劇場公開日 2023年5月26日

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「昇りゆく太陽と、沈んでゆく太陽。 アフターサン。 同じ太陽、同じ星を、僕たちは離れている場所から一緒に仰ぐことが出来るのだろうか。」aftersun アフターサン きりんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0昇りゆく太陽と、沈んでゆく太陽。 アフターサン。 同じ太陽、同じ星を、僕たちは離れている場所から一緒に仰ぐことが出来るのだろうか。

2024年11月25日
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鑑賞方法:DVD/BD

父親と娘。
別れて暮らす二人が、一夏の旅行を楽しみ、ビデオをたくさん撮る。
そして20年後に、あの時の父親と同じ年になったその娘が、父親との一夏を回顧するストーリーだ。

僕も、
早くに離れて暮らすことになった娘のことを、思い出しながら観た。
「お父さんにもっと可愛がってもらいたかったな・・」と、
面会に行った日に、夜の公園で、ガードレールに腰掛けて告げられた。

娘と遊ぶこと、
娘を叱ること、
娘に護身術を教えること。
すべて娘あってのことなのだ。

エジンバラ訛りの父親と娘が、たくさんのおしゃべりをし、お互いに気を遣い、少し疲れて無口な時間を挟みながらバカンスを過ごす。

誰だってそうだろう。
程度の差は有りこそすれ、一緒にいる時間が足りなかったし、愛し方が足りなかったと、自分に悔いるのだ。
夏の日はあっという間に過ぎ去る。
その痛みを、若き女性監督がみずみずしい感性でカメラに刻んだ。

「生きたい場所で生きろ」
「なりたい自分になれ」

父親は遺言のように娘に語り、自分自身にも言い聞かせる。
父も、そして娘も、
漂泊の人生を生きながら家族を想うのだ。

娘と遊ぶこと、
娘を叱ること、
娘に護身術を教えること。
すべて自分あってのことなのだ。

大人になった自分と、子供時代の自分の、ちょうど中間の世代に立って、監督はこの父親と娘の物語を
よくここまで頑張って優しく撮ってくれたと思う。

生きてて欲しいと強く願ったが、
心象風景は冒頭からのヤバい雰囲気。そしてたくさんの伏線のシーンと、「さようなら」のカードが、
「やっぱり駄目だった事」を僕に教えてくれるから、
ものすごく辛い映画だった。
子供だったのだから、どうしようもなかったではないか。
名作だけど、あまりにも悲しい映画だった。

酷だ。
ソフィには見せたくないビデオだった。

きりん
きりんさんのコメント
2024年11月25日

Мさん

ソフィ役=フランキー・コリオの、映画鑑賞後の監督への抗議 ―
そうだったんですね。
監督の手法としては
「結末を知らない小役には」
「結末を知らせずに撮る」。
・・これだったのでしょう。敢えて箝口令を敷いて、ソフィには教えていなかったんだろうなあ。だからこそあの子はあそこまで自然体でカメラの前に立てたという訳ですね。
教えて頂きありがとうございました。

ではまた。

きりん
humさんのコメント
2024年11月25日

コメントありがとうございます。
そうですね。
私の先生の1人も同じく映画。
そして限りある親との時間を大切にしています。
その気持ちはかならず通じ、何よりも穏やかな時間をこれまでのお礼として贈れるものだと信じています。
どうぞお大事に^_^

hum
きりんさんのコメント
2024年11月25日

Мさん
「父の日」にこの映画を・・
コメントの返信はМさんのレビュー欄にお届けしました。
ありがとうございました。

きりん

きりん
きりんさんのコメント
2024年11月25日

humさん

コメントありがとうございました。
「家族」って大変です。一緒に生きていくことにこんなに難渋するとは!
平凡に、なんの波風も立たずに生きられたら良いんでしょうが、どこの家にも いろいろは有るはずで。
そこが私たち人間のドラマなのだし、泣けてくる愛しい姿なのかも知れませんね・・

うちは両親の看取りのシーズンに入っています。いい別れが持てるように、我々息子たちでうんと頑張っているところです。

映画は人生の先生です。
😊🖐️

きりん
humさんのコメント
2024年11月25日

なんとも言えない切ない感情が残る作品でしたね。
このレビューがまた作品を思い出させソフィと父親のあの夏の情景が胸いっぱいにします。
娘あってのこと、自分あってのこと
…本当にそうですね🥲
そして教えてくださったご自身の夜の公園でのエピソードがそれぞれのストーリーを持つワンシーンとして心に刻まれました。

hum
Mさんのコメント
2024年11月25日

私はたまたま父の日にこの映画を見ました。そのためもあってか、いろいろ考えることも多かったような気がします。自分が子どもだった頃のこと、自分が父親として何ができたかということ。
昨年、多くの映画を見ましたが、私にとっては一番心に残る作品でした。
確かに悲しい映画とは思います。しかし、それ以上に何があたたかいものを心に残しました。
当たり前のことかもしれませんが、親が子どもと一緒にいられる時間は、ほんとに短いものだと思います。
このレビューを読みながら、映画を見た時に感じたことを、また思い出しました。

M
きりんさんのコメント
2024年11月25日

ちなみに、
鬱病は回復期に一番自殺が起こります。
死にたいと思っていた気持ちが、回復期に元気になってきたときに「自殺をついに実行に移せるだけの力」を得てしまうからです。
身近に鬱病の方がおられましたら、患者さんに笑顔と元気が戻ってきた瞬間の「その時期」こそ注意してあげていて下さい。

きりん