と真の悪人の被害者ともいえて、単純に切り捨てられない。
必要なのはまずは治療と保護。
そのあとは、理性を取り戻してからの贖罪かな、と。

サブキャラの中古家具屋の旦那が、面倒を避けたいと言いつつも、芯が優しい人なのが、すごく染みた。
別の事件の火災被害にあった人々へ政府の補償金が出た報道に、「たかりかよ」と冷笑を浴びせた他の客に怒ったシーンには、ちょっと感動してしまいました。

あらすじに「裕福な夫婦」ってあったけど、どうにか会社経営をして暮らせている中流の中小企業経営者にすぎない…ってあたりも、この作品のポイントかも。
金持ちが、全然出てこなかった。

ところで、韓国映画って、どうしてここまで警察を無能に描くのかなー、と。
実際に無能なイメージが強いのだろうか?

コメントする
コージィ日本犬