「パパ、いつまでもいつまでも大好きだよ」aftersun アフターサン 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
パパ、いつまでもいつまでも大好きだよ
31歳の若い父親と11歳の大人びた娘。
ひと夏をトルコのリゾートで過ごす。
それをあの時の父と同じ31歳になった娘が思い出す…。
それだけだったらとってもノスタルジー掻き立てられる。
が、製作はA24。なかなかにストレートではない。
まず、良かった点。
本作でアカデミー主演男優賞にサプライズノミネートされたポール・メスカル。
父カラム。娘とは友達のような優しい父親である一方、夜娘が寝て一人になると…。複雑な心情や役所を繊細に。『トップガン マーヴェリック』のトム・クルーズを押し退けてノミネートされたのも納得。
圧巻だったのは娘ソフィ役のフランキー・コリオ。
オーディションで選ばれ本作でデビュー。それもさることながら、本作はなかなかに難解。しかしそれを充分理解したように役になりきっている。ナチュラルな演技は言うまでもなく、末恐ろしい…。
本作で長編デビューのシャーロット・ウェルズ。詩的で叙情的な演出や映像の美しさは忘れ難い。
本当に本作は若い才能が集結した珠玉の秀作と言えよう。
作品のクオリティーには異論ナシ。
が、作品の中身自体については…。
先ほどもちらっと述べたが、本作、なかなか難解なのである。
ストーリーはあるが、あってないと言うか、感情移入や引き込まれるような万人受けするような話でも作風でもない。
断片的な描写、説明も皆無で描かれる。
まあ本作自体、大人になった娘が記憶を頼りに“あの時”思い出すという構成。
だから作りは作品を的確に表しているのかもしれないが、ストレートな話や感動を見たかった人には期待外れかも…。
なので、作品のほとんどを推測や憶測しなければならない。
まず考えられるのは…
何らかの理由でカラムは奥さんとすでに別れているであろう。
若くして父親となり、苦労も多いのであろう。
娘とはなかなか会えない。久し振りの父娘水入らず。
娘を喜ばそうとするが、失敗続く。それに対し、自責。
一人でいる時に見せる苦悩の姿。
おそらくソフィは、当時は分からなかったのだろう。パパ、何を悩んでいるの…?
父と同じ歳になって、少しは気付いたような気がする。
私はパパの父親としての顔は知ってるが、一人の人間としての内面は何も知らなかった。
自分はいい父親だったか…? いや、ダメな父親だった。娘に何もしてやれない。自分を責めるならまだしも、時々娘にも当たってしまう。本当にダメな父親だ…。
今なら、そんな事ないよ、と声を掛けてやりたいが…。
これも推測だが、おそらくカラムはすでに故人。
この旅行が父と会った最期だったのではなかろうか…?
あの時の父と同じ年齢になり、何かの拍子に父と最後に過ごしたあの旅行を思い出し、ビデオカメラを回す。
そこに映し出されていたのは…
楽しかった旅行の思い出。
無邪気な自分と優しいパパ。
時折時折、父親が見せる苦悩。
そして忘れはしない父親への愛。
パパ、いつまでもいつまでも大好きだよ、と。
こんばんは、⭐️
共感ありがとうございます😊
本作難しくて何回も観ましたが、
カラムが何を悩んでいたのか不明なままです。
ソフィの現在も11歳の時のように無邪気どころか、幸せそうに見えない、赤ちゃんもパートナーもいるのに。
私にとっては、昨年で一番の作品でした。
勝手に、多分他の人にはわかりにくいだろうと思っていたのに、身近な人が感動してて嬉しかったのを覚えています。
Blu-rayを買ってしまったのですが、映画館でと同じように感動できるのか、少し心配です。