「振り返れば振り返るほど味わい深い作品」aftersun アフターサン Omiさんの映画レビュー(感想・評価)
振り返れば振り返るほど味わい深い作品
再生してしばらくの間の印象としては、
ほとんどが久し振りに会う親子のバカンスと他愛もないやり取りを映しているだけなので、結構退屈だった。
どう展開していくのか?と気を張り詰めて真剣に鑑賞するよりも、
寝る前のフワーっとしたテンションで、のんびり眺めるくらいの見方が良いと思う。
観ている映画が面白くないと思ったら途中で観るのをやめてしまうタイプの人には、つまらないままで終わってしまう作品かもしれない。
映像はとてもキレイ。(画質がではなく、演出が)
後半に差し掛かってくると、親子の間に不穏な空気が流れ始める。
四六時中一緒に居続けることによるストレスか、
二人の間の深い領域での心の溝か(普段は別居している、色々事情のある家庭みたいだし)、
何か通じ合いないものが漂ってきて、緊張感が増していきます。
ただ楽しいだけのバカンスはもうそこには無く、
ぎこちなさや気まずさ、
悲しい表情をする娘や、一人号泣する父の姿があり、
なんとも切なくて居た堪れない気持ちになってきます。
退屈で淡々とした前半とはうって変わって、
気がついたら画面に見入っていて、親子の行く末を固唾をのんで見守っている自分がいた。
この作品はストーリーにも映像にも謎が多くて、
観る側の想像で補わせる部分が大きいから、
何だったんだ?とずっと心に引っ掛かる余韻がある。
その余韻がとてつもなく意味ありげで、何かを訴えていて、エモーショナルな気持ちよさまで感じる。
見終わってから心の中で振り返ったり、
他の人のレビューを読むことでどんどん深みが増していく作品。
観賞直後は正直☆3くらいにしようと思っていたのだけれど、今では観て良かったと思える作品。