「父の見えない内面を思い返す娘」aftersun アフターサン まままさんの映画レビュー(感想・評価)
父の見えない内面を思い返す娘
何か起こるのかと思いながら見るも大したことは起こらない、そんなホームムービー的映画
けれどやはり何か起こりそうな不穏な空気が漂っているのは、父に垣間見える不安定性や、絶妙な距離感で成立している父娘の関係性によるもの
見終わってから、ああこれは娘が昔のビデオを見て思い返していたのだと分かる仕組み
娘の前では基本的に優しい父、けれどカラオケに誘っても歌ってくれない父、それでいて夜中に娘を置いて先に帰った挙句先に寝てしまう父、ただ日焼け止めはしっかり塗ってくれる父。水球に無理やり入れられて置いてけぼりにする父。
11歳の誕生日について聞かれて撮影を拒否する父。どうやら父の家庭は一筋縄ではなかったよう。
お祝いの歌をみんなで歌っても素直には喜んでくれない父。娘を愛しているという手紙を書く父、それと同時に夜中こっそり泣いている父。
夜の海へ向かう父の姿に象徴されるような、掴めそうで掴めない、どこか不安定な父親。
娘には全てを晒さない、何かしらの傷を抱えているだろう父(離婚の理由もはっきりとはしない。意味深に描写される2人の少年のキスシーンからは、父のセクシャリティももしかすると何らかの関係はあるのかもしれない(明確な描写はなかったはず))
きっとそれは11歳の頃より大人になってからの方が、娘的にも思うところは増えてるのではなかろうか
(娘も最終的にはレズビアンなよう)
上の父親のことと並行して、娘の思春期の描写も丁寧に行なっている。
本編では年上たちの恋愛や振る舞いが気になる。お酒を飲んでるシーンや恋愛の話をしているシーン。プールの中での男女の密着のシーン。
大人っぽく見られると嬉しい。
友達に好きと言われてキスをした。
などなど
極めて曖昧ながらも繊細な映画。